15. フィヌレースの王族と土産物 後編
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ラージュさんには剣を差す、肩がけのホルダーでしょ。
ラージュさんのイメージ的には、背中で掛ける感じじゃない。
ショルダーバッグみたいな感じで掛けるのが似合うよね。
白い革紐。茶色い革紐。黒い革紐。
デザインにも、青い羽を広げて舞う蝶。ヴェルゼーみたいな花。優しい色の鞠。それ以外にもあるけどさ。
どれがいいかなんて、ぼくは選べないんだけど。
あ、プレーヌに選んでもらおうかな。
「ねえ、プレーヌ。知り合いにあげるお土産を選ぶ手伝いをしてくれない?」
「オッケー」
「あげる相手は27歳、女性剣士。普段、白い服。リーダータイプ」
「なるほど。なら、茶色の革紐じゃない?あとは、デザインを変えてみたらいいじゃん。ヴェルゼーの咲く中を1頭の蝶が飛ぶんだよ」
「1頭って数えるのはさすがだね」
「ありがとう」
「プレーヌ、センスいいんじゃない?確かに似合うと思うからさ、彼女に」
「似合うならよかった」
「プレーヌにもプレゼントするよ」
「本当⁉︎ありがとう!」
「プレーヌは双剣だから、腰ベルトかな」
「ボクも茶色の皮がいいな。あ、このシュエインのデザインがいい」
シュエインって言うんだ。この花。
「なら、これをプレゼントするから」
「ありがとう」
会計、しよ。
「2000ネインです」
「はい、どうぞ」
「2000ネイン、丁度いただきました。毎度ありがとうございました」
ぼくたちは店を出る。
「1000ネインも出してもらっちゃってさ、ありがとう」
プレーヌの目はキラキラしていて、口角が少し上がっている。
プレーヌは、普通にかわいいと思う。
「別にどうってことないからさ」
「あ、ちょっと待っててよ」
プレーヌが走って離れていく。
ここにある、ベンチに座ってていいよね。
あのぼくたちが最初に来た場所以外は、平和な場所が多いんだよね。
皆、ニコニコしてるし。
皆、幸せなんだね。
「帰ってきたよ」
少し息を切らして、両手に小さな瓶を持って帰って来た。
「何、それ」
「飲んだら分かるからさ」
「炭酸でしょ」
「秘密」
「じゃあ振ってもいいんだ」
「ダメ!」
「ほら、炭酸じゃん」
「あはは」
プレーヌが心から笑っていて、ぼくもそれにつられる。
トクン。
「あはは」
トクン、トクン。
さっきから、心臓の鼓動が少し速い。
「じゃあ、飲もっか」
「そうだね。飲もうか」
「「かんぱ〜い!」」
プシュ〜。
シュワワワワワワッッッ!
「きゃあ!何なのさ!」
「うわっ!何なのさ!」
2人とも頭からびしょ濡れになって、顔を見合わせる。
「炭酸、振られてんじゃん」
「吹き出す勢い、強すぎでしょ」
あははははは!
「あはは、あははははは!」
プレーヌが笑っている。
「もうプレーヌ、ヤバイじゃん!早く拭かないとさぁ」
「そうだね。でも、ツェルドもだよ!」
「結局、2人ともでしょ!」
レモン風味のサイダーの甘酸っぱい香りを匂いながら、ぼくたちは笑い続けた。
ぼくのこの気持ちは、許嫁がいるぼくの、この気持ちは。
彼女を愛しいと思う、このぼくの気持ちは。
「恋」かもしれない。
人の心は 色を 帯びる
感情は 心を彩る 絵の具として いろんな色を つけていく
今 ぼくの心 何色だろう
淡く 淡く 淡い色
淡い 桜の 色だろう
あと少しで11時だ。
集合地を聞いてなかったから、最初の場所に戻って来たけど、ここで合ってるかな?
まあブレスレットが、僕に近づいてきてるから、ここで会えると思うけど。
「ルイ」
あ、レネアさん!
「お土産は買えたか?」
「はい!こんなにいっぱい!」
僕は両手に抱えた袋を見せる。
「そうか、よかったな。俺もたくさん買えた」
レネアさんの両手にも袋を提げている。
「「ルイ!」」
よく似た2つの声。
「ツェルドくん!プレーヌちゃん!」
ツェルドくんは両手に袋。
プレーヌちゃんは片手に袋を持っている。
「あれ?リクはまだ来てないの?」
ツェルドくんがキョロキョロしながら、僕に訊く。
「うん。まだみたい」
「そ。もうちょっと待つしかないね」
そうだね。
皆、たくさん袋を持ってる。
早く来てくれたらいいのにな。重いから。
「すまん、すまん」
声変わりし終わった低い声が、僕たちに話しかける。
誰?
そして、その声を出しているのは、焦げ茶色より黒寄りの髪で175cmぐらいの身長の高校生みたいな男の人。焦げ茶色の目でケミストルマッシュの髪型。運動部に入ってる人って感じで、イケメン。
「誰なのさ、あんた」
ツェルドくんが、針のように鋭い目つきで男の人を睨んでいる。
―けど、この人、どこかで会ったことがある気がする。
「え、俺?分かんねぇの?俺だよ、俺」
俺だよ、俺、ってオレオレ詐欺犯かよっ!
「俺は、リク」
「「ええ〜っっっ!!!!!」」
えっ⁉︎どういうこと⁉︎どうして、この高校生みたいな人が⁉︎リクなの⁉︎
そして声をあげたのが、僕とプレーヌちゃんだけなのはどうして⁉︎
ツェルドくんとレネアさんは、なるほど、ってうなずいてるし!
「え、ちょっと。どうして、5歳の男の子が16歳ぐらいになるのさ…………」
プレーヌちゃんが目を見開いている。
えっと、リク……?
「一緒に王座決定戦に出るんだから、やっぱり、隠すんじゃなくて知ってもらおうと思ってな。―あ。あと2分で変身は解ける。……帰らないか?」
「う、うん。じゃあ、ザルソンを呼ぶからさ」
ヒューイ、ヒュイ。
アパートに戻ってきた僕たちは、癒しの間で円になってリクの話を聞こうとしていた。
「俺たち―つまり、俺とルイ、ツェルド、レネアさんは魔法使いだ」
「魔法使い⁉︎」
「ああ。まあ、使える魔術には限りがあるがな」
レネアさんが付け加える。
「そして、俺たちはこの世界には住んでいない。俺たちは異世界から来たんだ」
「異世界……」
「さっき使ったのは、変身魔術。使えば5分間だけ、変身することができる。声は自分の特技だけどな」
ふーん。
「まぁ、子供の遊びで使う魔術だけどな。自分が変身するときは魔力を5、消費するが、他のものを変身させるときは3でいい。便利な呪文系魔術だ」
道理で、リクがイケメン高校生に……。
って、リクは元々イケメンなんだけどね。認めたくないけど。
「昼飯はもう食べたか?」
グレー味がかった茶色のショートヘアの男の人が、突然地下にやってきた。
「あ、ザントさん。何なのさ。あ、また宅配で注文しすぎたの?」
「ご名答!」
「本当に金持ちすぎだよね。今度は何を頼んだのさ」
「ピザ。10枚。桁、間違った」
「ねぇ、皆。お昼ご飯、ピザでいい?」
『うん』
「一応、買った身として俺は2枚食べる」
残り8枚。
「ボクは1枚」
残り7枚。
「俺も1枚」
残り6枚。
「ぼくは1枚半」
残り4枚半。
「僕も1枚半かな」
残り3枚。
あと、レネアさんだけ。
「俺は、3枚全部もらう」
「良かった。全部、無くなった。じゃあ」
『いただきまーす』
この国での12時。フィヌレースでの午前1時。
黒髪の男の子は体を起こした。ベッドから降りて寝室を出ると、水を飲んでからソファの前で床に座る。
眠っている、焦げ茶色の少し長い髪の男の子の頭に手を乗せて、優しく撫でる。
「お前は、幸せそうだな」
スースーと寝息を立てる男の子に微笑みかけて、男の子はまた呟く。
「お前はこの旅行のこと、どう思ってるんだ?お前は、本当の―心からの不満を言わないから」
男の子は頭を撫でながら、はぁと息を吐いて、何もない宙を見つめる。
「本当ならお前は、今も人間界で友達と楽しく遊んでいたはずだ。俺の目的のためにお前を巻き込んでさ。でも、お前にはそれを話せてない。罪悪感を抱く、なんて柄じゃないが、ちょっと辛いな。でも、途中で止めることはできない。旅行の相棒もお前じゃなきゃいけない。全てはアイツのため―」
男の子は手を止め、立ち上がる。
「ベッドに戻るか」
この夜の出来事は、黒髪の男の子しか知らない。
こんにちは!
風葉です。
今回(15. フィヌレースの王族と土産物)は長くなりそうだったので、3つに分けてみました。
突然、こうしたのは読みにくさに気付いたからなのですが。
今回、シリアスなリクを多めに書きました。
さあ、リクは何なのでしょうか。
続きをお楽しみください!
読んでくださり、ありがとうございました!




