22. The stark reality 〜Once upon a time〜
文字数(空白・改行除く):2,095文字
「昔々、あるところに」級の話。まあ、300年くらい前の話。
その時の王――つまり、僕の先祖の名前はユールセン・ラ・セレネ。世間的には、ユールセン・ネルフ・トナスってなってる。偽名だね。自分の血族が分からないようにするための。
ソイツはすげぇ容姿端麗。
男だけど、プレーヌに似てるんだよ、ソイツの容姿。
サラサラの金髪。切れ長の緑の目。色白で、しなやかで細く長い指。
プレーヌの耳飾りは元々、ソイツの物だ。
まあ、その話は置いておく。
ソイツはよく教会のあった場所に来てたんだ。
この場所はさ、教会だけじゃなくて、八百屋とかもあった。商店街みたいだったらしくて。
だから昔は、常に活気があって人が多い場所だったわけ。
で、ソイツは、その日も教会に来てた。
家来を撒いて、街の人々に『おはよう』と挨拶してたらしい。こっそりそこに行くのがソイツの日課。
そうしたら、ヒョロガリの1人の男が王に声をかけたんだ。紺色の髪の男だったらしい。
「あなたが王か。私は旅の者。噂に名高い王に会いに来てみれば、至極弱そうじゃないか」
「私が弱そうに見えるか?」
「ああ。王としての風格は、微塵も感じられない。あなたに、この国を守れるはずが無い。旅の者にさえ、負けそうなあなたに」
「私が、お前に負けると申すか?」
「そういうことだ」
「どうだ、1つ勝負をしようじゃないか」
「ああ、いいだろう。どこでするんだ?」
「この広場でどうだ?」
「分かった」
で、2人は決闘を始めた。
王は剣術を嗜んでいて、ヒョロガリのこの男には、負けるはずがないと思っていた。
でもな、相手が悪かった。
そのヒョロガリが、催眠術出来るとか、考えるはずねぇよな。
王は、簡単に催眠術にかかった。
どんな催眠術か?
それは『闘志を大きくする』術だ。
ただ大きくするわけじゃなくて、どんな手を使っても勝ちたいと思わせる術。
ほとんど殺し合いをしてたんだが、勢い余って2人は商店街まで飛び出した。
で、その後も続いてたんだが、突然、王が逃げ遅れた街の人々を人質に取ったんだ。
「こいつの命と引き換えに降参しろ」ってね。逃げ遅れた人って結構いたからね。老人もいたし、皆、腰を抜かしてて。
でもさ、相手、旅人だよ? 何の関わりもない人を助けるわけないじゃん。
馬鹿だよね。
で、まあ、その人は殺されたわけだ。
その旅人が、王を攻撃したからね。
まあ、そんなことが何度も続いて。
王が10人ほど殺したところだったか。
王にも攻撃が当たり始めてね。血が出始めた。
旅人が言ったんだ。
「10人も殺して、まだ続けるのか? どうせ俺には勝てないだろう?」
「は? お前ぐらい、余裕で勝てるぞ!」
「言葉は慎んだほうがいい。俺は、お前を殺せるぞ?」
「ふざけるな!」
「…………じゃあな」
旅人は、ニヤッと笑って去っていった。
で、すごいのはここから。
元から、この王、怒りっぽい気質でね。
負け惜しみはよく言うし、八つ当たりも良くする人でさ。
今回は、八つ当たりが酷くって。
街の人々に暴力を振るったんだ。剣で斬られた人もいた。
もっと早くに逃げておけばよかったのに。
街の人々もかなりの馬鹿だな、と思うけど。
人によっては、その暴力によって殺されて。お腹のあたりをグサグサ刺されて。
それで15人くらい死んだ。
王は、合計で25人、殺したんだ。
「そんな……!」
僕は、彼の言うこと、一つ一つに驚いていた。
こんなに綺麗な街でそんなことがあっただなんて、全然信じられない。
「この話には、まだ続きがあるからね」
僕はまた、彼の話に耳を傾けた。
ユールセンには、奥さんがいたんだ。
皆、知ってる。
まあ、俺としてはどうでもいいから、いまいち覚えてないけれど。
でもさ、ユールセンって悪いやつでね。
愛人がいた。
側室じゃないよ? あくまでも愛人。
レディリア・フェト・カリエって人なんだけど、誰も愛人だとは見破れなくてね。
結局、その2人の恋仲は発展。レディリアは、子を孕んだ。
ユールセンは、その子に剣を贈った。
その子がある程度、大きくなった頃にさっきの事件は起こる。
ユールセンと、その親族は皆殺しにされたんだけど、やっぱりレディリアとその子供はバレなくて、殺されるのを免れた。
その子孫が、僕とプレーヌってわけなんだ。
「そして、この双剣――『双月』と耳飾りは脈々と子孫たちに受け継がれ、家出していた僕の代わりに、母はプレーヌにこの2つを渡した」
話しながら、プレーヌちゃんの横に移動していた彼は彼女の腰ベルトから1本、赤みを帯びた白色の剣を引き抜いた。そして玉座のところに戻ると、滑らかに剣をくるくると回し、床に突き立てた。
「――刺さるんですね」
「この状況で、そんなこと気になるの?」
あ、確かに。
彼はフッと笑って、また口を開いた。
「この床、石じゃないからね。剣なんて簡単に刺さるんだよ」
へええ。
彼は玉座に座り直した。
「それにしても、ルイくんって肝が据わってるね」
あ、よく言われます。
――って、僕、名前、言ったっけ?
「何か?」
ヌヴェルさんは、ニコッと笑みを返してきた。
ん〜。言ったのかなぁ?
記憶にはないんだけど。
「じゃあ、僕が14歳のときの話をしようか。まだ、訊く気はあるかい?」
僕たちは無言で頷いた。




