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怪しいイケメンくんと異世界旅行〜目指せ、世界征服〜  作者: 風葉 千尋
第2話 紫の月
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19.跳べ跳べ!そして、顧問に呆れろ! 前編

文字数(空白・改行除く):3,410文字

 闘志とは何か。

 負けず嫌いの2人は張り合い続ける。

 時には、「自分の方がモテている」とか言ったりして。


 ふわぁぁ。

「こら、エヘント。教卓前の席で大あくびしない!」

 数学βのカイユ・ウィナフ先生がオレを見ている。

 ふわぁぁぁ。

「ちゃんと寝たの?」

「寝てますよ」

「何時くらい?」

「えっと、1時くらい」

「いや、もうちょっと早く寝なよ」

「何時くらいに?」

「10時とか」

「早すぎでしょ。ガキじゃあるまいし」

「そう?なら11時とか」

「まあ、それぐらいで頑張ります」

「あ、もう8時35分ね。評議員、号令」

「起立」

 ガタガタッ。

「気をつけ」

 ピタッ。

「これでSHRを終わります」

『はい』

「礼」

『ありがとうございました』

 1、2、3。

 顔を上げる。

「今日、体育の授業を受ける人は体育館に行ってね」

 ってことは、オレは1時間目―つまり、これから体育館に行かないとな。


 レイネス学園の体操服は、半袖も長袖も3年前に変わった。

 今、着ている半袖体操服の上は、白。丸襟は、紺色。左胸には学年色の緑で縁取りされたネーム。その上には群青色の「Leinesu」の文字。下は、膝丈の紺色のズボン。ズボンにもネームが付いている。横に蛍光の黄色のライン。

 かっこいい部類の体操服だと思う。

「名前をクリップボードに書くのを忘れるなよ。出席記録を残しておけよ」

 ゼウン・トイヴァ先生が叫んでいる。

「上靴はステージの上に置け。女子は右側。男子は左側」

 体育館入口に吊り下げられているクリップボードに名前を書いて、走って正面のステージに上靴を入れた体育館シューズの袋を置く。

「そろそろ並べ。男子は前2列、女子は後ろ2列に大体の背の順で並んでくれ」

 オレの身長は172cm。

 割と高い方だと思う。

 男子がぞろぞろ集まる。

 今日のメンツだと、高い方から3番目。奇数だから男子前列だな。

「あれぇ?あなたはエヘントじゃありませんかぁ」

 ん?この声……。

「なんか用か?ウザ男」

「ウザ男?それって、私のことですかぁ?」

 学園会中等部代表のゼナイトが反応する。

「当たり前だろ?お前以上にウザイ奴、見たことねーよ」

「そうですかぁ。私、そんなにウザイですかねぇ?」

「ああ。世界一、お前はウザい。お前は、世界一ウザイ男。略してウザ男だ」

「そんなに正面切って悪口を言われたのは初めてです。まあ、しょうがないですねぇ。あなたはバカ男ですからぁ」

「ハハッ。バカ男か。違ぇねぇ」

「何、笑ってるんですか?おかしいですよ」

 ゼナイトの顔が引きつっている。

「てかお前、ネーミングセンスねーな。『バカ男』とか、『ウザ男』のパクリだし、ウザ男より語呂悪ぃだろ。ていうか、パクんなよ」

 ゼナイトの目が泳ぐ。

「……パ、パクってませんよ。『〇〇男』とか『〇〇子』っていうのは、誰でも使えるんです。いわば、フリーネームですよぉ」

「変な言い訳だな。面白いけど」

「何がですか⁉︎」

「おい、そこっ!早く並べっ!」

「「す、すみません!」」


 オレは跳び箱とマットが並んだ4列の内の1列の前に並んだ。

「今日から7回、跳び箱とマット運動の授業だ。マット運動をした後、そのまま真っ直ぐ走って跳び箱を跳び、着地。始めと終わりにはポーズしろよ」

 はい、はい。

 それぐらい分かってる、っての。

「今日はとりあえず去年やったのを復習するぞー。何やったか覚えてるかー?」

 何人か手が挙がる。

「順番に聞くぞ。まずマット運動から。そこから」

「前転」

「開脚前転」

「伸膝前転」

「側転」

「倒立前転」

「ロンダート」

「そうだな。去年したのはこの6つだ。じゃあ跳び箱は?」

「開脚跳び」

「台上前転」

「伸膝台上前転」

「はね跳び」

「そうだ。この4つ。なんでもいいから、やれよ。スタート」

 スタートって言われたってなぁ。

 1番前のやつがマットの上で回った。

「何、するんですかぁ?」

 右隣の6段跳び箱の列からゼナイトが訊いてきた。

「ウォーミングアップがてら、側転と伸膝かな」

「しょぼ」

「何か言ったか、ああん?」

「いえいえ、何もぉ」

 ゼナイトは大げさに肩をすくめた。

「お前は、何するんだよ?」

「ウォーミングアップですからねぇ。ロンダートと、はね跳びですかねぇ」

「両方、最高難度じゃんかよ」

「ふふふ」

「お前がそうするんなら、オレもそうしよー。お前に負けたくないし」

「まあ、精度では劣るでしょうけどねぇ。あなたにあるのは勢いだけですからねぇ」

「勢いだけじゃねーよ!精度も高ぇっての!」

「そうですかねぇ」

 大げさに考える素振りを見せる。

 ウゼぇ。

「どっちにしろ、オレはお前に勝てる自信がある」

「言い間違えましたか?勝てない自信、ですよね?」

「違ぇーよ。勝つ自信だっつーの!ちなみに、オレは人気でお前に勝てる自信もあるぞ」

「人気ぃ?残念ですねぇ。あなたにそこまで人気があるように見えませんよぉ?」

「お前もなっ!」

「あ、順番が回ってきましたねぇ」

「オレも。この話は終わってからなっ!」

「ええ!」

 右手を挙げてから、右足を踏み切って右手をマットにつく。左手をマットについて、マットを押して両足で着地。

 くるっと振り向いて跳び箱に向かって走り出す。

 ゼナイトが遅れている。

 跳び箱に手をつくと同時に、ロイター板にどんっと乗って腰を浮かせる。

体が手よりも前側に動いたぐらいで跳び箱を強く押し、体が宙へ。

 そして、着地。

 ―おっと。

 ふらついちまった。

 まあ、とりあえず両手を挙げてポーズ。

 走って列に戻る。

 高度な技を披露したから、視線がこっちに向いている。

「ふらついてましたねぇ」

「お前もロンダートの後、ふらついてただろ!」

「私たち、見られてますねぇ」

 ゼナイトはさらっと無視した。

「お前じゃなくてオレが、な?オレ、モテるから」

「何の嘘ですかぁ?私、知ってるんですよぉ?『生徒会は非リア集団だ』ってこと」

「お、お前、どこでそれを⁉︎」

「皆、言ってますよぉ。ってことで、私の方がモテます」

「いいや。ワミはモテるから!彼氏い()から!」

「過去形でしょう?」

「あ」

「―しょうもない……」

「「はあ?」」

 口を挟んできたのは、オカルト・伝説研究会会長のケイ・アユミ。

 一言でコイツのことを表すなら、「ファーストネーム呼びをする、モテるレネア」。

 オレたち、リア充撲滅委員会の標的(ターゲット)となる輩だ。

「そんなちっぽけなことでモメるなんてしょうもないな。技も、2人ともふらついてるしな。どっちもどっちだ」

 ケイは淡々と言う。

「そして、君たちはモテてない」

「うるせーよっ!」

 殴りかかったオレをひょいとかわし、「次は俺か」とほざきやがる。

 ケイが右手を挙げる。

 体育館から音が消え去った。

 そして、右足を踏み切って、マットに右手、左手とつけると、軽々と体が宙に浮く。

 トン。

 中3男子とは思えない軽い音を着地で鳴らすと、振り向いた。

 振り向いたその瞬間のケイの真剣な顔に女子から黄色い声が上がる。しかし、見惚れていたのは女子だけじゃない。男子だってそうだ。

 どうやらケイの真剣な表情には、不思議な力があるようだった。

 トン。

 キュッ。

 ケイがロイター板の上で踏み切ると、木がしなる軽い音が鳴った。

 腰が浮いて、一瞬、ケイが止まったように見える。しかし、実際には前に動いているのだった。

 と思うと、いつの間にかケイの体は、反ったまま宙に浮いていた。

 トン。

 また軽い音をたてて、着地する。

 そして、両手を挙げる。

 キャアアアアアアア―。

 やはり、女子から黄色い声が上がる。

 ケイが軽く走って戻ってくる。

「さっすが、ケイだな!」

「お前、やっぱすげぇな!」

 同級生がケイに声をかける。

「カル、ノルテー。俺が言ったことの意味が分かったか?」

「う、うん」

「ええ……」

「ケイ、お前はすげぇわ」

「ですねぇ。私たちなんて、足元にも及ばない……」

「そうだ!アユミはすごい!」

 うおおっ!

 トイヴァ先生が突然近くに来て叫んだ。

 脅かすなよ、先生。

 心臓が止まるかと思ったんだけど。

「しかしだな、ロンダートと、はね跳びがあれだけのクオリティで出来るのもすごいと思うぞ」

 えへへ。

 なんか照れる〜。

「ゼナイトが体操に行っていたのは知ってるが、エヘントはどこかで習っているのか?」

「いいえ。どこにも行ってません。叔父さんに教えてもらいました」

「ほう。叔父さん。ってことは、エヘント家当主の弟か。えーとたしか、ユレイ・エヘントさんか。ロンダートと、はね跳びを教えられるなんて、すごい人だな」

「でしょっ‼︎」

 叔父さんのことが褒められるのは、すっごく嬉しい。

 叔父さん、帰ってこないのかな。

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