表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪しいイケメンくんと異世界旅行〜目指せ、世界征服〜  作者: 風葉 千尋
第2話 紫の月
32/67

15.フィヌレースの王族と土産物 前編

文字数(空白・改行含まない):5108字

 土産物を探せ。

 それぞれと縁のある人に贈るプレゼント。

 一人一人のことを考えて、選ぶ。

 これは大事な風習だ。


 ふああああ。よく寝たぁ。

 ソファの上での目覚め。

 なんか、慣れた気がする。

 まあ、寝心地が違うんだけど。

 これ、普通のソファだし。

 今、何時?

 えーっと、時計。

 あ、あった。

 まだ、5時か。

 まだ早いけど、完璧に目が覚めちゃったし、起きておこう。

 でもここにいても、皆の眠りを妨げちゃうだけだよな。地下の癒しの間に行っておこうかな。

 音を立てないように、ゆっくり立って。

 ドアを開けて、次、閉める。

 よし、部屋の外に出られた。

 あとは階段を降りて、地下へ行こう。

 あ、着いた。

 いい匂いがする。香ばしいパンの匂いだ。

 あれ?癒しの間、電気が点いてる。

 誰かいるのかな?

「こんにちは〜」

「今の時間に『こんにちは』って言う奴がいるかよ」

「あ、すみません」

 ドリンクバーの前で、立ってコーヒーを飲みながら僕に話しかけてくれる、長身の男の人。

 うわ、イケメン。

 少し目つきの悪い、切れ長の透き通った茶色の目。薄い唇。茶色の少し長めの髪。黒いスーツ。左手はズボンのポケットに突っ込んでいる。身長は180cmあるかも。

「お前は新入りか?」

「は、えーと」

 1週間、借りてるだけなのは『新入り』でいいのかな。

「期限付きか。もしかして、お前、王座決定戦に出るのか?」

「あ、はい」

「そうか。お前みたいな、何の取り柄もなさそうな男子がなあ」

「あの!仲間がいるんで!」

 何の取り柄もなさそうな男子、って。

 目の前で言わなくても。

「ふーん。なら、その仲間にも言っとけ」

「えーと、何を?」

「王座決定戦は大規模椅子取りゲームだ。1つだけの王座(イス)を巡って、たくさんの人が戦う。あれは、戦争だ。参加者は、他の王座決定戦に出る人を殴る、斬る、撃つ。最悪、殺す」

「どうして、そこまで……」

「お前、それを知らずに参加するつもりだったのか?お前、馬鹿だな」

「そこまで言わないでくださいよ」

「『王座決定戦』から、王を決めることがわかるだろ?しかし、実際、『王』になれるだけじゃない。この世界には1つしか国がない。それだけ広い土地を自分のしたいようにできる。しかも、その地に住む者も自分の思い通りに動かせる。そして何兆円にものぼる、莫大な金がもらえる。これだけの特権があって、参加者がいない、なんてことはあるわけがないんだよ」

「そんな……」

「まあ、年1で行われているが、8年前から王は変わってない」

 8年前⁉︎その王、8年連続で勝ってる、ってことだよね。

「強いんですか?その王」

「まあな。滅多に表に出てこないが」

「へえー」

「王は成人してないって噂だ。威厳を保つために出てこないんじゃないか?」

 成人してない⁉︎

「もう、5時半だな。じゃあ、俺は会社に行ってくる。じゃあな」

「はい、また〜」

 ピロン。

 ん?メールかな?

 ツェルドくんからだ。

『今、どこにいるのさ』

『こっちは全員、起きたんだけど』

 うわー。返さなきゃ。

『癒しの間にいるよ』

『部屋に戻るね』

 ピロン。

 返信、速っ!

『別にいい』

『そっち行くから』

 こっちに来てくれるのか。

『分かった。待ってるね』

 トン、トン、トン、トン。

 ツェルドくんたちが階段を降りてくる音が聞こえる。

 あ、来た!

「おはよう」

「おはよ」

「おはよう」

「おはよう」

 ツェルドくんは右耳の近くに三つ編みをしながら、レネアさんは黒い四角の眼鏡を拭きながら、リクは髪を整えながら、降りてきた。

「朝、早いね。皆」

「お前の方が早いだろーが。ここの時間は1日と1時間ほど遅れている。時差ボケってやつだ」

 時差ボケかぁ。

「ちょっと話すことがある。ここのパンを食べながら話すぞ」

 リクが部屋の隅にあるパンコーナーを指差しながら言う。


「明後日、俺とルイは別の異世界に行ってくる」

「は?どうしてなのさ」

「用事がある」

 ツェルドくんはまだ何か言いたそうな顔をする。

「……そ。分かった。ぼくはこの世界で何かしておくからさ」

「俺も明後日はゆっくりする。この国の観光とかしてくる」

「あ、でも、リクとルイ。違うところに行くからって、滞在期間を延ばさないでよね」

「え、どうして?」

「月曜、ぼくの許嫁と会わなきゃいけないんだよね。許嫁っていっても従兄妹だけど」

「従兄妹⁉︎」

「そ。血を濃く受け継ぐためにね。王を継げるのは3人しかいないからさ」

「3人?」

 3人しかいないんだ。

「そ。ぼくと、許嫁のシュイ。その弟の、シュウ。まあ、王族で結婚してない人は7人いるんだけど」

「王族なのに、4人は王を継げないの?」

「そ。王は継げない。ぼくとシュイ、シュウは王を継げる、属性が宇宙(そら)で純血のジュンヴェイテ家。あとの4人は、先祖が宇宙属性の人と光属性の人の、純血じゃないトゥファリ家。純血じゃないから、王は継げないって話だけど」

 宇宙属性と光属性。

 光属性の血が王族に入ってるってことは、光属性ってすごいのかな?

「その光属性の家系は、魔力が高かったんだよね。王家と同じくらいにね。学園会会長は、その家系で魔力が普通だった人が先祖。だから、魔力は高くない。たしか、その家系はカンチュアス家だったと思うけど。その家系の人間は行方不明。政府が探してるんだけどね」

 学園会会長ってすごい家の子なんだ。

「ぼくは絶対にシュイと結婚して、子供を2人以上つくらなきゃならないんだよね。それに対して、別にどうとも思わないけど」

 ツェルドくんは、家を継ぐことに対して本気だ。

 許嫁と結婚することを嫌だと思ってない。

 僕なら、もし僕がその立場なら、本当にそう思えただろうか。

「―一つ、今後、呪いが解かれない限り、俺を好きな人が1人しかいない人から言わせてもらおう」

 その1人って、科学・化学部員のダリア先輩のことだよね……。

「俺は、自分の家や境遇のために、自分を犠牲にする必要はないと思う。他人が家や境遇をどうこう言う必要も。―本当に、いいんだな?」

「本当にいいのか、ってシュイに失礼でしょ。第一、ぼくは自分を犠牲にしてるつもりはないし。これは将来の夢のため。本当に、犠牲になるつもりじゃない。だから、いい」

「そうか。ならいい」

「おはよー」

 あ、プレーヌちゃん!

 あれ?今日は、髪にゆるくカールがかかってる。服も、ネイビーのデニムジャケットに白いTシャツ、黒いスカート。

 かわいい。今日のプレーヌちゃんは、普通に女子だ。

「ねえ、皆。皆は旅行で来た、って言ってたでしょ?」

「うん」

「なら、お土産、買いに行かない?」

 お土産。

 まさか、そこに住んでいる人から、誘われるとは思わなかったな。

「行こう!ねっ、いいよねっ!リクっ!」

 めっちゃくちゃ行きたい。

 だって、リクと一緒だと、ストレス溜まるんだもん。

「そうだな。アパートの人に買わなきゃダメだしな」

「ぼくもラージュさんに買わなきゃダメだし」

「俺も姉さんに……パシられた」

 うわぁ、ナミさぁん。

「あ、もしかして、プレーヌ、そのためにその服なの?」

「あは。バレた?」

 ペロッとプレーヌちゃんが舌を出す。

「まあでも、かわいいよ。よく似合ってるし」

「うんうん。僕もそう思う。ちゃんと女子だよ!」

 ―シーン。

 あれ?

 皆が僕の方を見ている。

 レネアさんは氷―いや―ドライアイスみたいな目で、リクは口だけで「お・ま・え・は・ア・ホ・か」と言いながら、ツェルドくんは中2なのに「最近、1+1が出来るようになった!」と自慢する人を見るような目で僕を見る。

「ごめん、プレーヌ。ルイはこういうことをさらっと言っちゃうヤバいやつだから、ごめん」

「あ、大丈夫。大丈夫。慣れてるから」

 こういうこと?

「まだ、気付いてないのかよ。本当、お前はアホだな」

 ちょ、ちょっと、リク〜!

「君は礼儀正しいのか、失礼なのか、よく分からないな」

 レ、レネアさんまで〜。



 リクが、用意してくる、って言ったから部屋に戻ってきたけど、服も着替えてるし、用意することないはずだけど……。

「誰が、服の用意をするって言ったよ?服の用意じゃなくて、こっち。これだ。アホか、お前は」

 アホじゃないし。

 ていうか、何それ。リクの手の上の塊。

 金属でしょう?鉄?

「なんで鉄?」

「ああ、なるほどね。その用意か」

「なるほどな。確かにプレーヌの前では、それは出来ないからな」

 あれ?レネアさんとツェルドくんは何をするか、分かってるみたい。

「ルイは分かんないの?小学生レベルでしょ?」

 えーと、小学校は日本にいましたので、知らないんですがね。

「忘れたのか?魔術知識科の1単元だ。魔金属を作る授業。覚えてないか?金属に魔力をこめることで、加工しやすい魔金属に変化させる」

「同じ人の魔力をこめた鉄は引き合うからさ。初めて来たこの異世界で迷子にならないようにするには、ちょうどいいってわけ。そうでしょ?リク」

「そういうこと。ちなみにフィヌレース国の魔法使いの魔力をこめないと引き合うようにはならない」

「へえ。そうなのか」

 レネアさんの目が大きく開いて、目に光が映りこむ。

「でもさ、魔金属を作るには100gにつき魔力30もいるでしょ?ブレスレットか何か作るんだろうけど、たとえ1番魔力の多いルイでも120も魔力はないから足りないし、異世界じゃ、魔力をあげられないし」

「そうなの?魔力をあげられないの?」

「え?あ、うん。なんか、あげられないと思う。宇宙属性の家系魔術はやっぱりフィヌレースじゃないと効かないのかもね」

「だから、2人分の魔力を使う」

 少し大きな声でしゃべりながら僕たちを見回すリク。

「2人分って言ってもルイが25の魔力を100gの鉄に流し込む。あとの5は自分で魔力をこめる。そうすれば、引き合う上に、誰がそこにいるかが分かる。魔金属は便利なんだ」

「なるほどね。じゃあルイ、早くしてくれる?プレーヌを待たせすぎだから」

「あ、うん。えーと。……どうしたらいいの?」

 皆がズッコケる。

「やっぱりルイはアホだわ」

 ツェルドくんが、リクから4つの鉄の塊を受け取って、手に乗せる。

「じゃあ、この4つの鉄のブロックに手をかざして『トフエル』って呪文を唱えて」

 手をかざして。

「トフエル」

 少し鉄が輝いて、鉄が黒みを帯びる。

「黒くなった?」

「そ。ルイの魔力に反応してる。あとはそれぞれが1つブロックを持って、魔力を5、こめたらいいだけ」

 レネアさん、リク、僕が1つずつツェルドくんの手から取る。

「「「「トフエル」」」」

 それぞれが持っている黒みを帯びた鉄が少し輝く。

 僕のは黒く。ツェルドくんのは金色に。レネアさんのは水色に。それぞれの魔力に反応して色が変わっている。

 リクの魔鉄は、リクが握っていて何色か分からない。

「で、これを加工して。ねぇリク。何に加工するのさ」

「ブレスレット。バングルでもいいけどな」

「だってさ。加工で、ブレスレットに模様とか、色とかつけられるからさ」

「うん。分かった」

 …………。

「―どうせ、呪文が分からないんでしょ?」

「う、うん」

「呪文は『ルエフト』。完成形を想像しながらだからね」

 完成形を想像しながら、かぁ。

 別にこだわりはないから、模様は無しでいいか。

「「「「ルエフト」」」」

 4つの鉄が輝いて、光の形が変わる。

 手の上で光がおさまった。

 それぞれの手の上に、幅2cmくらいのブレスレットが出来上がった。皆、無地。リクのブレスレット、黒だったんだ。皆、ブレスレットに円い留め金具が付いている。

 あれ?僕の留め金具、模様が入ってる。

 これは……弓矢?

「模様?」

「ああ。自分を表す紋章ね。魔力の持ち主の紋章が完成形には入るのさ。ぼくのは、あの星が月の形の涙を流しているマーク。レネアさんのは?」

「氷柱だ」

「リクのは?」

「…………」

 リクはブレスレットをいつもより大きな目(いつも目は大きい。ずるい)で見て、反応しない。

「リク?おーい!」

 ツェルドくんがリクの目を覗き込む。

「―ん?なんだ?」

「反応しないからさ、どうしたのかと思った。リクの紋章は?」

「俺のは、鳥。アカショウビンだ」

 アカショウビン?

「アカショウビンって何なのさ」

「異世界の鳥。その世界の、東アジアや東南アジアと言われる地域でよく見られる鳥だ」

 へえ。アジアで見られるんだ。

 ()()ショウビンって言うぐらいだから、赤い鳥なんだろうけど、留め金具が黒いせいで、どんな鳥なのか分かりづらい。

「ほう。異世界の」

 レネアさんが、息をつく。

「でも、どうしてこれがリクの紋章なんだ?」

「……さあな」

 リクは少し目を逸らす。

「まあ、俺の紋章のことは別にどうでもいい。行くぞ」

 リクがスタスタとドアに向かって歩いていく。

 ドアを開けて、廊下に出たリクは目で「早くしろ」と言ってくる。

「分かった。行こう」

「そうだね。行こ」

「ああ。出よう」

 リクはいつも自分勝手だなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ