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異世界転生  作者: 赤井天狐
第二章【惑うものと惑わすもの】

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第百十五話【戦士の仕事】


 ダランの砦を出てからずっと、魔獣の群れを倒し続けた。マリアノの技を真似したり、もともと得意だったやりかたをさらに工夫したりして、レベル上げをするつもりで。

 けど、そうしてるあいだに林の中まで日の光が届かなくなってきて、もうこれ以上はフィリアをひとりに出来ない時間になった。

 それでも、指示されたよりも多くの群れを蹴散らしてやった。それを伝えれば、ゲロ男もちょっとはありがたがるだろ。


「よし、そろそろ戻るか」


 俺としても帰りたい時間には間に合ったし、ゲロ男に頼まれたぶんも余裕でクリアした。うん、切り上げるのになんの文句もないな。

 となったら、ちょっとだけ急ぐか。まだ暗くはならないけど、早いぶんには困んないしな。ゲロ男にも細かく報告してやりたいし。


 そうと決まればさっさと撤収だ。来た道を戻って、砦に寄ってから街へ帰ろう。

 フィリア、変な心配して暴走してないといいけど。見張ってないとおかしなことするやつだし、街の人に迷惑かけてたらどうしよ。


「……それにしても、かなりの数だったな。これ、ずっとこうだったのかな。だとしたら……なおさらビビってる場合じゃないだろ、あのクズ」


 さて。しかし、それにしても結構大変だった。いや、俺からしたら雑魚魔獣ばっかりだったけどさ。

 でも、街に出る魔獣は国軍でも苦労する相手なんだ。それよりもデカくて強いのが、この林にはうじゃうじゃいやがった。俺でもちょっと疲れるくらいだ。


 これがもし、敵が攻撃するために集めた魔獣……とかだったら、それもそれで厄介だけど、まだマシだなって思える。

 だけど……いっつもこんなのがそこらじゅうにいて、盗賊団はこれを相手にし続けてたなら……とてもじゃないけど、マリアノなしで無事に済むとは思えない。

 いや、マリアノがいたとしても被害をゼロには出来ないだろう。アイツがどれだけ強くても、剣を振り回して一度に倒せる魔獣の数には限りがあるから。


 やっぱり、早いとこ協力したほうがいい。って言うか、俺が戦えるようにしなくちゃダメだ。

 マリアノはたぶん、戦う以外の仕事もあるんだろうな。南に行ってるのだってきっとそういうのだ。ゲロ男の口ぶり的に。

 今回みたいなことはこれからもきっとある。いや……これまでにもいっぱいあっただろう。なら、手は打つべきだ。


 しかし……そんなのがわかんないやつじゃないハズだ、ゲロ男も。それでも協力を拒んだからには……だよな。

 早いとこ倒すしかないな、人を操る魔術師ってやつを。そうすれば、ゲロ男も気兼ねなく俺達に協力するだろ。


 そうこう考えてるうちにダラン砦まで帰ってきて、さっさと報告するためにゲロ男を探し回る。

 アイツ、ボスのくせにあっちこっち行き過ぎなんだよな。そういうとこはちょっとフィリアっぽい。

 まあ……アイツの場合、自分で動かなくちゃならないくらい人が足りないんだろうけど。宮と違って、頼れる大人みたいなのはいないらしいし。


「おーい、ユーゴ。お疲れさん。さっきそこで聞いたぜ、俺のこと探してるんだって?」


「別に、探してたわけじゃない。報告しなくちゃいけないだろ、何があってどれだけ倒したかって。うろちょろすんなよ、ボスのくせに」


 それで、ちょっと話を聞いたりしながら探してるうちに、向こうから姿を現した。

 あいかわらずムカつく顔でへらへら笑いやがって。うざい。クズ。


「指示されたポイントの群れは全部倒してきた。それ以外にも……ちょっと地図出せ。結構倒してきたからな、ちょっとは楽になるハズ」


「っと、マジかよ。いや、どんだけ頼りになんだ、お前。ちょっと待ってろ、白地図出してくる」


 いや、待ってるの暇だし、俺もそっち行く。って言えば、ゲロ男は一瞬だけ考えたけど、まあいいかって顔で了承した。

 もしかして、なんか機密とか置いてある部屋に行くつもりだったのかな。まあ……そんなの見ても俺じゃなんとも出来ないから、問題ないと思われたっぽいな。ムカつく。


「ほら、入れ。えーっと、ここに……これだ。あの辺りはなんだかんだで調査も進んでたからな、国にはないくらい細かい地図も出来てんだぜ」


「うざ、なんだそのアピール。まあいいや、早く見せろ。えっと……」


 そうして案内された部屋で見せられたのは、たしかに宮に置いてあるのよりも細かく地形が書き込まれた地図だった。

 それを自慢されたっぽいのはムカつくけど、報告には便利だから都合はいい。うざいけど使ってやる。


「ここにいた魔獣、こっちのほうにもいた。たぶん同じ群れだ。それとこっちにも。同じ群れだけど、別々で行動してたっぽい」


「ここの魔獣……って言うと、あのデカいやつか。同じ群れだって根拠はなんだ? 同種の別の群れじゃなくて、あくまでもひと塊だって言ってるように聞こえるけど」


 それからしばらく、地図の上に書き込みながら魔獣の情報を……倒した魔獣の報告を続ける。

 何がいてどんなふうに倒したか、倒したあとにどう処理したか。それと、倒すまでに感じた異変についても、全部。


 ゲロ男はそれを真剣に聞いてて、わかんないこと、気になったこと全部に口を挟んだ。

 なんでそうしたのか。そうしてどうなったか。それをしないとどうなると思ったのか。とか、いろいろ。


 フィリアや国軍のみんなはそんなこと聞かないから……なんか、間違ったことしたのかなって、最初はそう思った。けど、たぶんそうじゃないらしい。

 いや、あたりまえなんだけどさ。ゲロ男は……盗賊団は、国軍ほど戦力に余裕がない。国軍にもないけど、それ以上に。

 だから、ずっと見張りを立てたり、すぐに対処したりは出来ないこともあるんだ。


 そうなると、またもう一回同じ魔獣が棲みついたり、別の魔獣がやってきたり、問題が起こる可能性も高い。

 それを防ぐ、あるいは次に俺抜きで解決する方法を考える手がかりが必要なんだろう。


「……やっぱり、フィリアの要求を飲んだほうが早いと思うぞ。俺が戦えば被害も出ないし」


「あっはっは、そりゃまたご忠告どうも。だけど……なんべんも言わすなよ。俺も組織の長だからな、簡単には首を縦に振れねえ事情があんだ」


 そんなこと考えなくて済むのにな、俺が戦えば。でも、やっぱりゲロ男は素直には受け入れない。

 ビビってるだけじゃない。操られてる可能性を危惧してるだけでもない。そこにはきっと、盗賊団にいるやつらの心情も考慮されてるんだろう。


 フィリアの言う通り、一度は国から捨てられた街に住んでたやつらだ。なら、恨みつらみがあっても変じゃない。

 ゲロ男もそのことを考えてるんだろう。自分がどうとかもあるけど、それ以上に、仲間がどう思ってるかって。


「っし、だいたいわかった。これだけきっちりやって貰えるとは思ってなかった、マジでありがとよ。そしたら急いで帰ってやれ。あんまフィリアちゃんを心配させんなよ」


「わかってる。フィリアはアホだからな、無駄に心配して街から出かねない。早いとこ戻って見張るつもりだ」


 それはガチで頼むぜ。って、ゲロ男はかなり疲れた顔でそう言うと、そのまま別の部屋に行ってしまった。

 かなり貢献出来たつもりだけど……それでもまだまだ状況はよくならないんだろうな。だから、アイツもやらなくちゃいけないことが山積みなわけだ。


 じゃあ……明日もなんか適当に言い訳作って来てやるか。そんなこと考えながら街へ帰って、そして……意外と真面目に仕事してるフィリアに出迎えられた。

 なんか……もっとこう、おろおろして手伝いすらロクに手に着かない状態かと思ってた。よかった、ちゃんと大人だったんだな。


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