23.紅、朱、紫。〜戴冠〜
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「ルーイ、ルーイ」
……ううん?
「戴冠式が始まるぞ」
「――え?」
目を開けると、真っ白の壁が、少し頭を混乱させた。
ああ、ここは、アパートから西へ200km行ったところにある、王室の別荘か。
「お前、よく寝られるよな。こんな大事な日に」
あまりにも暖かくって。ほら、春眠暁を覚えず、っていうでしょ?
「まあ、確かにそうだな。でも、そのまま寝たら、シワがよるだろ」
確かに。
僕たちは、街でスーツ一式をレンタルして着ることにした。
リクは、黒ジャケットに黒パンツ。僕は、ネイビーのジャケットにグレーのパンツ。レネアさんは、ホワイトグレーのベストに黒パンツ。ツェルドくんは、グレーのベストに白パンツ。
自分が着たいものを選んだようなものだから、皆、バラバラ。
「お待たせ」
廊下の奥から、プレーヌちゃんが現れた。
それも、純白のドレスで!
「綺麗なドレスだな」
シルクで出来ているから、手触りはとても良い。幾重にも重ねられたチュールやチュールレースが、より高級感を出している。はめている白い手袋さえ、素人の僕にも高級なものだと分かってしまう。腰は、クリーム色のリボンで縛られ、首から、小さい真珠のネックレスがかけられている。ネックレスとお揃いで、耳には真珠のイヤリングをつけている。
そして、スタイリストによって、ゆるくウェーブがかけられた髪は、花で飾られている。
「綺麗でしょ」
「う、うん」
「あまり、キラキラした装飾は無いんだな。ほら、ダイヤとか」
「ええ。プレーヌ様には、美しいお顔という宝石がございますから、要りませんよ」
現れたスタイリストさんがそう言った。
「なるほど。確かにそうだ」
リクは、微笑んだ。
「ツェルドとレネアさんは、もうバルコニーにいる。早く向かうぞ」
「「うん」」
僕とリクは、トレーンベアラーとして、プレーヌちゃんのドレスのトレーンを持った。
この国のドレスは、僕たちの国でいうウェディングドレスの型。
踊りには向かないから、この国には舞踏会を開く文化は無い。
「プレーヌ・ラ・セレネ様のご登場です!」
ツェルドくんが声を張り上げる。
プレーヌちゃんが、マイクの前に立ったので、僕たちは後ろに立った。
「プレーヌ様」
呼ばれたプレーヌちゃんが、右を向く。
白い手袋をつけたレネアさんは、リクから王冠を受け取った。レネアさんの手が、少し震えている。大きく呼吸をして、プレーヌちゃんの頭に王冠を乗せた。
「プレーヌ女王の誕生です!」
――パチパチパチパチ!!!!
――わあああああああっ!!!!
これこそ、拍手喝采。
ここまで盛大なのには、今までのプレーヌちゃんの行いがあるんだと思う。きっと、誰かが見ていたのだと思う。
彼女は礼をした。
拍手が止んだところで、彼女は口を開いた。
「ツォルソーに住む、皆さん。私は、プレーヌ・ラ・セレネです。きっと、皆さんは、私が子供であるということに、不安感を抱いていることでしょう。しかし、子供であることは私の武器だと考えています。子供だからこそ、子供に優しい政策、子育てを応援する政策ができるからです。また、私は、昔から、働く大人に囲まれて育ってきました。私自身、働いています。だから、私は、働く人たちを応援する政策もできます。
私から、皆さんに伝えたいことがあります。今、この時から、武器を持ち歩くことを禁止します。もう、誰かが傷つくところを見たくない。
協力し合い、高みを目指す人間も、そんな人間を愛して、信じてくれる竜も、この国の街並みも、どれも私は大好きです。だから、私は必ず、この国を守る。そして、国中で哄笑が響き渡る国にする。そう、皆さんに約束しましょう」
プレーヌちゃんは1歩下がって礼をした後、部屋の中へ戻っていった。
僕たちも、それに続き、レネアさんと僕でドアを閉めた。
――――。
「ふー!!!!」
「終わったぁぁ」
「緊張したぁ」
「疲れたよぉ」
レネアさんが、プレーヌちゃんの頭から王冠を外し、金庫に入れる。
「プレーヌ。着替えておいでよ。アパートに帰ろ?」
「……うん」
アパートに帰ったら、僕たちが、この国でするべき事は、帰り支度だけだ。




