15.フィヌレースの王族と土産物 中編
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「用意、できたよ」
ツェルドくんがプレーヌちゃんに笑いかける。
「じゃあ、行くよ」
僕たちは地上に上がり、外へ出る。
ヒューイ、ヒュイ。
プレーヌちゃんが口笛を吹く。
また、竜のザルソンを呼ぶのかな?
ゴォォォォ―。
来たっ!
「おいで、ザルソン」
ザルソンが、軽く地上へ降りたつ。
「ありがとう、ザルソン。利口だね。さあ、皆、乗って」
また、乗りやすいところに4人とも乗せてもらい、前からツェルドくん、僕、リク、レネアさんの順番で乗る。
「ザルソン、飛んで!」
バサァッ。
大きく翼を羽ばたかせ、空へ。
あれ?さっきは気づかなかったけど、他にも竜がいる。
赤い竜、青い竜。いろんな竜がいる。
人が乗ってる、竜がほとんど。
『この国の特徴として挙げられるものに、竜がこの国にいて10歳になると相棒を組むこと』。
あ!
なるほど。皆、相棒を組んだ人と竜なんだ。
でも、ザルソンみたいな黒い竜はあまりいない?
「黒い竜ってあまりいないんだね」
「そ。闇竜だからさ。召喚したときに、自分でも驚いちゃったよ」
出会いは、召喚、なのか。
でもって、闇竜か。
闇竜は珍しいのかな?
「お土産を買いに行くのはあっち。宮殿前通り。ついでに王座決定戦の会場―お城も見に行くからね」
『オッケー』
「さ、本気で飛んで!ザルソン!」
「ガオッ!」
バサッ。
またしても一瞬。
速いなぁ。
「降りるよ。ジャンプで大丈夫?」
え〜。
ていうか、降りる、というよりかは、落ちる、というべきなんじゃ?
「ルイ。そんなに怖いなら、手をつないであげるけど?」
うーん。なんかみっともないけど、その方がいいよな。
「お願いします」
「じゃ、はい」
「え、何?」
「左手。早く」
「あ、ごめん」
左手をツェルドくんの右手とつなぐ。
「じゃあ、先に行ってるからさ」
プレーヌちゃんが、ふわっと落ちていく。
「俺も先に行く」
「俺も先に行く。後でな」
リクとレネアさんもサッと飛ぶ。
「さ、行くよ」
「あ、うん」
「せーの!」
よっと!
ツェルドくんと一緒に落ちていく。
隣を見れば、服がパタパタとはためくツェルドくんがいる。
下を見ているツェルドくんは、僕の視線に気がつくと、僕を見て微笑んだ。
なんか、かっこいいんだけど。
ん?
ツェルドくんが口をパクパクさせている。
なんか言ってる?
も・う・そ・ろ・そ・ろ・ち・じょ・う・に・つ・く・よ?
スタッ。
「ツェルドくん、ありがとう」
「やっぱり気付いてなかったんだ」
「ルイ。ツェルド」
あ、レネアさん。
「君たちは誰にお土産を買うつもりなんだ?」
「ぼくは、ラージュさんとロントさん。あとはアパートの人。生徒会メンバー。あと、テルーシェ部長」
「僕は、ティルとカルさん。ワミさん。アパートの人。あとゼイにも」
「ゼイ?ああ、学園会のガキか」
なんなのかな。レネアさんの「ガキ」の定義って。
僕も最初、言われたし。
「で、問題なのだが。全員がそのメンバーに買ったら、金がかかりすぎる」
あー。
「ということで、買う担当を割り振る。ツェルドは、ラージュさんとロントさん。テルーシェ。エーナ。クドバートさん。フヌさん。ルイは、ティルとゼイ。アルトさん。ケルタヴさん。俺は、姉さん。カル。ゼナイト。ケイ。マイセさん。アリツさん。モクレユさん。リクは、スレンさん。ユズフさん。あとは―」
「とにかく!買いに行くぞ!今はもう7時だから、集合は11時!解散!」
「ちょっ!ちょっと待って!」
大事なことに気づいた!
「あ?」
「お腹空いた……」
「「「「あ」」」」
ぐるぐるぐるぐる……。
「あれがお城かぁ」
お堀に囲まれた宮殿がよく見える、テラスのあるカフェで僕たちは朝ごはん。
宮殿、とっても綺麗。
フィヌレースとはまた違った感じ。
「綺麗じゃん。お城」
ちょっと教会っぽい。
ツェルドくんとプレーヌちゃんはサンドイッチ。僕とリクは目玉焼きとロールパン。そしてレネアさんは5段重ねサンドイッチ。
え?食べ過ぎじゃ。
僕の視線に気がついたレネアさんがこっちを向いた。
「普段、この量を食べてるが」
「え?見たことないんですけど」
「たしかにね。レネアさん、大食いだったの?」
「レネアさん、よく食べるんだ」
あれ?プレーヌちゃんが「レネアさん」っで呼んでる。
「食べてたぞ、ずっと。レネアさんは」
「え⁉︎マジで⁉︎」
「見てなかったか?食べてたのだが」
そうだったのかな?見てなかったな。
「カルと初めて会ったのは、子供大食い大会だ。決勝で当たってな。そして、俺が勝った」
強っ!決勝まで行ったんだ!
あれ?レネアさんのサンドイッチが2つ減ってる。
食べるの、速っ!
「プレーヌは、サンドイッチ好きなの?」
「いや、別に。食べやすいからさ」
「一緒。ぼくも、そこまで好きじゃない。けどさ、美味しいね、この店」
「でしょ。この店、パンが美味しいんだよね」
「確かに。なんか美味しいと思ったら、パンだった。プレーヌは、よく分かるんだね」
「当たり前でしょ!」
ツェルドくんもプレーヌちゃんも楽しそう。
「ねえ、レネアさん」
「何だ?」
この僕たちの会話は、楽しげに話し込む2人には聞こえてない。
「あの2人、いい感じですよね」
「ああ。あの2人は両思いなんじゃないか?」
やっぱり、レネアさんも思ってたんだ。
「微笑ましいな」
「ですね」
「会計は済ませたぞ」
「すみません。奢ってもらっちゃって」
「いや、別に構わない」
「じゃあ、行こ」
「うん。オッケー」
ヒューイ、ヒュイ。
「ザルソン!」
黒い翼を広げた、優しげな瞳のザルソンが上空に現れた。
「乗せて!ザルソン!」
「ガオッ」
スーッとザルソンが着地する。
「ガオッ、ガオッ!」
乗って、って言ってるのかな?
僕たち5人はザルソンに乗って、空へ舞い上がった。
何度見ても、綺麗な景色だな。
「行くよ!進め、ザルソン!」
「さっき言ったように、集合は11時!解散!」
と言って、リクはジャンプ。
かっこいい〜!
「じゃあ、後でな」
レネアさんも、ジャンプして落ちていく。
「一緒に行く?ルイ」
「あ、えーと」
お土産屋さん回りはツェルドくんとプレーヌちゃん2人でしてほしいんだよな。
「一緒に降りてほしいな。その後、別行動しようよ」
「オッケー。ならプレーヌ、一緒に行こうよ」
「うん、オッケー」
「プレーヌ、どうせだから一緒に降りよ」
「オッケー。ちょっと待って」
「うん」
「ザルソン、ありがとう」
プレーヌちゃんは、ザルソンの頭を撫でる。
「さ、行こ」
僕はツェルドくんと手を繋ぎ、ツェルドくんはプレーヌちゃんと手を繋ぐ。
「せーのっ」
「「「ジャンプ!」」」
わずか数秒だったけど、僕たちは青空の中にいた。
うーん。
ティルにあげるお土産って何がいいだろう。
今まで、女子にお土産をあげたことないし。
とりあえず、雑貨屋さんに来てみたけど。
あ!
ティルはいつもゴムで髪をくくってるから、髪ゴムとかいいかも!
「あの、すみません」
「はい?」
「髪ゴムってありませんか?」
「髪ゴムですか?でしたら、こちらに」
たくさんある。一口に髪ゴムっていっても飾りの大きさも、ゴムの色も違うんだな。
あれ?何だろう。この花。
ゴムの飾りにあしらってあるものの中に、日本でも、フィヌレースでも見たことない花がある。
形は桔梗に似ている。フィヌレースにある花だと、ヴェルゼー。白い花で紺色の縁取り。花の大きさ自体は小さい。まあ、飾りにしてるからかもしれないけど。
すごく綺麗。
この花の飾りが2つついたゴムにしようかな。
喜んでくれるといいなぁ。
「これお願いします」
「はい。400ネインです」
1ネインは1円と同じ。
このゴムは400円か。
「毎度ありがとうございました」
次はゼイのお土産。
ゼイは確か犬を飼ってる、って言ってた。
前、喋ったときに犬の首輪が欲しい、って言ってた。
首輪をお土産にしようかな。
姉さんには、食べ物だな。
特にスイーツ。
俺も好きだが、姉さんはスイーツなら俺と同じぐらい食べるからな。
ついでにお供物も買っていくか。
スイーツは、この国にしかないものを買いたい。
何がいいだろう。
ん?まんじゅうがあるな。
竜があしらわれている。
すべすべの皮。
美味しそうだな。
「これ、試食をもらっていいですか?」
「どうぞ、どうぞ」
パクッ。
ふむ。
程よい甘さ。皮と餡の相性。
美味しい。
とりあえずこれを買って帰ろう。
ゼナイトには、お菓子だろう。
しかし、ゼナイトはまんじゅう以外のほうが良かったはず。
何を買って帰ろうか。
俺がお土産を買う相手。
あの人たちが欲しいものは何だろう。
手袋が2組、髪ゴム。
こんなところだろうか。
あ。あと、フライパン、お酒。
買うものがカオスだな。
とりあえず、手袋から買うか。
あの2人は、同じだと怒るだろうな。
とりあえずは選びに雑貨屋へ行くか。




