13.ドッペルゲンガーとの遭遇⁉︎
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ドッペルゲンガー。会ったら死ぬ。
もし、友達が会ってしまったらどうしようか。
剣が僕たちの目の前に迫っている。
斬りかかってきているのは、明らかに僕たちを狙っている男性。
ど、どうしよう……!
―金髪⁉︎
一瞬、僕の視界が金で覆われる。
「この4人はボクの連れ。それでも、彼たちを斬る?」
鎧を着た金髪の人が双剣を重ねて、男性の剣を受け止めている。
「嫌ならボクと戦うことになるけど」
やけにドスの効いている声。
「け、煙……⁉︎」
男性が目を見開く。
そりゃそうだ。だって、金髪の人の周りに煙が現れて、それをまとっているように見えるんだから。
「煙ぃ?そんなものが見えるの?ふーん。ならそれは、ボクの気迫が見せている幻。だってそんなことが出来るのは、兄しかいないからね。で、どうすんのさ?戦うの、ボクと?」
「……し、失礼しましたぁ〜!」
「本当、失礼どころじゃないんだけど。さ、危ないから移動し―えっ?」
えっ⁉︎
「「「「「ええええええええ⁉︎」」」」」
僕たちの目の前にいるのは、金髪の人。
何故かツェルドくんにそっくり⁉︎
まさか、ドッペルゲンガー⁉︎
「ちょっと待って。整理できてないけど、とりあえず移動するよ。走って!」
『は、はい!』
結構な距離を走った。
「ここまで来れば安全。カフェに入らない?ゆっくりしよう?」
ツェルドくんにそっくりな金髪さんがカフェを指差す。
『は、はい』
のそのそと歩く僕たち(僕とリク。レネアさんとツェルドくんは余裕そう)の前を金髪さんが颯爽と先導していく。
チリンチリン。
ドアベルが鳴って店員さんが「いらっしゃいませ。お好きなところにお座りください」と声をかけてくれる。
いやあ、リクに食べさせられた翻訳アメ、優秀!この国の言葉も分かるのか。
部屋でした最終確認前にレネアさんとツェルドくんも翻訳アメを食べたから、2人も声は聞こえるはず。
まあ、飴を舐める前の言葉を聞いてないから、あまり驚けないとは思うけど。
「ここに座ろ?」
金髪さんが窓際の席を指差す。
『はい』
僕がソファ席の奥に腰掛ける。その隣にリク。さらにその隣にツェルドくん。
僕の前には金髪さん。隣にレネアさん。
「まず、名前を教えてくれない?」
「俺はレネア・リアート」
「僕はルイ・サトーです」
「俺はリク」
「ぼくはツェルド・ジュンヴェイテ」
「レネア、ルイ、リク、ツェルド、ね。えっと、ボクはプレーヌ・ラ・セレネ」
ミドルネームがある。
「ご注文はお決まりですか?」
あ、どうしよう。
「サイダーを5つ」
「そんな!悪いよ」
「大丈夫、大丈夫」
「よろしいですか?」
「はい」
店員さんが去っていく。
「―歳は?近いと思うけど」
「俺は14」
「僕も14歳です」
「あ、ぼくも」
「俺は5歳」
「あ、3人、ボクより年上じゃん。ボクは12歳」
12歳なんだ。
ツェルドくんと身長同じくらいだし、一緒かと思ってた。あ、ツェルドくんの身長が低いのか。
「何?失礼なこと考えてるんでしょ?どうせ」
「い、いや」
こ、怖いよ。ツェルドくんのあの目。
「ねえ、プレーヌ。ぼくと似てるけどさ、逆に似てないところある?」
確かに。例えば、2人とも三つ編みをしていて、右耳の近く、っていう場所まで同じ。
「まず、髪と目。ツェルドが瑠璃色の髪。ボクが金髪。ツェルドが金色の目で、ボクの目は瑠璃色」
「うん。あとはプレーヌが右耳に瑠璃色の布がついたピアスをしてるってとこかな」
「髪の長さも。ボクの方が少し長い」
「そうそう」
2人が意気投合してる。
「そういえば、なんであんなところにいたのさ。あそこは、ああいう奴らがずっと戦ってる場所。昔は教会なんかがたくさんあった場所らしいけど。事件があって今はあんな感じらしいよ」
「えっと、旅行?うん。旅行で来ちゃって、知らなくて」
しどろもどろ。嘘はついてないからね、うん。
「なるほどね。あそこは装備なしに行っちゃダメだから。危ないし」
「う、うん」
「旅行なら、どこかに泊まるの?」
「え、えーっと」
「決めてない」
あ、よかった。リクが言ってくれた。
「なら、ボクの住んでるアパートの一室、借りなよ。地図は描くから。あ、ごめん。バイトだ。ちょっと、バイト先まで来てくれない?」
『あ、うん』
プレーヌくんが、お金を机の上に置く。
スタスタスタとドアまで歩き、外に出る。
ヒューイ、ヒュイ。
突然、プレーヌくんが口笛を吹く。
独特なリズムだなぁ。
ゴォォォォ―。
えっ?
上空から落ちる黒い影。
それは翼を広げた生き物の形。
りゅ、竜⁉︎
プレーヌくんが降りてきた黒い竜の頭を撫でる。
「乗って、ザルソンに」
この竜、ザルソンっていうのかな?
「よろしく、ザルソン」
1番、乗りやすいところに、ツェルドくん、リク、僕、レネアさんの順番で乗る。
最後に竜の頭の方にプレーヌくんが乗って、頭を優しく叩き、竜が浮上する。
バサッ、バサッ。
進んだ―って速っ!
「一瞬だからさ」
プレーヌくんが髪の毛をかきあげて右耳にかけると、ピアスの布が揺れる。
「着いたよ」
早っ!
ピョンッ。
へっ?
プレーヌくんが、ジャンプして下に落ちていく。
「僕たちは飛び降りられないから、もう少し降りてくれる?」
通じるのかな、言葉。
「ガオッ」
通じたみたい。よかった。
ゆっくり降りて地面が近づいてくる。
「もういいよ。ありがとう」
えーっと、ジャンプだよね。
安全な高さだと思うけど、まだちょっと怖いな。
「いかないの?ルイ」
「ちょっと怖くて」
「あっそ」
ピョン。
淡々といった!
「俺も行こう」
ピョン。
リクもか!
「自分のタイミングで降りてこい」
ピョン。
レネアさーん!
えっと、行かないとな。
せーのっ!
ピョン!
ヒュウゥゥゥ―。
着地!
よし、成功!
黒い影は遠ざかっていく。
「すみませーん。遅れましたー」
プレーヌくんの声が聞こえる。
「遅い、プレーヌ!シフト、忘れるな、っていっつも言ってるでしょ!」
「はい、バイトリーダー!」
あ、玄関はここか。
ってカフェ?
「ルイ、やっと来たの?遅かったね」
「そんなに遅かった?」
「うん」
「あ、そうだ。地図を描かないとね。フシレさん、紙とペン、持ってない?ボク、鎧だから持ってなくてさ」
フシレさんと呼ばれた茶髪の女の人がこっちに歩いてくる。シャツを肘のあたりまでたくし上げ、黒いスキニーズボンを履き、前でリボン結びを作った茶色のサロンエプロンをつけている。フシレさんは高校生くらいかな?
このカフェの店員さんの服は女性が白いシャツとサロンエプロン、黒いスキニーズボン。男性がシャツと茶色のスキニーズボン。木目調のカフェに茶色はぴったり。
「いいけど、どこの地図?」
「ここからボクのアパートまで」
「なら、私、描いとくから。早く着替えてきてよ。シフト。早くしないとさぁ」
「分かったって、分かったからさ」
プレーヌくんがカフェのバックヤードに入っていく。
「で、描くからね。説明も一緒にするから聞いててくれる?」
『分かりました』
「まずこの路地を左に行くの」
フシレさんが目印になる物を描きながら、サラサラと描いていく。
「3つ目の大きな交差点を右に曲がって、次に1つ目の交差点を左に。5つ目の丁字路を右に曲がったら、4つ目のレンガ造りのアパートがプレーヌのアパート」
完成か!
分かりやすい!
「ありがとうございます」
レネアさんがフシレさんにお礼を言う。
「ごめん!ありがとう」
あ、プレーヌくんが帰ってきた。
「「「「―ええええええええ!」」」」
プレーヌくんが首を傾げる。
いや、ちょっと待って。どういうこと?
白いシャツはいい。
どうして、プレーヌくんが茶色のサロンエプロン⁉︎
茶色のスキニーズボンじゃないの⁉︎
「じょ、女子⁉︎」
「うん、そうだけど。あ、ルイ。もしかしてボクのこと、男子だと思ってた?」
「え、えーと」
「ごまかさなくても」
「まあ、そうなるよねー」
あ、フシレさん。
「プレーヌ、胸、無いし。一人称も『ボク』。 髪も短いしね」
「髪、伸ばしたらいいじゃん」
「毎日、さっきのところに行くから、髪の毛切られちゃうし」
あー、なるほど。
切られるなら、先に切る方がいいと思ったのか。
ピーンポーン。
「3番よ。プレーヌ、行ってらっしゃい」
「え、ボク?フシレさんは?」
「この後。さ、行ってきてよね」
「はーい……」
「で、君たちも行っておいで」
あ、はい。
「ありがとうございました」
レネアさんがお礼を言う。
「はいはーい」
ピーンポーン。
「今、行きまーす」
「行くぞ。そろそろ」
リクが主導権をまた握る。
「ここがアパートか」
2階建ての赤茶色のレンガ造り。
「えーっと、大家さんは?」
「はい、大家ですが……?」
アパートの管理人室からでてきた男の人が反応する。
だるそう。
「ここを借りたいんですけど」
「ここ?無期限?期限付き?」
「期限付きで」
リクがはっきり答える。
「いつまで?」
大家さんが管理人室に戻る。
「1週間後までで」
「分かった。はい、204の鍵。あ、誰名義で借りますか?」
「じゃあ俺で」
レネアさんか。最年長だし、1番いいよね。
「何歳?」
「14です」
「ふむ。貸すのは15からなんだけどなぁ」
「では、プレーヌさんにはどうして貸しているのですか?」
男の人の目が少し大きく開く。
「プレーヌのこと知ってるんだ?」
「はい。プレーヌさんの紹介でここに来ました」
「なるほど。ううむ。しょうがない。貸すか。付いて来て」
それにしてもプレーヌちゃんの名前を出してから、態度が変わったなぁ。
「プレーヌさんの紹介で、って言ったら貸してくれたのはどうしてですか?」
やっぱり、レネアさんも気になってたんだね。
男の人がアパートのドアを開ける。
「プレーヌは僕の、歳の離れた妹みたいな存在なんだよね。プレーヌが君たちのことを信用してるなら、僕も許すしかないでしょう?」
「なるほど……」
なるほど、でいいのかどうかはよく分からない。
あ、階段。
「このアパート、地下もあるから」
2階へ上って行く。
「「「「地下⁉︎」」」」
「うん。地下は癒しの間。公共スペース」
へえ。癒しの間。どんな部屋なんだろう。
「部屋は、キッチン、風呂、トイレ付き。癒しの間と管理人室を含めて部屋は全12部屋」
2階についた。
「左側、手前から2部屋目。ここが204」
ガチャ。
「はい、どーぞー。さっき渡した鍵を使ってね」
「「「「ありがとうございました」」」」
「どーいたしまして」
「あ、名前を聞いておいていいですか?」
「僕の?僕は管理人のクザリア。クザリア・テルノ・リヴァイン」
「クザリアさん、1週間、よろしくお願いします」
僕は頭を下げる。
「「「よろしくお願いします!」」」
「こちらこそよろしくお願いします」
おおっ。
広い!
エアコン、しっかりついてるし。まあ、春だし、使わなくてもいいんだけど。
外と一緒で壁はレンガ。大きな窓もついてる。
床は濃いめの茶色。
ソファはクリーム色。
「あ、家賃については、後で。今日の夜貰うから」
あ、クザリアさん。
「よろしくねー」
バタン。
「さあ、始めようか」
な、何をだ!リク!
ガラガラ。
ん?
って!
「「「ホワイトボードォ⁉︎」」」
リクが何故かおっきなホワイトボードを引っ張ってきた。
どこにあったんだよ!そんなもの!
「え?そこ」
リクが壁を指差す。
マジか!
「じゃあ今から、ここの基礎情報講座を始めるからな」
はーい。
これ、何かの塾か?
リク塾。生徒数0名。
リクが誰もいない教室の椅子を睨んでいる。
面白いな。
「は・じ・め・る・ぞ!」
わ、分かった。分かった。
「まず国名。この異世界にはこの国しかない。この国はツォルソー」
リクが踏み台に乗ってホワイトボードに「ツォルソー」を書き込む。
踏み台もどこから出てきたんだ?
「人口と面積は知ったところでどうにもならないから、言わねぇからな」
確かに。基礎情報で言ったりはするけど、あんまり覚えたりはしないよな。
「この国の特徴として挙げられるものに、竜がこの国にいて10歳になると相棒を組むこと。月が2つあること」
「えっ⁉︎月が2つ⁉︎」
「あれ?ルイ、知らなかったの?」
「気づいてなかったのか?ルイ」
「え?ツェルドくんもレネアさんも気づいてたの⁉︎」
「うん」
「ああ」
マジか!僕だけ気づいてなかったのか!
「あの窓から見てみなよ」
窓から空を見上げる。
えーっと、どこだ?
あ!あれとあれか!
1つは青白く光る、上弦の月より少し膨らんだくらいの月。
もう1つは赤っぽく光る、下弦の月より少し膨らんだくらいの月。
これだと、どちらかが満月の時、もう1つは新月なんじゃないかな?
位置は全然違うけど、気づいてなかったな。
「どう?見えた?」
「うん。見えた。いつ気づいたの?ツェルドくんは」
「え?ああ、竜に乗ってるとき。上を見たら月が2つあるなぁ、って」
反応、薄っ!
「俺も、竜から飛び降りたときに見た」
薄っ!反応、2人とも薄すぎでしょ!
「俺たちがここに来た理由は、この国の6日後の王座決定戦に参加するためだ」
王座決定戦?
「数百年前に王が失脚してから毎年行われている戦いだ」
「王が失脚?どういうことなのさ」
「プレーヌが言ってただろ?事件があった、って」
「言ってたね。で?」
「その事件がきっかけで、王が失脚したとか。詳しいことは分からなかったけど」
「ふーん。何があったんだろうね」
「何かやらかしたんじゃねーの?」
「だな」
だね。
「じゃあ、俺は宝石を金と引き換えてくる」
「あ、うん」
「いってらっしゃい。早く戻ってきなよ?」
「行ってこい。俺たちより、君の方がこの国のことを知ってるみたいだしな。俺たちが行っても時間がかかるだけだ」
こんにちは。
風葉です!
早いものでもう13部分。
しかもなかなかに全部長めだし。
勝手ですけど、新キャラについて語らせていただきます!
プレーヌちゃんとクザリアさんが出てきましたが、クザリアさんが私、わりと好きなんですよね。あのしっかりしていないようで、しっかりしている大人感。あの雰囲気、好き。
プレーヌちゃんについては、私、ツェルドくんが好きなんですよ。だから、プレーヌちゃんの印象が、薄くなっちゃって。
今回はここで終わります!次回もお楽しみに!




