16.お盆休み〜レネアさんと10人のガキ〜
レネアさんのお盆休みです。
今回、後書きはありません。
文字数(空白・改行除く):3,230文字
一応、外に出てきてはみたが、することがない。
それで俺は今、公園のベンチに座っている。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。遊ぼ」
声をかけてきたのは、10人の男女混合小学生グループ。
「君たち、何歳だ?」
「9歳と、コイツだけ10歳!」
栗毛色の髪の男子は少し長めの髪の男子を指差す。
「そう。ぼくは10歳。ぼくのことは『シュン』と呼んでくれたまえ」
「コイツ、面倒くさいナルシストだけど、根はいいやつだからな!」
「そうだ。ぼくはいいやつだよ」
えっと、何と言ったらいいのだろうか。
このシュンというガキは仲間に色々言われても気にしていないらしい。
神経、なかなか図太いな。
「えーと、俺でいいなら一緒に遊ぶが……。本当にいいのか?」
「もちろんだよ!おにーちゃん、こっちこっち」
赤褐色の髪の女子が俺の服を引っ張って走る。
足、速いな。この10人。
公園の真ん中に、くっついた2つの長方形が描かれている。コートか?
「じゃあ、お兄さんは審判してくれる?」
若草色のハイネックを着た黒髪ショートカットの女子が、ポケットに手を突っ込んで、鋭い目で俺を見る。
「遊ぼ」と言ってきて、頼むのは審判か。
「ゲームは『シャータフ』。ルール、分かる?」
「いや。分からない」
「チームは2つ。5人、5人。そのうち1人が元外野。いつでもコートに帰ってこれる。ボールを投げて相手チームの人の体や服の一部に当たったりかすったりしたら、当たった人はアウト。バウンドボールなら当たってもセーフ。顔に当たってもセーフ。アウトになったら外野行き。元外野以外の外野は内野の人をボールで当てたらコートに入ってこれる。コートの内側にあるボールは内野のもの。それ以外は外野の。どちらかのチームの内野が全滅したら、終了」
「なるほどな。大体分かった」
「右コートは男子が俺とユウ、イネット。女子はサレン、ファルノ」
栗毛色の髪の男子が、坊っちゃん刈りの黒髪の男子と、はねがちな銀髪の男子と、赤褐色のツインテールの女子と、グレーのハーフアップの女子を指差す。
「ケーラはそう選んだか。なら、ぼくの仲間は残り。男子がカン、ウェーレ。女子がセイル、ラエンだね」
シュンは、手入れなしの金髪の男子と、癖毛の焦げ茶色の髪の男子と、黒髪ショートカットの女子と、きれいな茶髪の女子を指差す。
「外野はどうする?」
「俺たちはイネット」
「はーい」
はねがちな銀髪のイネットが左コートの後ろに出る。
「ぼくたちはラエンに任せようかな」
「オッケー。行ってくる」
きれいな茶髪をくくりながら、右コートの後ろに出
る。
「ボールはチームに1つずつだから」
セイルが鋭い目で俺を見る。
「分かった。―では、よーい、スタート!」
ふと思ったのだが、この人数だとすぐ終わるのではないだろうか……。
ギュン!
……ん?ギュン?ボール、速すぎないか?ギリギリ見えたが。
「っとぉ」
ユウが自分の真正面でボールを受け止める。
「イネット!」
「オッケー」
ボールがユウから、外野のイネットにパスされる。
「2つだからね」
ウェーレがチームに声をかける。
ユウが思いっきり肩を後ろに引く。
ビュン!
左チームは思い思いの体勢で避ける。
とそこにイネットからの速いボールが投げられる。狙いはセイル。
「私を狙ったこと、後悔させたげる」
左手だけでボールを受け止め、流れるように力強いボールがファルノに向かって飛ぶ。
バーンッ!
すごい音を立てて、ファルノの横腹に当たる。
「痛いんじゃ!お前さんのボールは!強すぎるんじゃよ!ワシに何か恨みでもあるんか!」
お年寄りみたいな口調だな、ファルノは。
ファルノが外野に出て、イネットが内野に入る。
また、始まる。
今、右チーム外野のファルノと右チーム内野のケーラがボールを持っている。
まず最初に動いたのはファルノ。
回転のかかったボールが真っ直ぐ金髪のカンに向いて飛ぶ。
と、ここでケーラがセイルの方を向いてコートの端まで走り出す。
セイルは眉をひそめて、ケーラを睨む。
投げた!だが、進行方向はセイルではなく、シュン。
「よし、受け止めたっ!」
カンの声で左チームが、一斉にケーラの投げたボールを見る。
「また、曲げてきたんだね」
シュンが少し前に出て受け止める。
すぐにボールをケーラに投げ返す。
ギュン!
なるほど。最初に投げたのはシュンだったのか。
シュン!
空気を切り裂くような音と共にカンの腕が振り下ろされる。
「カンのボールも速いけど、私の方がもっと速いよ!」
サレンが受け止める。
ケーラは無事、シュンのボールを避けられたらしい。
今、左チーム外野と右チーム内野がボールを持っている。
すぐ終わるのではないか、と思っていたが、その考えはハズレだったみたいだな。
「結果は……左チームの勝ち!」
「さすが、ぼくのチームだね」
「っしゃー!」
「よし、勝ったっ!」
「私がいるから当たり前」
「勝ったのね。良かった」
「強いなぁ、左チーム」
「ケーラも良く頑張ったよ」
「おう!イネットも最後の方まで残っててすごかったぜ!」
「今回はセイルに勝てると思ったんだけどなぁ」
「やっぱり、シュンとセイルは強すぎるのう」
右チームのケーラと左チームのシュンがほぼ同時にボールを投げ、わずかに早くシュンのボールがケーラに当たった。
この10人、スーパー小学生だな。
「兄ちゃん!審判してくれてありがとな!」
「お兄さん、子供の遊びなんかに付き合ってくれてありがとう。お兄さん、14か15歳でしょ?」
ケーラとシュンが頭を下げてお礼を言ってくれる。
だが、シュンの言い方が引っかかる。
子供の遊びなんか?
たしか、プレーヌが言っていた。この国では、13歳から「大人」という見方がある、と。現在は20歳からだというが。
ガキが「子供の遊びなんか」と言うということは、この国ではガキの遊びや、ガキが軽く見られているのか?
意味がわからない。
ガキの遊びは、これからの生き方や、人間関係、コミュニケーション能力や社会性、想像力、身体能力、体力、人格など、いろいろなものに影響を与える。
生きていくために、無くてはならないもの。
決して、娯楽と一緒にしてはいけない。
そして、ガキが軽く見られていること。これが1番、許せない。
大人なんてものは、俺たちより年をとっただけ。もっと言えば、俺たちより老けているだけ。
本当の大人かどうかは、精神面で決まる。精神面がどれだけ成熟しているか、だ。
「ねぇ。お兄さんは、この辺の人じゃないでしょ?」
セイルが、ポケットに手を突っ込んだまま、訊いてくる。
「ん。ああ」
「もしかして王座決定戦に出るつもりなのかね?すごいのう。勇気があるんじゃなぁ」
「ああ、出る。友達とな」
「ならさ!私たちのお願い、聞いてくれる?」
サレンが俺の服の袖をつかんで、俺を見上げる。
「ああ、聞こう。どうしたんだ?」
俺は130〜140cmの身長のガキたちに目線を合わせる。
「もし、おにーちゃんたちが王様になったら、もっと子供の遊べるところを作って。公園も他にたくさん。お父さんもお母さんも税金を納めてる。なのに、何にも使われていないの、税金は。あと、死ぬ人も減らして。毎日、教会のあった場所で何十人も死んでる」
あそこで、1日何十人も死んでいたのか。
つまり、1年間で4000人以上死んでいるということになる。
「分かった。約束しよう。必ず、そんな国にすると」
「ありがとう!」
ツインテールを揺らして、かわいらしく笑う。
「ああーっ‼︎」
イネットが時計を見て突然、叫び出した。
「ど、どうしたんだ⁉︎イネット⁉︎」
ケーラがイネットの顔を覗き込む。
「帰らなきゃ。じゃないと、姉ちゃんにシバかれる!」
「そうなのか!それなら早く帰れ!姉さんほど怖いものは無いからな!」
「兄ちゃんにも姉ちゃんがいるの?」
「ああ。姉さんは鬼だと思ってる」
「分かる!俺の姉ちゃんも鬼みたいだ!」
「それよりイネット。早く帰れ。シバかれるんだろう?」
「そうだった!忘れてた!じゃあ、帰るわ」
『バイバーイ』
あははははは―。
この10人、本当かわいいガキだな。




