11.チートくん(?)と次期当主の集い
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―椅子取りゲーム。
そのルールは単純で人間界では、パーティーの定番ゲームになっています。
ゲームには子供から大人まで参加でき、白熱した戦いとなります。
椅子取りゲームはある意味、戦争なのです。
―しかし、本当に戦争になれば、あなたは参加しますか?
1つの特別な椅子を狙い、敵を斬り、撃ち、殴り、殺す。
きっと、あなたは参加しないでしょう。
私もそうであってほしい。平和が1番だと、私は思っています。
でも、この国の伝統を変えることは難しい。
だから、今日も国の端で祈るのです。
私には何もできないけれど、この国に来たあなたに訊いておきたい。
もし、椅子取りゲームの優勝賞品として、何万人、何億人も暮らす国の「王位」が与えられたなら。副賞として、「土地」と何兆円にものぼる「金」がもらえたなら。
Would you like to take part in this game?
このゲームに参加しますか?
「ルイ・サトー!一緒に帰ろう!」
今日はノー部活デー。
部活がないから、一緒に帰ることができるね!
「いいよ!ツェルド・ジュンヴェイテくん!」
昨日、生徒会メンバーが天に向かって拳を突き出してから、もっと団結力が上がった気がする。
なんか、人間界じゃないこの魔界でも、一生暮らせる気がするなぁ。
「『ジュンヴェイテ』は、いらないって言ってんじゃん。クソ親父と一緒にすんな、って言ってんでしょ!」
「ごめんごめん、ツェルドくん」
「分かったんならいいよ」
「ティルも帰ろう!」
「うん!ルイくん、ツェルドくん!」
だって、こんなに仲間がいるんだもんね。
美人な、クティルヴィア・ジョーノーヴ。
王子の、ツェルド・ジュンヴェイテ。
それ以外にもたくさん!
「仲良いな、お前たち」
あ、カル・エヘントさん!
それにレネア・リアートさんも!
こんなに優しくて厳しい先輩もいるし!
「あれ?ワミトル・エーナ先輩は?」
「ワミは保健室。階段を転げ落ちたんだよ」
ああ、なるほど。
ドジなエーナ先輩らしい。
「まあ、エーナは頑丈だから、打撲ぐらいで済むと思うがな」
階段を転げ落ちて、打撲のみ、かぁ。頑丈だな。
「帰るぞ。早く。俺たち、取り残されてるぞ」
あ、確かに。
……ドンッ。
えっ?
なんか、背中が押されたんだけど。
カルさんがニヤニヤしてる。
押したの、カルさんなんじゃ?
「カルル!押さないでよ!」
「ごめん、ごめん。早く歩け」
はーい。すみません。
「そういえば」
「ん?どうした?」
「カルさんって、寮に入ってませんでした?」
「ん?ああ。今日は、レネアの家に遊びに行こうと思ってな」
「寮で着替えてから来い、って言ったんだがな」
「いいじゃん、いいじゃん」
早く行きたかったのかな?
「ううん、違う。着替えるの、面倒くさくてさ」
おー。おお。
……変な反応になっちゃったよ。
「ということで、一緒に帰るから」
「そうなの⁉︎」
あら、ティルが驚いてる。
「私も、ルイくんの部屋に遊びに行こうと思ってて!皆、行き先、一緒じゃないですか!」
ティルが皆の顔を見回す。
あ、確かに!
「まあでも、私は1回、家に帰りますけど」
「うんうん。着替えにね」
ティルが家に帰っている間に、僕たちも着替えるんだよね。
「ということは、3時は食堂が大賑わいだな。姉さんはちゃんと準備してくれてるだろうけど」
「レネアの姉さんの作る菓子か。美味しいよな。なのに何故、弟の料理の腕が絶望的なんだか」
「おい。カル」
おっ!
レネアさんの、殺気怒気光線が炸裂!
―レネアさん、料理の腕が絶望的なんだ……。なんか意外……。
えーっと、鍵、鍵。
ガチャリ。
「ただいま〜」
やっと、鍵を持たせてもらったよ。
僕は小学生か!
アイツこそ、小学生にもなってないのに。
アイツ、5歳だぞ!5歳!
僕は中2!
「リク!」
「あ?なんだよ」
借りている304号室の中にある、部屋の扉から出てくるのは、5歳の男の子。
何故こんなに口が悪いのか……。
「そんなに嫌そうにしなくてもいいだろう?」
「嫌なんだからしょうがないだろう」
コイツ、本当嫌なヤツ。
「ルイ。早くしない?カルさんとか、ティルとか来ちゃうし。お菓子が食べたいんだけど」
そうだった。
今日のお菓子は、ツェルドくんの好きなお菓子のはず。たまたま、皆が集まる日に、ツェルドくんの好きなお菓子になったわけだけど。
今日のお菓子は「ブッセ」。
ツェルドくんの好きな飲み物は「サイダー」みたいなものなんだけど。
合わないよね?
「ブッセ」と「サイダー」。組み合わせが悪いと思うんだけど。
「何?組み合わせ、悪いとか思ってんの?ルイは、バカなの?……一緒に食べるわけないじゃん」
あ、そう……。
やっぱり。
「と、とりあえず着替えようか」
「そうしよ、そうしよ」
こんなに、庶民と同じ生活に馴染む王子がいるのだろうか……。
「やっほー」
今日のティルの私服は、白のTシャツに茶色のサロペット。
動きやすそう。
「あ、また最後かぁ、私。当たり前かな?」
公共スペースのソファに座ってるカルさんをティルが見る。
「何してるの?」
「あ?ティルか」
んなっ⁉︎
カルさんがリクの頬を引っ張ってる⁉︎
ブニィー、ブニィー。
あははは!
妙に大人っぽいくせに、こういう引っ張られてる時の顔はちゃんと5歳だ!
「……ルイ、後でボコボコにしてやる」
「怖い……」
怖すぎだって!
「カルル、何してんのよ!……あ、この子がウワサの5歳のリクくんか。私は、クティルヴィア・ジョーノーヴ。ティルって呼んでね。リクくんの話は、ルイくんから聞いてるよー」
「こんにちは」
「わぁー、イケメンだねー」
「レネアー!」
食堂の奥から声が聞こえる。
「何?姉さん」
「ブッセ、持っていって!」
「あ、レネアのお姉さん。オレも手伝います」
カルさんが立ち上がる。
「いいの?なら、カルくん、ブッセ持っていってくれない?レネアは飲み物ね」
「「オッケー」」
レネアさんとカルさんがそれぞれ手に持って登場。
おおー。
ブッセ、美味しそう。
さすが、マイセさん。
パティシエのマイセさんが作るお菓子ほど美味しいものはないよ。
このアパートの食べ物は本当最高!
『いただきまーす』
……美味しいっ!
フワッフワで優しい甘み。
中に入ったクリームがこれまた美味しい!
生地は少し香ばしい。
美味しいなあ。
ツェルドくんの頬が緩んでいる。
ツェルドくん、顔が少し女の子っぽいし、かわいく見えるなぁ。
かわいい。
ゆるゆるだ。
この中で1番、女装が似合うのはツェルドくんだろうな。1回見てみたい。
このジュースはなんだろう。
アジュンソーダ?
「ルイ、入れるぞ」
「あ、お願いします」
シュワワワぁ。
炭酸がパチパチ弾ける。
微炭酸かな?これ。
この味、僕、知ってる。
えーっと、何だったっけな。
……りんごだ。
りんごソーダだ。このジュース。
でも、正確にはりんごじゃないかも。
このアジュンっていう果物は甘酸っぱい。
どっちも美味しいかも。
「―授業、どうだった?」
「退屈だった」
「カルルには聞いてないよー」
「面白かった」
「そうなの?」
確かに、人間界の授業で勉強の内容が面白いって思ったことは少なかったし、この感情もこの世界では珍しいのかも。
「どこが、面白かったのさ」
ツェルドくんが3個目のブッセを手に取りながら口を開く。
食べるの速いなぁ。
「社会かな。地理。この国っていろんなところがあるんだなぁ、って思って」
「ああ、なるほどな」
「なるほどね」
「そうだよねぇ。改めて思うけど、この国、広いよねー」
秀才トリオがうんうん、とうなずいてくれる。
カルさんは、そうか?って首をひねってるけど。
でも、本当に広いんだよね。
ここ― フィヌレース国の首都ジールを含むフィンテート地方やアリアンテ地方、エイリンス地方などの東の地方をまとめて、トージェ。ラージュさんたちの出身地、サヒア地方や西の都、スレンゼを含むガイトテータ地方などの西の地方をまとめてサージェ。この世界にある土地のほとんどを占めるのがフィヌレースだから言語も多様。が、しかし、僕は日本の方言に聞こえるわけですねー。何故か。
「私、1回、ロデエス地方に行ってみたいんですよね」
「ロデエス地方?」
「あれ?ルイくん、知らない?割と有名な観光地だよ」
「そうなの?」
「風車が街の至る所に建てられてるんだ。昔から風の強い地方らしいんだ。おかげで風を利用する分野が発展して、風力発電が1番最初に行われた場所、って有名になったとか」
さすが、レネアさん。博識。
「その風景も素晴らしいんだってさ。行ったことないからよく分かんねぇけど」
「へえー。すごいねー」
「ぼくの母さんは昔、ロデエス地方に住んでたよ」
「王妃様が?ロデエス出身だったの?」
ティルが目を丸くしている。
「ううん。母さんの出身はジールだよ。大学の間だけ貸してもらえる領地をロデエス地方にしてたから」
貸してもらえる領地?
何それ⁉︎なんか凄そう!
「その後、領地奪りで学園側に勝って母さんの領地にしてたらしいし」
「「領地奪り?」」
あれ?ティルも知らないのかな?
「領地奪りは、学園、しかも大学や大学院の裏の伝統。基本的には学園から借りた領地は学園に返さないといけないのに、稀に、その領地が気に入りすぎて領地を賭けて学園に決闘を挑む奴がいるんだってさ。毎年、1人は」
ニヤッと笑いながら「面白い奴だろ?」と説明してくれるカルさん。この場合の「面白い」って、どう考えても「興味深い」って意味だよな。恐っ。
「それを王妃様がやったのか。へぇ、王妃様って面白い奴だったんだな」
「王妃様に『奴』って無礼極まりないぞ、カル」
「あ、ごめん」
「ツェルドくんのお母さんは、勝ったんだね。すごいね!」
「当たり前でしょ。その領地は親父が相続したらしいから、行こうと思えば行けるけど」
「なら、生徒会の卒業旅行の目的地の候補に入れておこう。ロデエス地方を」
「本当ですか⁉︎」
「ああ」
「楽しそうね!どうしたの?」
ナミさんが食堂から出てくる。
「姉さんには関係ないだろう?」
「何よ、レネア!いいじゃない!楽しそうなんだもん。気になるでしょ!」
「なんでそう姉さんはいろんなことに首を突っ込もうとするんだ」
「あら、あなた。前にルイくんと一緒にいた子ね!」
「あ、はい!」
ティルが元気に答える。
「こんにちは!私はナミヌ・リアート。『ナミさん』って呼んでね!レネアの姉よ!」
「私はクティルヴィア・ジョーノーヴです。ティルって呼んでください!レネアさんにはお世話になってます」
こう見ると、ナミさんとティルって似てるんだよね。
元気で素直なオーラ。ポニーテール。表情や服装、仕草から快活さが伝わってくるこの感じ。
本当、似てる。
「いい子ね、ティルは」
「ありがとうございます!」
「ゆっくりしていってね」
「はい!」
ナミさんがまた食堂に戻っていく。
「―ゲームしねぇ?」
カルさんが言う。
「ゲーム?お前、そんな物を学園に持っていっていたのか?」
「ちげぇよ。アパートにあるだろ?ゲーム」
「ああ。レーシングゲームのことか?」
レーシングゲームなんてあったんだ。
「皆でしねぇ?」
「俺はいいが。……皆はどうだ?」
「「「もちろん!します!」」」
「リクはどうする?」
カルさんがリクの顔を覗き込む。
カルさんとリクって仲良いのかな?
「俺もする」
「オッケー!準備しよう!」
プルルルルルルル、プルルルルルルル―。
あ、僕のスマホかな?
……鳴ってない。
「あ、オレだ。ちょっと出てくる」
カルさんが公共スペースから出て行く。
「ああ。5回戦はカルの電話が終わったら、だな」
「そうですね」
それにしてもリク、強すぎ。
5回戦、全部1位。
カルさんとレネアさんが2位争いで、ティルとツェルドくんが4位争い。
僕はほぼ、6位。
……ひどい。
「あ、そうだ。ルイ!」
「何?ツェルドくん」
「今、ぼくの魔力は180でしょ?」
「うん」
「ぼく、こんなに魔力いらないし、あげるよ。ルイに」
「別にいらないよ?僕、20のままでも―」
「いいの!」
ツェルドくんが僕の言葉に被せて言ってくる。
本気だなぁ。
「ぼく、成長期、これからだし。まだ、魔力は増えるから。それよりも、ルイは増えない気がするし」
確かに僕は魔力、増えないけど。
「王子の勘だよ、勘」
王子の勘、って何!
「とにかく!あげるから」
「う、うん」
「エンテート・ジュヴェル!」
…………。
「ありがとう!」
「ツァダーラ・インテトート!」
『ルイ、魔力95増加。魔力115/115。ツェルド、魔力95減少。魔力85/85。全快。ルイ、魔力95増加。魔力115/115。全快』
115⁉︎
ま、まさかの115⁉︎
確かに、前、115だった気はしたけど。
「115。多い気はするけど、まあ、いいんじゃない?この国で1番魔力が多いのがルイになっちゃったね。あんなに魔力が少ない人だったのに」
こ、この国で1番⁉︎
「う、うん」
「それにしても多すぎるだろう、ツェルド」
「そう?」
やっぱり、レネアさんも思いますよね!ねっ!
「王の魔力は98。王の魔力以上だろう?超大魔導師級だ」
超大魔導師級⁉︎
なんかすごすぎる⁉︎
「あるいは、それ以上」
それ以上⁉︎
マジで⁉︎しかもその魔力を持っているのが僕⁉︎
これはもしかして、俗に言う、
「チート」
ってやつじゃないか⁉︎
「……ふざけんなよ、クソババア」
廊下を歩いて戻ってきたカルさんの顔が険しい。
「どうした?カル」
やっぱり、レネアさんも気づいたみたい。
ティルも、ツェルドくんも心配げ。
リクは、ブッセを食べながらカルさんを見てるけど。
「クソババアが―いや、母様が|当主の集い《Top’s meeting》の次期当主の部で出ろ、と」
「ああ、エヘント家は風の家系代表だったな」
風の家系代表。
すごい。風の家系もいっぱいあったよね⁉︎
「オレに家を継がせたくないくせに。なんで、オレを出すんだよ。ミコじゃなくて」
「しょうがない。現時点で君は次期当主なんだ」
「そうだけどさ」
「頑張れ、カル。久しぶりに、アーフュ部長に会えるだろ?」
リクがピクッと肩を動かす。
アーフュ部長、元飛行部長だって聞いたことあるような気が。
「まあ、そうだな。……ゲーム、しようぜ!」
「あ、6時だ。帰んなきゃ」
ティルが時計を見て、支度を始める。
「帰るんなら送るけど。レネア、じゃあオレ、帰るわ」
「ああ。じゃあな」
「帰るぞ、ティル」
「あ、うん。じゃあね、ルイくん。会長。リクくん」
「うん、バイバイ」
手を振ってくれる。
僕も振ろう。
リクも手を振ってる。
リクもなんだかんだで気にかけてもらってたしね。ティルには。
バタン。
廊下の奥のドアが閉まる。
「じゃあ、俺たちも帰るぞ」
リクがやたらと偉そうに言う。
分かった、分かった。
「帰ろうか、ツェルドくん」
「うん」
「じゃあ、また後で」
「ああ」
「ねえ、ルイ」
「何、ツェルドくん」
ソファに座るツェルドくんが床に寝っ転がってる僕を見下ろして口を開く。
「王家、一人一人にある紋章って知ってる?」
「知らない。何、それ?」
「王家の子は生まれた時に、祈祷師に紋章をもらうんだよね。その紋章、一人一人違ってるんだよね」
「その紋章がどうしたの?」
「今思えば、ぼくの紋章、あの時を指してるんじゃないか、と思ってさ」
あの時。
ツェルドくんはハッキリ言わないけど、あの決闘のことだ。王様とツェルドくんの決闘。
「どんな、紋章なの?」
「星が、月の形の涙を9粒も流している紋章。星は、ジュンヴェイテの家のこと。月はぼくの魔術分野の清光のこと。つまりぼくのこと。家がぼくのような要らないものを流しているんだ。涙の痕のようにぼくが家である親父に傷跡を残してね」
言われてみればそんな気がする。
ツェルドくんは家と違う、家とは離れた存在。
体から出た、自分の一部じゃない涙。
ツェルドくんと似ている。
「ルイ、だらしない」
「へっ⁉︎」
突然、何の話を⁉︎
「起きれば?で、ソファに座れば?」
「あ、うん」
ちょっとツェルドくんが優しい。
「失礼しまぁす」
あー、だるい。
どうしてオレが|当主の集い《Top’s meeting》なんかに出なきゃなんねーんだよ。
「カル⁉︎」
先輩!
「久しぶりだな、カル」
「お久しぶりです、アーフュ・ルビア先輩!」
「なんで、フルネームなんだよ」
高1でオレより背の高い男子なのに細身で華奢。色白の肌。
ツヤツヤの黒髪。アホ毛。少し垂れ目がちな切れ目。左目の目尻にある泣きぼくろ。白銀の瞳。
白いハイネックに黒いコーディガン、黒いチャームの付いたネックレスに銀色のピアス。
まあ、闇の家系ルビアの次期当主だし、ツヤツヤの黒髪はいいとして。元飛行部長だし、風分野気流創生能力だから白銀の瞳もいいとしよう。
何故、こんなに女子みたいなんだ?
「いいじゃないっすか」
「まあいいけどな。それにしても全員そろうのは珍しいな」
「あー、『魅力』の家ですね。確か、ロイディアって名前の家だったような」
「そうそう。リジッテが来てるんだよ。左耳にワイヤレスイヤホンをつけてる、リジッテ。無口だけど、喋ったら面白かった」
「ティルの再従兄妹なのに、似てないですよね」
ティルのお母様がジョーノーヴ家に嫁いだんだったっけ?
「まあ、再従兄妹だしな」
「あ、そういえば、先輩の弟に会いましたよ!」
「弟?ジュゼ?それともシュリ?」
「おそらくですけど、『シュリ』の方です。ジュゼ、はジュゼッタ先輩のことですよね?前に本人、シュリって呼ばれたくないって言ってませんでした?」
「うん、まぁ。いいの、いいの」
「かわいかったですよ。生意気でしたけど。似てませんね、先輩と」
「まあねー。兄妹全員似てないからね。俺とジュゼも二卵性双生児だし」
「ですよね。アネスルちゃんもかわいいですし。あ、先輩と似てるの、アネスルちゃんじゃないですか?」
「……俺が、女みたいだって言ってんの?」
げっ。
元中等部の裏番、怒らせた!
先輩、皆の憧れでもあり、問題児でもあるからなぁ。
「先輩が?ないない、ないですよ!」
「ふーん、そう」
こ、怖いし。
「バ、バスケしましょう!」
「バスケ?今?」
「違いますよー。先輩が暇な時に。オレ、先輩にバスケを教えてもらったおかげで球技部の練習相手してるんですよ。だから前より強くなってますから!」
「いいけど」
先輩がニヤッと笑う。
「俺も強いよ?なんせ、お前の師匠で今は飛行部と男子バスケ部兼部してるんだから。しかもどっちもエース候補だし」
「候補でしょ?オレも強いですから」
「分かった、分かった」
「19時前になりましたので、皆様、お座りください」
「あ、始まるみたいだな」
「はい、みたいですね」
机は円形。
オレは風の家系の座席位置に座る。
オレの右隣は闇の家系。その隣は宇宙。さらにその隣は光。
左隣は雷の家系。その隣は土。さらにその隣は植物。
十数人いる次期当主が座席につく。
「本日は全員お集まり頂きありがとうございます。今回も、私、フウジュ・クォールが議長を務めさせていただきます」
学園会長のクォール先輩が前置きを話し出すと、能力管理省の大臣と労働省の大臣が、唯一、会場であるこの部屋につながるフィールの塔の外階段とのドアを閉めた。
「起立」
ザッ。
「気をつけ」
スゥーッ。
クォール先輩が息を吸う。
「ただいまより第1647回|当主の集い《Top’s meeting》の次期当主の部を開会します。礼」
ザッ。
「着席」
ギィー、ザッ。
「今回もよろしくお願いします。では、第一議題、国の今年の方針の承認から―」
Top’s meetingが始まる数時間前のこと。
学生が2時間目の授業の準備をし始めた頃、公園のベンチに、アパートからわざわざ来たのに全く遊ぼうとしない幼稚園児くらいの男の子が腰掛けた。まだあどけないその顔は将来必ずモテる顔立ちで、大きな黒い瞳に寂しさを滲ませている。
彼は天を仰ぎ、目をつぶる。
「追うよ、お前を……。お前の足取りを」
吐息のような微かな声は、宙へ昇り、決意を胸に刻ませる。
彼は、ゆっくりと目を開けて、そこにいない1人の女子のことを思い浮かべた。
「お前は今、どこにいるんだ?美―」
ゴォォォォ―。
4月の新しいことに対する期待が空気に溶けた春特有の強風が、男の子の声をかき消し、男の子の黒髪を乱して、5月の爽やかな風が、彼が最後に彼女を見た日の彼女の赤い袴を揺らしていた。
こんにちは☆
風葉です!
やっと第二章突入です!
第二章と書きましたが、「第二話」と捉えてくださいね。
なんか、この話の終わり、意味深なカンジですが、どうでしょう?この話。
新キャラも出てきて、賑やかに!
まあ、本来はこの話、次の世界へ旅行したところで終わるはずだったのですが、なーぜか話がのびてしまいましたねー。
今回はこの辺で終わります!
次もお楽しみに〜☆




