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同じ寝袋

遠征の帰路。


森を抜けきれず、日が落ちた。


焚き火は小さく、夜気は冷たい。


荷を点検していた勇者が、静かに言った。


「寝袋が一つ足りないな」


アストロは固まる。


落としたのは自分だ。


崖下で魔物を迎撃したとき、荷紐が切れていた。


「……申し訳ありません」


高めでかすれた声が、夜に溶ける。


勇者は責めない。


ただ焚き火の向こうから彼を見る。


長身の影。

豊かな胸元がマントの下でゆるやかに揺れている。


「仕方ない」


淡々と告げる。


「同じ寝袋を使う」


一瞬、風が止まったように感じた。


「わ、私は外でも――」


「却下だ」


即答。


「お前は冷えやすい」


事実だ。


華奢な身体は熱を逃しやすい。


勇者は寝袋を広げる。


大人二人には、明らかに余裕がない幅。


「入れ」


命令ではない。


だが逆らえない。


アストロは先に潜り込む。


横向きになると、もう隙間はほとんどない。


次の瞬間、背後から温もりが入り込む。


勇者だ。


背が高い分、自然と包み込む形になる。


豊かな胸が、アストロの背にやわらかく押し当てられる。


寝袋の内側は狭い。


逃げ場はない。


「寒いか」


耳元で低い声。


吐息が首筋にかかる。


「……いえ」


強がりだ。


勇者は腕を回す。


腰のあたりを引き寄せる。


完全に密着する。


背中越しに、確かな柔らかさ。


呼吸に合わせて、ゆっくりと押し当てられ、離れ、また触れる。


アストロの鼓動が速くなる。


勇者はそれを感じ取る。


「私は勇者だ」


囁き。


「女性ではない」


だが言いながら、胸の重みはよりはっきりと背へ沈む。


寝袋の中で、わずかな動きが生まれる。


意図的か、無意識か。


やわらかな頂きが、布越しに彼の背をかすめる。


くり、と小さく擦れる。


アストロの呼吸が乱れる。


「……勇者様は、女性です」


思わず出た本音。


勇者の腕が、わずかに強く締まる。


「そうか」


その声は低い。


耳元へ唇が近づく。


触れない。


だが、すぐ横。


舌が、ゆっくりと耳朶をなぞる。


湿った感触。


アストロの肩が跳ねる。


「声を出すな」


静かな命令。


契約ではない。


ただの言葉。


忠誠を試す声音。


勇者の舌は耳の縁を辿り、裏側へ滑る。


吸うように、軽く圧をかける。


寝袋の中は熱がこもる。


呼吸が混ざる。


背後の胸が、彼の背に押しつけられたまま、わずかに揺れる。


擦れる。


一定の、ゆるやかな動き。


アストロは必死に唇を噛む。


声を出さない。


勇者の手が、腹部へと下りる。


指先が、布越しにゆっくりと探る。


熱の集まる場所へ辿り着く。


握る。


はっきりと。


逃げ場のない寝袋の中で、刺激は逃げない。


「女性として、どう思う」


耳の奥へ舌を差し入れるように、深く舐めながら問う。


アストロの視界が揺れる。


「……綺麗で、強くて……」


「それだけか」


手が動く。


ゆっくり。


止めない。


焦らさない。


一定の圧で、確実に高める。


寝袋の中で身体が震える。


だが声は出ない。


勇者はさらに密着する。


胸が完全に押しつけられ、呼吸に合わせて柔らかく動く。


くり、と小さく擦れる。


背中越しに伝わる感触。


「忠誠を見せろ」


低く囁く。


動きが少し速くなる。


アストロの指先が寝袋を掴む。


喉が震える。


だが音は出ない。


限界が近づく。


勇者はそれを感じ取る。


彼女の理性もまた、削れている。


このままいけば――


その瞬間。


アストロの身体が大きく震える。


声は出ない。


代わりに、寝袋の内側でじわりと熱が広がる。


勇者の手の中で、力が抜ける。


呼吸だけが荒い。


静寂。


勇者は動きを止める。


数秒、そのまま抱き締めたまま。


「……よく耐えた」


低い声。


だが、その声音はわずかに揺れている。


彼女の頬も熱い。


あと少しで、自分も理性を越えそうだった。


腕の力がわずかに強まる。


「勘違いするな」


囁く。


「私は勇者だ」


だがその胸は、まだ彼の背に触れたまま。


夜は深い。


焚き火が小さく爆ぜる。


寝袋の中で、二人の呼吸だけが重なっていた。


越えない。


だが、越えかけた。


その境界で、夜は静かに続いていく。


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