23.紅、朱、紫。〜直後〜
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民衆を魅了するプリンセス。
彼女が歩く周りには、騎士によって彩られた、元は白い深紅の花畑が広がっている。
「なん、で? あれ、お城でしょ? 火事? 何があったの? お兄ちゃんは? どうして、いないの? 皆が殺した、の?」
僕は、彼女から目を逸らして、ゆるゆると首を振った。
目を見ることが出来なくて。声に出して否定することも出来なくて。
「じゃ、じゃあ、生きてるんだ!」
僕には、やっぱり彼女の目が見られない。
「…………生きては、いない」
権利がない。
「っ、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――!」
こんなにも開けた場所で、絶叫はこだまする。
彼女の目には、紅々とした炎が映っている。
すでに死んだと思われていた兄が、本当は生きていて、気がついたら、本当に死んでしまっていた。
そんな状況に置かれてしまった彼女の気持ちなんて、計れない。
僕は後悔していた。
僕にあと少し、何か1つでも防御系魔術が使えたなら。
誰も死なずに済んだのに。誰も悲しまずに済んだのに。
ふと、小2の時に、悠斗が大人たちに言い放った言葉を思い出す。
『後悔なんてしなくていい。謝罪の言葉もいらない。「子供に謝った」っていう愉悦に浸られるのは、ごめんだね。後悔って、自己満だから。しないといけないのは、後悔じゃなくて反省。償いと未来だ』
彼の言葉は、たまによく分からない。この言葉も、未だに理解できていないのだから。
「うわぁぁぁぁぁぁ――」
消火活動を手伝おうと思った。
ヌヴェルさんを、これ以上、燃やしたくなかった。
ふと、僕は上を向く。
夕方の空は朱色。空には、夕日に染められた紫の満月だけが浮かんでいた。
紫。青と赤を混ぜた色だ。




