12.占い、よく当たります
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行こう、異世界へ。
しかし、危険が伴うよね。
それぐらい、覚悟してた。
でもさぁ、これは、無い。
僕、言い残したことだらけなんだけど……。
「王子、時間ですよ」
ラージュさんが、僕たちの部屋の外でドアを叩く。
「はいはい、分かったって」
ツェルドくんが面倒くさいなぁ、というようにドアに向かって歩いていく。
「時間?」
「そっ。|当主の集い《Top’s meeting》のね。副会長―カルさんが言ってたでしょ?」
「うん。確かに言ってたね。そのTop’s meetingって何するの?」
「政府が決定した方針の承認とか、お祈りとか」
「お祈り?」
ツェルドくんが、ドアを開ける。
「星の神と導きの神に祈るのさ。星の神って王家が信仰してる神だし、生命の象徴だしね。導きの神にもこの国が良い方向に進みますように、ってね」
なるほど。
「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃーい」
バタン。
「ねえ、リク」
「ん?」
「どうして星が生命の象徴なの?」
「ああ、人間界でも言うだろ?『人は死んだらお星様になる』って。この世界じゃ、その考え方が『星=生命の象徴』みたいになっちゃったんだよ」
「なんでそんな似た考えが?」
「あるだろ、そういうことも。まあ、人間界から魔界に来た物もある。その逆も」
「そうなの⁉︎」
「ああ」
やっぱり、二つの世界は「双子」なんだな。
「そういえば、今日、生徒会のメンバーが来てたようだけど、人、足りてなくないか?」
「うん。僕とツェルドくんがティルと、レネアさんがカルさんと遊ぶ約束をしてたみたいで重なっちゃったんだよね」
「なるほど。もう1人ってどんな感じの人なんだ?」
もう1人って、エーナ先輩のことかな?
「えっとね、茶色の丸メガネをかけてて、ジョーヌ・ミモザ色の髪―」
「ちょっと待て!」
「何?」
「お前、ジョーヌ・ミモザ色、で通じると思ってんのか?」
「え?説明した方がいい?ジョーヌ・ミモザ色っていうのは、ミモザの花みたいな鮮やかな黄色のことだよ。緑みの黄色かな?」
「違う、そういうことじゃない」
「え?どういうこと?」
「色が難しいんだよ。普通の人は生涯その色の名前を聞くことなく死ぬと思う。最初から分かる表現で言え。誰が聞いても分かるように」
「うーん。分かった。頑張る」
そこまで難しいことではないしね。
「お前、そんなんで友達いたのか?―あ、いたか。悠斗、クン?だったっけ?じゃあ、女友達はいたのか?いかにもお前、モテなさそうだけど」
「いたよ!舟乃っていう奴が!」
「いたのか⁉︎……マジでびっくりした」
「なんでだよ」
『佐藤。あなたの明日の運勢は最悪よ。菅生よりもね。ラッキーアイテムは無し。あなたも子どもに気をつけて』
へっ?
この声は、聞いたことがある。
―この声の主は、清水舟乃。
趣味も特技も占いの、僕の唯一の人間の女友達だ。
「なあ、流射。英語の宿題見せて?」
自分の座席に座っていたら、後ろから肩を叩かれた。今の座席は名前の順。つまり、後ろは菅生悠斗。
「嫌」
「なんでだよ!」
「バレるし。僕まで怒られるしさあ。黒木先生と違って木下先生、厳しいし」
「まあ、確かになあ。くーちゃんはあんな優しいのに、なんできのしーは厳しいのかなー」
「くーちゃんって誰?あと、きのしーも」
「くーちゃんは黒木先生。きのしーは木下先生」
「怒られるよ?そんなこと言ってたら」
「そう?別に怒られるぐらい慣れてるし、元々、ブラックリスト入りしてると思うし」
「それはそうだけど」
悠斗が先生の中でブラックリスト入りしたのは、中等部入学式の頃から。つまり去年からということになる。悠斗は、僕と悠斗のクラスの担任の先生に反抗した。
先生は早く帰りたい、という顔をしていて、全く祝ってもらえてる感じがなくて。
そこで悠斗が言った。
『せんせー、もうちょっと祝ってくださーい』
『何言ってるの。ちゃんと祝ってるわよ!』
『祝ってません。先生、嘘つかないでくださーい』
『嘘?なんの根拠があって?』
『声が上ずってる。俺、嘘を見抜くのだけが特技なんで』
『それだけ?自分の感じたことだけで?』
『そうですよ。それともなんですか?生徒の特技を否定するんですか?』
先生は確かそれで言葉に詰まった。
そのまま解散。
去年の1年間、先生はずっと悠斗を睨んでた。
「明日から夏休みだって思うと気が晴れるよなー」
「えっ?あ、うん!」
「なんだよ、上の空だな」
「そう?まあ、そうかな。それはそうと、夏休み、何する?」
「明日、図書館行かない?」
「あー、いいよ」
「佐藤、菅生」
1年生のときに同じクラスで悠斗の隣の席だった舟乃が声をかけてきた。
「何?」
「ん?なんだ、舟乃?」
「さっき、あなたたちを占った」
「そう、で?」
悠斗は適当にあしらう。
舟乃はしょっちゅう、僕たちのことを占うから慣れてるんだよな。
「菅生」
「ん?」
「あなたの明日の運勢は悪よ。改善する方法は、明日佐藤と一緒にいないこと。子どもに気をつけて」
「はあ?」
うん。突然、運勢は悪、とか言われたら、は?ってなるよな。
「佐藤」
「えっ?あ、うん」
「あなたの明日の運勢は最悪よ。菅生よりもね。ラッキーアイテムは無し。あなたも子どもに気をつけて」
舟乃の占いなんかを気にしてなかったけど、あの占い、当たりまくってる。
特に『子どもに気をつけて』。この子どもって、リク、だよな。アイツの占いってあんなに当たったのか?
「びっくりしたー」
はっ。そうだ。リクとしゃべってたんだった。
「あ、明日、用事がある。10時から行くから、準備しとけよ」
「あ、うん」
10時から行く、ってどこへだよ。
土曜日の朝はメインストリートの活気に磨きがかかるよね。
って思ったら、脇道に入っていくし。
「どこへ行くんだよ」
「石屋」
「石屋?」
「ああ。アルトさんオススメの石屋だ」
「何それ」
「しっつれーしまーす」
あ、ここのお店か。
ガラガラ。
横開きの扉。ちょっと建て付け悪め。
って、ええええ⁉︎
どこの棚にも宝石が!
大きさも大きいのばかり!
「触んなよ」
「分かってるって」
「そこのダイヤモンドを2個」
「分かった」
お店の人、無愛想だな。
耳打ち、耳打ち。
「あれ、何カラットなんだ?」
「1カラット。人間界だと20万ぐらいはする」
マジか!
ん?
お店の人がふかふかのマットの上に手をかざしている。
「ジャルド」
コロン。
え?
宝石が出てきた。
もしかして魔法?
「100ヴェイル」
100ヴェイルってことは1000円だよね。安っ!
「はい」
「こっち、品物。ありがとうございました」
ガラガラ。
「なあ、リク。あれ、どういう魔法なんだ?」
「石分野が使える魔法。宝石を作れるんだよな、石分野は。だから永遠に枯渇することのない宝石の値段はそこまで上がらない」
「ほう。だからあんなに安いのか。で、なんで買ったんだ?」
「異世界で売って生活費にする」
「ああ、なるほど」
安く生活できる、ってことか。
「帰るぞ」
「あ、うん」
「荷物は大丈夫か?」
「「「うん」」」
リクが最終確認をしている。
僕たちの部屋のリビングにリュックやボストンバッグを肩にかけている、僕とリク、ツェルドくん、レネアさんの4人が立っている。
「じゃあ、行くか」
リクが僕を見る。
「うん」
4人で行く異世界旅行。リク以外の仲間がいる。ここに来たときより、ワクワクする。
「<,#|*#;*#.|\}.<,#;}_€$+%%#^{>€@?&.(.(?」
黒い穴が開く。
リクが顔だけ穴に突っ込んで、キョロキョロしている。
「どうしたんだ?リク」
「いや、この道、神様も使うんだ。神様にバレるとまずいだろ?」
「あー、確かに」
「行くぞ」
スタスタスタ。
「速くない?」
「リクはそんな奴だよ、ツェルドくん」
「まぁ、そうだけど」
「あ、足を踏み外すなよ。永遠の苦しみを味わうことになるから」
「あっそ」
「そうか」
え、2人とも冷静すぎない?
「ここだ」
リクは手前から4つ目のドアの前で立つ。
「開けるぞ」
ギィ―。
「ちょ、ちょっと待て!」
なんか嫌な感じがする。これは僕の直感!
って遅かった!
開けた瞬間に外に出るんだった!
まぶしい!
「ここは、どこ⁉︎」
なんか鎧を着てる人とか、剣を持ってる人がたくさんいる。
「てやあああああああ!」
僕たち、斬りかかられてるぅ⁉︎
「ぎやぁぁぁぁぁぁぁ―!」
こんなところで死にたくないぃぃぃぃぃ!
風葉です。
久しぶりに短めにしました。
この話はまだ読みやすい方ではないでしょうか。
今回は人間界での話をメインに書かせていただきました!
新キャラ続々、なんですけど覚えられてますか?
私はできてない―(遠い目)。
はい、失礼しました。
次回もよろしくお願いします!




