19.跳べ跳べ!そして、顧問に呆れろ! 後編
男子の恋バナとか書いてみました。
文字数(空白・改行除く):3,501文字
「あー、暑〜い」
学園会中等部部室で、副代表のケリア・トリエス先輩が、スカートでパタパタと扇いでいる。
「あの、先輩。それやめてください」
「なんでよー。いいじゃない、ワザフ。6時間目が体育だったから暑いのよ。どうせ、スカートの下に半袖体操服のズボン履いてるんだし」
そういう問題じゃないんだが。
「もう少し、女子らしくおしとやかに出来ないんですか?先輩、黒髪美人だから、憧れの的なんですよ?こんな姿を見たら、皆、失望しますよ?」
俺はこの先輩のせいで、女子っていうものに期待できなくなった。
「ワザフ。ここには、お前とアレイア、私とケリアとミコしかいないのよ。誰にも見られないわ」
黄色の髪のショートのセネン・フォロカ先輩が言う。
いや、男子の俺とラナフがいますからね。
忘れないでくださいよ!先輩のせいで女子に期待できなくなったことを!
「まあまあ、ゼイくん。気を鎮めて」
「ワザフ先輩。さっきからうるさいですよ」
紅茶を淹れていたラナフが俺を嗜め、本を読んでいたエヘントが俺を睨んだ。
へいへい。
「そういえば、代表はどうしたんですか?」
ラナフが訊いた。
「代表は学園会会議だよ」
トリエス先輩が答える。
「違うわよ、ケリア。会議はこんなに早く始まらないわ」
「あ、そうか」
「代表は、ミコの兄さんとモメてるのよ。あのモメ方だと、1時間ぐらいはモメるでしょうから、モメ終わったらそのまま会議に行くんじゃないかしら?」
1時間ってモメすぎじゃね?
「代表が会議でいないということは、今回も誰かが代表の飼い犬の散歩をするってことですよね?」
ラナフが訊いた。
「だな。ラナフがやるか?」
「えーと」
やりたくないってことだな。
「俺もやりたくねーわ。エヘントは?」
「私もあんまり……。先輩たちは?」
「私も嫌よ」
トリエス先輩が首を振ると、黒髪が揺れた。
顔だけ見れば綺麗な人なんだけどな。
「セネンは?」
「無理」
取り付く島もなく断る先輩。
「どうする?」
「サートにでも押し付ければ?」
「ダメだって。アイツ、怒るでしょ? アイツ、怒ったら面倒臭いんだから」
そう言うと、トリエス先輩は「そろそろローブを着ようかな」と言いながら立ち上がった。
サート・ハレン先輩に、思いっきり悪口言ってるんだけど。
「サートに電話する?」
「そうね。セネン、電話よろしく」
「はいはい」
トリエス先輩からローブを受け取りながら、携帯を取り出した。
プルルルルルルル、プルルルルルルル――。
あ、スピーカーモードにした。
「もしもし」
『もしもし。何だい? この美しい僕への用って?』
「…………」
『ん、電波が悪いのかな?』
「――代表の飼い犬の散歩を押し付けてもいい?」
『この僕がしなきゃならないことだとは思えないね』
「そ。じゃあジャンケンしましょう。ワザフたちもやりなさいよ」
「「「「はーい」」」」
『最初はグー!じゃーんけーんぽん!』
俺がチョキ。
ラナフがグー。
エヘントもグー。
トリエス先輩もグー。
フォロカ先輩もグー。
「サートは何出したの?」
『僕はグーを出したよ』
ということは。
「ワザフの1人負け!ということで、散歩、よろしくお願いしまーす」
「「「「「お願いしまーす」」」」」
あーあ。
俺かよ〜。
「そんなに嫌だったら、一緒に行こうか?」
「よろしく」
俺は、ラナフに向かってうなずいた。
ワンワンワンワン!
ラナフと一緒に、学園を出て代表の家に来た俺は、犬小屋の横にかかっているリードを外して握った。
「散歩コースってどこだっけ」
「メインストリートに行って、フィールの塔のところを左に曲がるんだよ。で、ケレエ広場を横切って、そのまま真っ直ぐ。角で左に曲がって進んでいったら、またここに戻ってくるよ」
「オッケー。行こうぜ」
俺たちは、歩き出した。
「そういえばさ、お前って兄弟いんの?」
「うん、いるよ。下に2人」
「いるんだ。え、双子?」
「うん。男子と女子の。2人とも、僕よりずっと頭良いし、運動もできるんだけどね。あんまり、僕は兄って感じじゃないけど」
ラナフはニコッと笑った。
「ふーん。何歳?」
「11。今、小6」
「あー、小6」
「聞いたことない?『プライド崩しの怪物』って」
「……なんか聞いたことあるかも。初等部のときにそういう言葉を聞いた気がする」
「だと思うよ。言葉というよりかは『二つ名』」
二つ名?
「弟が、クールにグサッとくる言葉を言って、さらに妹がほんわかした言い方で遠回しにディスるんだ。その2撃で、大抵の人のプライドは崩れる」
うわー。
キツいし、怖いぞ、それ。
「その双子ならではの息ピッタリさが、余計にその力を倍増するんだよ。そんな双子につけられた通称が『プライド崩しの怪物』」
怪物て。
「ていうか、そんな弟妹を持って、大変じゃねーの?」
「めっちゃ大変」
だろうな。
「まあでも、慣れたかも。11年間、一緒にいるしね」
あー、なるほど。
「ていうかさ、その二つ名っていつ、つけられたんだ? ていうか、誰が作ったんだ?」
「えーと、入学してすぐの頃。最初は、初等部の先生の間で言われてたらしくて。それが広まって皆が言い出したから、誰が作ったあだ名かは分からないんだ」
先生、勝手に生徒に二つ名をつけちゃダメだろ。
「あ、メインストリート」
本当だ。
――ぐいっっっっっ!
「うおおおおおおおっ!」
「え、え、ええっ⁉︎」
犬が走り出した。
「ちょ、ちょま! 待てって! 待てってコラ!」
犬は昼であまり人がいない中を、ぐんぐん走っていく。
「待ってよ、ゼイくん!」
俺じゃねえって!
「犬に言え!」
「伝わらないよ!」
そりゃそうだ。
「待て、犬!」
――うおっと!
「止まるなよ!」
「待て、って言ったのはゼイくんだよ」
たしかに、そうだけど。
突然、犬が止まるとか、聞いてねーよ。
こけるだろうが!
「それよりさ、何でシモベは止まったんだろ」
シモベ? ああ、犬のことか。
「知らね。俺が待て、って言ったからじゃねーのか?」
ラナフも言ってただろ?
待て、って言ったのは俺だ、って。
「違うと思うよ」
お前が言ったんだろ!
「ああ、あれだ!」
無視かよ!
まあ、いいや。
ラナフが指差している先にはドッグフードの店が。
「代表がいつもあそこで買うって言ってたし、シモベが試食を爆食いするってよく言ってる!」
ああ、あの店なのか。
「シモベ。今日は買わねーから、早く次のフィールの塔へ行くぞ」
俺たちはまた歩き出した。
なんか熱くなってきたな。
運動したからか。
あ、フィールの塔。
あのドッグフードの店、メインストリートの端だったみたいだな。
すぐメインストリートを抜けたよ。
それにしても高いなぁ。
この中ってどうなってるんだろ。
気になるなぁ。
――次は、ケレエ広場を目指さなきゃな。
「なあ、ラナフ」
「ん?」
「お前って好きな人いる?」
「な、何っ⁉︎ 突然⁉︎」
そんなに突然か?
「で、いんの?」
「い、いるよ」
マジか!
「え、誰? 誰?」
「フェリア・セルスちゃん」
あー、なるほどな。
かわいいもんな。フェリアって。
ボブヘアで、くりくりの目。
よく笑ってるイメージだ。
フェリアがタイプの奴って多いよな。
寮の同室のヴァンもタイプだ、って言ってたわ。
「ていうか、高嶺の花だな」
「そんなことぐらい、分かってるよっ!」
分かってるんだな。
ラナフって、かわいい系がタイプだったんだな。
「僕は教えたんだから、ゼイくんも教えてよ!」
ふん。
「教えねーよ――ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ちょま! 待て待て!
シモベ! 走るな!
速すぎだって!
突然、どうしたんだ!
ラナフも走ってついてくる。
「ゼイくんが言わないから、走ったんだよ!」
「なんで犬のシモベが走るんだよ!」
うわ、マジで速い。
ちょ、こけるって!
こける、こける!
「なんでって言われても、きっとそうなんだから、しょうがないよ!」
しょうがなくねぇよ!
「ゼイくん、早く教えて! じゃないと、シモベは止まらないよ!」
なんでだよ!
「早く!」
「嫌だ!」
ギュン!
うわああああああああああああ!
また速くなった!
やべえ! やべえ!
足が絡む!
マ、マジでコイツ、人間の言葉が分かるんじゃねえか?
利口すぎんだろ!
「ゼイくん、早く!」
「分かった、分かったって!」
すうっ……。
大きく息を吸う。
「俺の好きな子は、シュウン・ナルテだ!」
――ピタッ。
うおおおおおおおっ!
だから突然、止まんなよ!
「よく言ったよ! それにしても、ゼイくんって正統派美人が好きなんだね……」
「うるせえっ!」
「正統派美人かぁ……」
「だからうるせえ! この、かわいい子好きが!」
「別にいいでしょ! 誰のことが好きでも! この、正統派美人好き!」
「そっくりそのまま返させてもらうぜ! 俺が誰のことが好きでもいいだろ!」
本当にうるせえな!
「このぉ、」
すうっ……。
「かわいい子好き!」
「正統派美人好き!」
恋バナです???
最後、めっちゃモメました。
男子って、どんな恋バナをするんですか?




