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怪しいイケメンくんと異世界旅行〜目指せ、世界征服〜  作者: 風葉 千尋
第2話 紫の月
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23.紅、朱、紫。〜君の帰還〜

文字数(空白・改行除く):1,852文字

「明日の朝は冷え込むかもしれないな」

 レネアさんが部屋の窓から、空を眺めて言った。

「……どうしてですか?」

 プレーヌちゃんを残して、アパートに帰ってきてから、一度落ちて動きの止まったボールをゆっくり投げるような会話が続いている。

「……快晴だからな。放射冷却で冷え込むかもしれない」

「……放射冷却?」

「……2年のうちに理科で習うと思うぞ」

 普段なら、丁寧に説明してくれそうなのに、説明無しか。まあ、僕にも、それを聞く余裕は無いのだけれど。

 皆、疲れていた。

 ツェルドくんは寝室に行った。けれど、きっと寝てはいないと思う。

 リクは、足を投げ出してソファに座っている。目を閉じて、寝ているのか、起きているのか、うんともすんとも言わない。

 そして、僕は床に座り、窓辺に立つレネアさんと会話していた。

 プルルルルルルル、プルルルルルルル――。

 ん、電話? しかも、携帯に。

「ルイ。ちょっと話がある。スピーカーモードに切り替えてくれない?」

 ツェルドくんだ。

「OK」

『――聞いて欲しいことがあるんだけど』

 その一言で、リクが目を開けた。

『ぼくがヌヴェルさんに言った、「電車で轢かれたこと、覚えてないの?」。これ、事実じゃないの、分かる?』

 事実じゃない?

『そ。本当はさ、車にはねられたんだよ。ザントさんが言ってたけど』

 たしかに。

『つまりは、ヌヴェルさんは、事故に遭ってない。嘘をついてる感じじゃなかったし。だから、他の誰かが死んだってことなんだけど』

 まあ、そうなるよね。

『でも、その死んだ人は、ヌヴェルさんだったんだよね? ザントさんとクザリアさんが言うには』

 あれ、何で? ヌヴェルさんは、事故に遭ってないはずでしょ? どうして、死んだ人がヌヴェルさんなんだ?

「見間違えたんじゃないか? この国、金髪の人もいるしな」

 レネアさんが考えを口にする。

『2人もいるんだよ? 見間違えることはないと思うけど』

 たしかに。両方が見間違えることはないかも。

『ぼくが思うに、ヌヴェルさんに変装した誰かが、死んだんじゃないかと思うんだ。どうして、そんなことをしたのかは分からないけど』

 変装した、誰か?

 それは、ヌヴェルさんが王であることを悟らせないためか?

 分からない。

『更に言えば、その「誰か」っていうのが、本当に死んだのかも分からない』

 どういうことだ?

『ザントさんに聞いたんだけど、その遺体はすぐに回収されたらしくて、はねられたところは見たけど、死んだところは見てない、って』

 んんん?

 混乱してきたぞ?

『結局のところ、謎が増えただけで、解決しない。でも、あの事故にはヌヴェルさんが一切絡んでいない。それだけ、教えたくて』

「なるほど、不思議な話だな」

『ま、それだけだから。切るよ』

「え、あ、うん」

 大分、一方的な感じなんだけど。

 皆、なんか、僕の扱いが酷くない?

 リクにしろ、ツェルドくんにしろ。雑なんだけど。

 なんだかなぁ。

 ――トン、トン。

 あれ? 階段を降りる音だ。

 トゥルルルルル、トゥルルルルル――。

 ほぼ同時に、内線電話が鳴る。

 これは――!

「ツェ――」

「早く! 行くよっ!」

 瞬間移動をしたかのように、立ち上がった僕の目の前に現れたツェルドくんは、ドアを開け放った。

 そして、疲れているはずなのに、駆け出した。

 僕たちも後に続く。

「プレーヌッ!」

 一瞬で癒しの間についた僕たちは、紙袋を抱きかかえて、へたりこんでいる彼女の周りに座った。

「…………集められた?」

 ツェルドくんが、優しく訊いた。

「…………うん」

 彼女は、紙袋を開いて中央に置いた。

 中には、数個の白い塊が入っていた。

 リクとレネアさんが手を合わせる。僕たちも、それに倣って手を合わせる。

「全部は集められなかったんだね、ヌヴェルさんの、骨、は」

「……うん。皆に手伝ってもらったのにさ、ごめんね」

「いや、気にしなくていいって。それに、ぼくたちは最後まで手伝ってないから」

「……ありがとう」

「――ねぇ、プレーヌ」

 ツェルドくんの丁寧な息遣いが、耳に響く。

「ヌヴェルさんの骨を、1つ、分けてほしい」

 彼女の真っ赤に腫らした目が、しっかりとツェルドくんを映した。

「……いいよ」

 気配を消して部屋の壁にもたれかかって立っていたクザリアさんが、白い布を差し出す。

 その布に骨を包み、プレーヌちゃんはツェルドくんの手に乗せた。

 ツェルドくんは、彼女に向かって頷いた。

 ――トン、トン、トン、トン。

 ん? 誰か来た?

 階段を降りてきたのは、レジ袋を両手に持ったザントさん。

「また、頼みすぎたんだ。一緒に、食べてくれる?」

「もちろんです」

「……良かった」

 彼はふわぁと笑った。

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