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怪しいイケメンくんと異世界旅行〜目指せ、世界征服〜  作者: 風葉 千尋
第2話 紫の月
46/67

19.跳べ跳べ!そして、顧問に呆れろ! 中編

文字数(空白・改行除く):2,269文字

************************


 私は獣。

 人の皮を被りながら、鋭く笑わぬその瞳で虎視眈々と獲物を狙う。

 その獲物は目の前に。

 気づいていない、おバカさん。

 獣を信じちゃ、ダメですよ。

 ほら、獣があんなところに。

 あなたも獣に喰われるわよ?


************************


「しっつれーしまーす」

 って、誰もいないのか。

 6時間目が終わって、帰りのSHRも終えた私は、生徒会室にやってきた。

 レネア会長もいないし、カルルはなんか、学園会中等部代表とモメてたし遅くなりそう。エーナ先輩はいつも通り遅くなるんじゃないかな?

 カルルがドアの横にかけたホワイトボードに、「クティルヴィア・ジョーノーヴ」とピンクの字で書かれているマグネットを貼る。

 まあ、待っていたら誰か来るかな?

 それまで、理科のワークの宿題を片付けとこう。

 えーと?

 水の電気分解の化学反応式?

 これは大丈夫!

 「2H₂O→2H₂+O₂」。

 次は?

 トントン。

 誰だろ、ドアをノックしたのは?

 ギィーッ。

 入ってきたのは、暗く鈍い黄緑色の青丹色の髪と目の割と小柄な男の人。

「こんっにっちはー!」

「えっと……。誰ですか、あなたは……」

「おっ?君はティルちゃんだね?よろしくぅ!」

「よ、よろしくお願いします」

 で、誰なんだろう、この人。

「ボクは、カイルディア・レヴァンス!3年家庭科教師で、生徒会顧問だよ!」

「ええええっ!」

 生徒会に顧問、いるの⁉︎

 聞いたことないんだけど⁉︎

 ていうか、今まで今年の生徒会に顔、出してないよね⁉︎

 会ってないし‼︎

「……生徒会に顧問っていたんですね……」

「そうだよー。あれ?知らなかった?」

「はい。いらっしゃってなかったので」

「あー、そうだねー。まあ、生徒会は優秀だし、放っておいても自分たちで出来るでしょ?」

「まあ、たしかに。何で来られなかったんですか?」

「風邪ひいたんだよね。見かけによらず、体弱いから」

「でも、数週間経ってますよね?」

「えへ、へへへ。バレたぁ?実はねぇ、後半、仮病だったんだよねー」

「仮病……」

 先生なのに、呆れるというか、何というか。

「そしたらさー、ルサちゃんにバレちゃって、めちゃくちゃ怒られたわけ。で、布団ひっぺがされたから学校に来たんだよ」

 そりゃあ、怒られますよね。

「ていうか、『ルサちゃん』って誰ですか?」

「あれ?知らない?ムディルサ・ザネット。ボクの奥さん」

「ええええっっっっ!」

 どーゆーこと⁉︎

 ザネット先生が奥さん⁉︎

 ザネット先生って、高等部2年の英語教師で、しかも学園会の顧問だよね?

 生徒会と学園会、対立してるのに、顧問同士は夫婦なんだね。

 不思議〜。

「一応、仕事なんだけどさ」

「あ、はい」

 かなりテキトーな先生だけど、やっぱり顧問だから仕事は受けてくれてるみたいだね。

「最近、エイリンス地方にまた魔物が出たらしいんだよねー」

 魔物。

 聞くたびにいつも、心がざわざわとする。

「自我を持たない数種類の魔物がね。そのうちの1匹、獣型が逃げたらしくてさー」

 エイリンスの魔物が、逃げた。

 私の将来の夢は、エイリンスで隊を組んで、エイリンスの人々を守ること。

 理由は、襲われて亡くなる人がいるから。

 心臓の鼓動が速くなる。

 もし、もし、もう誰かが殺されたのなら……。

「その魔物に魔力を吸われたと思われる人が、数人いるんだけど、どんどんここ―首都に近づいてきてるんだよね」

「それって‼︎ 」

「そういうこと。その魔物は、首都(ジール)に向かってるんだよ。だから、生徒への注意喚起を頼もうと思ってね」

 やっぱり……。

「……わかりました。しておきます」

 トントン。

「失礼しまーす」

 ギィーッ。

 ドテッ。

「ワミちゃん、大丈夫ー?」

「先輩、大丈夫ですか?」

 ドアの下のわずかな段差につまずいて倒れた先輩は、体を起こそうとした。

 しかし、

 ドテッ。

「体を起こすのに失敗しちゃったよ。会長がいなくてよかった」

 先輩は、制服についたホコリを手で払いながら立ち上がった。

 そして、眼鏡をかけ直して言った。

「お久しぶりですね、先生。それで、何の御用ですかっ?」

「ワミちゃん、何でそんなに怒ってるの?」

「フン! 絶対に許さないから」

 何で先輩は怒ってるんだろ。

「ピーマンを食べさせようとしたこと、絶対に忘れませんからね!」

 ピーマン⁉︎

 え? あの緑の野菜を⁉︎ 食べさせられそうになったから怒ってる⁉︎

 なんか、理由がしょうもないんだけど。

「2年も前のことだよー。謝ったでしょー?」

「フン! 許しません!」

「んもー」

「で? 結局、何しにきたんですか? 先生は」

「あ、そうそう。注意喚起だよ。魔物出現の。詳しくはティルちゃんから聞いて。じゃあ、ボクは帰るよ」

「あ、はい。さようなら」

「さっさと帰れ! アホ教師!」

 ドテッ。

「痛ぁ……」

 必死になって、背伸びをしながら言い返していた先輩は、また前に倒れたのだった。

 本当にやれやれだよ。

「で、ティルちゃん。どんな注意喚起をするの?」

「えーと。放送と、ポスターですかね」

「そうだねー。そんなところだよね」

「まあ活動自体は、会長とカルルに相談してからにしようと思ってます」

「そうしようか。放送は、イベント同好会にでも頼もうかな」

「はい。放送担当はイベント同好会ですから」

「今更なんだけど、どんな魔物が出たの?」

「レイヴェです」

「レイヴェ?」

「はい」

 レイヴェの姿はライオンを大っきくした感じ。

 色は黒。

 持っている魔力で大きさが変わり、0〜30くらいでもライオンの2倍はある。

 逞しく太い四肢と鋭い牙で、凶暴度は最高レベル。

 とても危ない魔物。

「なるほどね。そりゃあ、注意喚起しなきゃいけないわね。分かった。ポスター、作ってくるよ。絵を描くのは得意だから」

「お願いします」

 誰も被害に遭わないといいけど。

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