22.The stark reality 〜VOICE〜
文字数(空白・改行除く):3,067文字
な、何⁉︎
何これ⁉︎ 何の音⁉︎
「何したんですか⁉︎」
――うわっ、臭っ!
煙の匂いだっ!
……煙?
まさかっ‼︎
「僕が押したのは、起爆スイッチだよ。6つくらい、この城には、爆弾を仕掛けてるんだ。あと5分、ここにいたら、一酸化炭素中毒で、確実に死ぬよ」
ドゴゴゴゴオオオオォォォォォォォォンン!!!!!!!!
熱っっっ!
「バリアッ!!!!」
どうやら、左の柱が爆発したらしく、その勢いで飛んできた折れた柱をバリアで弾き飛ばしたみたいだ。
僕は、乱れすぎた髪を少し直す。
ドゴォン!
わっ! 柱が倒れた!
柱だけじゃなくて、一緒にたくさんの瓦礫が、僕たちとヌヴェルさんの間を仕切るように落ちてきた。
僕たちは、その場にしゃがみ、口にハンカチを当てた。
燃える、燃えている。
太陽より赤い、視界。
ヌヴェルさんが見当たらないほどの、炎と瓦礫。
こちらからは、炎に投影されているヌヴェルさんのシルエットしか見えない。
熱い。暑い。
近くの火が、肌を焦がし、ヒリヒリとその痛みが増していく。
ポタ、ポタ、と汗が滴る。
「空間を支配せし空気よ、彼女を覆い、全ての危険から守りたまえ」
「そうだ、レネアさん! ツェルドの使えるバリアは残り1枚しかない。氷壁魔法で、俺たちを覆う助ける氷の箱を作ってくれ!」
「火に氷だ。すぐ溶ける!」
「それでも! 時間稼ぎになれば良い!」
「分かった。氷よ」
一瞬で、氷の箱が出来上がる。けど、やっぱり、どんどん溶けていってるみたいだ。
継ぎ足すように、レネアさんも氷の壁を厚くするけど、果たして、それで大丈夫なのか。
「ゴホッ。ゴホッ、ゴホッ」
ヌヴェルさんが咳き込んでいる。
炎に、揺らめく影が映った。
立ってる⁉︎
「ヌヴェルさん! 座って! 座ってください!」
「優しいなぁ、君は。――ゴホッ、ゴホッ。ありがとう。でも、嫌だ」
どうして⁉︎
「レネアさん! 上面はぼくがバリアを張るっ。側面だけでいいから、頑張ってっ!」
「ああ、頼んだ!」
「ゴホッ、ゴホッ」
レネアさんが上面の氷を張るためにかけ続けていた魔法を解くと、砕けた氷が落ちてきた。
一瞬だったけど、冷たくて気持ちいい……。
ドゴゴゴォォン!
まただっ!
――ああっ!
「プレーヌっ!」
爆風で弾け飛んだ瓦礫が、プレーヌちゃんに襲いかかる。
ヴヴァァンッ!
「えっ」
瓦礫が、粉々になった⁉︎
「なるほどな。プレーヌのことは、ヌヴェルさんが守ってくれているらしい」
良かった。多少、破片はかかってしまっているけれど。
でも、彼は今、こんなにも彼女を守ろうとしているのに、あの時、手を上げて、気絶させたのはどうしてだろう。
「ツェルド。プレーヌの上にバリアを張れ。もし、ヌヴェルさんが死んでしまったら、魔法が解けるかもしれない」
「そうだね。バリア」
プレーヌちゃんの意識はまだ無い。
大丈夫かな?
「――湖畔に浮かぶ 揺れ夜月」
え? こんな時に、歌?
「空を二つに 分かちたる
底にたたずむ 赤月は 青き未来を 育み 守る
天にたたずむ 青月は 赤き世界を 統べ 戻す」
すごく、綺麗な声が胸を衝く。
何かを求めるように、切なくて、グッとくる。
キラキラ輝いているというよりかは、闇に浸っているような。
「ゴホッ、ゴホッ」
感じる陰に、思わず涙腺が緩む。
「湖畔に浮かぶ 揺れ夜月
空を二つに 分かちたる
底にたたずむ 新月は 満ちた片割れを 愛で 撫でる
天にたたずむ 満月は 見えぬ片割れを 追い 慕う
湖畔に浮かぶ 揺れ夜月
空を二つに 分かちたる
底にたたずむ 少年は 少女と未来を 命と 代える
天にたたずむ 少女は 世界と人とを 動かした」
ていうか、何でこんな時に歌を?
気まぐれ? でも、こんな時に歌ったら、煙を吸っちゃうんじゃ……。
「湖畔に浮かぶ 揺れ夜月」
ん? 終わりじゃないの?
――どうして?
「空を二つに 分かちたる
最期に泣きし この二つ
神に 翻弄され続け 幕を閉じる 我が人生
呪うのか 呪わざるか
大地にたたずむ 三日月は 二つの生き様 目に映す
湖畔に浮かぶ 揺れ夜月
空を二つに 分かちたる
形が変われば 呼び名が変わる
私は君。 君はあなた。 あなたは私
全てのものは あなたと共に」
ドゴゴゴゴォォン!
今度はどこが爆発したんだ⁉︎
「あ、あれ!」
ツェルドくんが、ヌヴェルさんの頭上――天井を指差す。
天井が大きくえぐれている。どうやら、天井が爆発したらしかった。
「天井だったんだ」
「そこじゃないって! あれっ! あれだよ、瓦礫だよっ!」
え?
天井の爆発で、鉄骨や瓦礫が落ちたらしい。たまたま、それぞれが引っかかり、つっかえて、床に落ちてこなかったらしい。
……落ちてきてたら、誰か、死んでたな。
けど、鉄骨の上にまだ瓦礫は落ちてきていて、その度に鉄骨が揺れている。
ガシャ。
鉄骨がずり落ちた。
「あれ、ヤバいよね」
「うん」
僕は天井を見ながら頷いた。
ドゴゴゴゴゴゴォォォン!
「強化っ!」
プレーヌちゃんの周りで爆発が起きて、いくつもの鉄骨がプレーヌちゃんの上に落ちてきた。
塵が舞う。
ドゴゴゴゴォォォォォォンッ!
「こっちもっ⁉︎ 強化っ!」
僕たちの頭上で爆発が起き、鉄骨が降り注いだ。
ツェルドくんは、プレーヌちゃんのバリアと同じようにバリアを強化した。
ツェルドくんのバリアは最強。普通の状態でも、壊れたのは一度だけなんだとか。
強化されたバリアは、もう壊れることなどない。でも、その代わりに膨大な体力を消耗する。
魔力が10以上あれば、魔力が減ることはないが、消費体力を魔力がカバーしてくれるらしい。
でも、今は1。カバーなんて出来ない。
大丈夫かな。
――ガシャン。
また、天井付近の鉄骨と瓦礫がずり落ちて、大きな音を立てる。
ガシャ、ガシャンッ。
これ、もう落ちちゃうよっ!
「ツェルドくんっ!」
「無理だよっ」
「どうして⁉︎」
「ぼくはもう、限界っ。3枚目の強化バリアなんて、張れないっ」
「でもっ、何かっ」
「じゃあ、どうしろって言うのさっ。あんなの、普通のバリアじゃ、受け止めきれないしっ」
ツェルドくんが、はぁ、はぁ、と荒い息をする。
「ルイ、吸引魔法ヴェラホールとか、使えないのっ?」
「無理だと思う。ふらついているヌヴェルさんまで吸い込んでしまうかもしれない」
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホゲホッ」
――打つ手なしだ。
ツェルドくんは限界。
レネアさんの氷壁は溶けてしまう。
僕の魔法も使えない。
「湖畔に浮かぶ 揺れ夜月
空を二つに 分かちたる
祝福されし 月の赤子
同じ宇宙の下
同じ月の下
微笑んでおくれ 月の姫
聡明すぎる その瞳
穢れを知らない その瞳
光を宿す その瞳
細めた その 瞳からこそ 涙が頬を 伝いけれ」
助けられない。
ガシャンッ。
組み合わさっていた鉄骨と瓦礫が、崩れた――。
ドゴォォォォン!
「僕は、さいごまで、お姫様の『お兄ちゃん』でありたかったんだ」
グシャアッ……!
「城が崩れるぞっ!」
「バリアよ、伸びろっ」
リクの声にいち早く反応したツェルドくんが、2枚のバリアを外まで伸ばす。
ドゴゴゴゴォン!
「外へ出てっ」
城が崩れ、もうもうと煙が立ち込めている中を、ツェルドくんとレネアさんは少しふらつきながら、外へ出る。その横を、リクが懸命に走る。
僕は、皆よりも早く外に出て、もう1つのバリアの下を走った。
プレーヌちゃんを、助けなきゃ!
プレーヌちゃんの所に着いた僕は、彼女の体を起こし、背負う。
彼女は、1つ年下の女の子だ。白流学園では、一応運動部だったから、筋トレだってしてたんだ。
おんぶくらい、余裕。
3人の方へ走り、レネアさんが凍らせた湖面の上にハンカチを敷く。そして、ハンカチの上に顔がくるようにプレーヌちゃんを寝かせた。
僕は3人の横に座った。
誰かに言われたわけでもなく、僕たちは全員、あの火を見ていた。
「あ、れ? お兄、ちゃん、は?」
お姫様が、起きてしまった。
「The stark reality」を読み終えた皆様、お疲れ様でしたー! そして、ありがとうございました!
かなり長かったと思います!
「一騎打ち」だから、もっと戦うのかと思っていた皆様方においては、申し訳ありませんでした。
バトルシーンが見たいなー、と思った方々、「争乱」にございます! もう一度、見てみるのも良いかと!
いよいよ、2話もあと1章になりました。
ツォルソーでの旅も終わりになります!
全力で書き上げますので、楽しみに待ちながら、応援してくださると嬉しいです!
それでは、2話目完結後にお会いしましょう!
さようなら!




