17.力試し〜たたかい〜
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はあ。
家に帰ってきてから何度ため息をついたことやろう。
自己嫌悪。
自分が嫌で嫌でしょうがない。
昔からそうや。
人を自分より下に見てる。
こんなんで大臣とかやる資格、あんのかなって思う。
そのくせ、下に見てた人に抜かれたら、その人を恨んでしまう。
何なんや、私は。
省別で分かったことを発表する会。
レポートにまとめ、上に提出するものを決める。
3票差で部下のレポートに負けた。
テーマは同じ。「光分野の強さについて」。
部下は「ラージュさんにはたぶん勝てないですよ」と言っていた。
で、負けた。
悔しかった。そして、何故私が負け?とも思った。
素直に部下のレポートを認められへんかった。
褒めてあげられへんかった。
こんな自分、嫌い。
大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
体力ゲージは全員満タン。
敵は僕以外。勝てる気がしない。
「スタートだ!」
ヒュン!
いきなり、ナイフが肩へ飛んでくる。
危ない!
「チッ。外したか」
レネアさんが床に手をついている。
「氷よ!」
ん?
リクとツェルドくんが、ジャンプする。
え?
つられて僕もジャンプする。
ドゴォッ!
床から尖った氷が伸びてくる!
ツェルドくんは氷の上にバリアを張り、その上に乗る。
リクは氷を蹴って床に降りる。
プレーヌちゃんは双剣で氷が伸びるのを食い止めている。
僕は⁉︎
氷に追いつかれるっ‼︎
―あっ!
お腹の下の方に意識を集中させる。
「闇よ!ヴェン・ホール!」
僕の下に魂まで吸い取られそうな黒い穴が開く。
氷の先端が穴の中に入る。そして、根元から氷が折れて穴に吸い込まれる。
ちょっと待って!このままじゃ僕も穴に吸い込まれるっ!
「か、か、か、解除ぉぉっ!」
穴が霧散して消える。
「ふーん。お前、『言霊型』だったのか。『念力型』かと思ってたぜ」
は?『言霊型』とか『念力型』とかって何なんだよ、リク。
まあ、いいや。あとで訊こう。
「射撃魔法セヴィレード!光よ!セーヴィ・レルド!」
ツェルドくんが光の弓と矢をかまえる。
弓が引かれる。
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
絶え間なくツェルドくんから弓が放たれる。
完全に防御ができているのは、氷壁魔法が使えるレネアさんだけ。
リクは、尖った氷の陰に隠れている。
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
…………。
あれ?ツェルドくんが弓矢を消したんだけど?
「光よ、セーヴィ・レルド」
もう1回出した?
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
また来た!
ヒュン!ヒュン!
2本同時に来た!
うわっ!
このタイミングで体勢を崩したっ!
これは避けきれない!
ザクッ。
痛っ!
頬に傷ができ、すぐ治る。
幸い、1本だけがかすった程度で済んだ。
ダメージは5。残り体力は95。
すぐまた構える。
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
また弓矢を消した。
「光よ、セーヴィ・レルド」
ヒュン!ヒュン!
まただ。ツェルドくんは何をしようとしているんだろう。
魔法が、9回射ると解けるとか?
いや、違う。
どう見ても自分から解いてる。
魔法の特徴が分かればいいんだけど、皆に訊けそうにないし。誰に訊こう?
スマホの音声アシスタントみたいに、いつでも答えてくれる人がいるといいんだけど。
―あっ!いたっ!っていうかある!
そういう、魔法が!
魔力をもらったとき、ツェルドくんが言ってた!
「音声呪文、ツァド・イント!」
『お呼びですか、無能なご主人様?」
おおっ!しゃべった!
って、無能ってひどくない?このアシスタントさん。
『私はアシスタントではありません。音の精、グリアです。音声魔法の術式に召喚魔法が組み込まれているため呼び出されました。まあ、無能なご主人様には見えないでしょうが』
心の中が読まれた⁉︎
しかもまた、無能って言われたし。
おっと危ない。矢に当たりそうだった。
『しっかり避けてくださいね。無能なご主人様』
精一杯、やってるよっ!
『あ、無能なご主人様の担当は有能な私に決まったので変えられませんよ。音声魔法で召喚できる精霊は』
変えられないんだ……。
『で、呼び出して何をするんですか?』
あ、そうだった。
セヴィレードってどんな魔法なの?
『セヴィレードは清光分野の射撃魔法です。弓と矢は手の上に、昼夜問わず光を集めて生成します。無能なご主人様がつけている体力ゲージで食らうダメージはうまく当たって20。普通に当たって10。かすったぐらいだと5。夜だと、与えるダメージはそれぞれ2倍です。使用魔力は、連続で10本射ると1消費します』
もしかして、連続して10本射ると魔力を1消費するから、9本射って、やめて、ってしてたのかも。
ツェルドくんの攻撃を止めるには、攻撃に集中出来なくすればいい。
グリア、僕がスタートって言ったら時間を数えてくれる?
『分かりました』
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
この流れだと、8本目は僕に来る。
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
避ける。
よーい、スタート!
「闇よ!グリウェ・イルド!」
ドドドドドドドドドドドド―。
僕の手から黒い石が放たれる。
『1』
「バリアッ!」
『2』
ツェルドくんにバリアを張られたから、攻撃対象はリクとプレーヌちゃんに。
『3、4』
リクとプレーヌちゃんの残り体力は少しずつ削れていく。
『5、6』
2人とも、残り体力は50。
『7』
「あぁ、もう、ウゼェっ!」
ヒュン!
ナイフが僕に向かって飛んでくる。
『8』
それくらい、この魔法で弾き飛ばせるよっ!
『9』
カラン、カラン。
弾き飛ばされたナイフが床に落ちる。
『10』
ヒュウゥゥゥゥゥゥ―。
え?
『11』
見上げると、そこにはもう1本、ナイフが。
『12』
グサッ。
右肩にナイフが刺さった!
血は出てないから、傷にはなってないんだろうけど。
抜かなきゃ。
『13』
「解除」
魔法を解く。
グリア、戻っていいよ。
『分かりました。あと、左にご注意ください。無能なご主人様』
え?左?
ザンッ!
左横腹が一瞬、ズキッと痛む。
2本の傷跡が、治っていく。
プレーヌちゃん⁉︎
彼女は僕を何度も斬りつける。
僕の残り体力は15。
僕は必死に、プレーヌちゃんのお腹に手を押し当てた。一瞬だけ、丹田に力を込める。
「闇よ!グリウェ・イルド!」
プレーヌちゃんは魔法の勢いで後ろに倒れ込む。
しかし、すぐに立ち上がろうとするプレーヌちゃん。
僕は彼女の体力を30も削った3つの石に、意識を集中させた。
「闇よ!蝕め!」
「ぎゃああああああああ―っ!」
プレーヌちゃんの絶叫から目を離せなかった僕たちは、レネアさんが床に手をついていることに気付いていなかった。
「氷よ!」
「うわっ」
「げっ」
「ヤバッ」
床から伸びてきた氷に対応出来なかった、僕とリク、ツェルドくんと、倒れていたプレーヌちゃんに、しっかりと氷は突き刺さった。
そしてめでたく、僕とプレーヌちゃんは行動不可―体力が0になったのだった。




