勇者の私室にて
王都の夜は深く、静まり返っていた。
勇者の私室。厚い扉の向こうには衛兵の足音も届かない。天蓋付きの寝台に落ちる月明かりが、白い寝具を淡く照らしている。
その中央に、アストロは仰向けに横たわらされていた。
長身の勇者がその上に覆いかぶさる。
彼女は彼より背が高い。豊かな胸の重みが、寝衣越しにしっかりと彼の胸板へ沈み込む。
「逃げるな」
低い声。
アストロは顔を逸らす。
「……逃げていません」
だが喉は震えている。
勇者の指先が、ゆっくりと胸元をなぞる。
布越しに、小さな突起を探り当てる。
押す。
離す。
くり、と円を描く。
アストロの呼吸が乱れる。
「可愛い反応をするな」
勇者はそのまま両側を同時に扱く。
左右から挟むように。
指先で摘み、軽く引き、また押す。
身体が跳ねる。
「声を出していい」
囁きながら、耳へ唇を寄せる。
舌先で縁をなぞる。
ゆっくり、奥まで。
湿った音が微かに響く。
アストロの指が寝具を掴む。
声が零れかける。
その瞬間――
下へ伸びていた勇者の手が、ぴたりと止まる。
完全停止。
あと一歩の位置で。
アストロの身体が強く震える。
行き場を失った熱が、腹の奥で滞る。
「惜しいな」
冷たく囁く。
再び胸元へ戻る。
今度は強めに。
速く。
くりくりと執拗に。
アストロの背が反る。
呼吸が崩れる。
勇者はわざと下へ触れない。
限界を積み上げるだけ積み上げて――
また下へ。
布越しに、確かな熱を包む。
ゆっくりと握る。
一定の圧で、逃げ場を塞ぐ。
アストロの喉から声が漏れる。
その寸前。
また止める。
今度は完全に手を離す。
空白。
何も与えない。
アストロは荒い呼吸のまま、虚空を掴む。
勇者はその様子をじっと見下ろす。
理性が削れていく。
その顔が、欲しい。
再び触れる。
今度は緩急をつける。
ゆっくり、深く、強く。
そして急停止。
また動かす。
また止める。
寸止めに寸止めを重ねる。
そのたびにアストロの身体は震え、声を堪えきれず零し、そして遮られる。
汗が滲む。
視線が潤む。
「……勇者様……」
縋るような声。
勇者の胸がわずかに上下する。
「まだだ」
耳朶を深く舐める。
歯先で軽く噛む。
その刺激に合わせて、下の動きを強める。
逃がさない。
今度は止めない。
限界の波が何度も押し寄せる。
だが頂点へは届かせない。
ぎりぎりで緩める。
また強める。
何度も、何度も。
アストロの身体はもう抗えない。
震えが全身に広がる。
呼吸が乱れ、声が重なり、視界が滲む。
勇者は彼を抱き起こし、豊かな胸に押しつける。
そのまま、最後の波を与える。
今度は止めない。
積み上げられた熱が、一気に溢れる。
アストロの身体が大きく跳ね、力が抜ける。
勇者はそのまま抱き締める。
胸に顔を埋めさせ、逃げ場を与えない。
しばらくして、ようやく動きを止める。
荒い呼吸だけが残る。
勇者の指先はまだ彼の胸元を軽くなぞっている。
「覚えておけ」
低い声。
「私は止めることも、与えることもできる」
アストロは力なく頷く。
勇者はその額に唇を落とす。
今夜は越えた。
だが主導権は、最後まで彼女のままだった。




