1.図書館で出会ったヤバいやつ 後編
文字数(空白・改行含まない):3060字
「人が空を飛んでる……⁉︎」
「当たり前だろ、ここは、魔法使いが住んでいる、魔界なんだから」
「へっ……」
「ふん。ついてこい」
空は淡い青色。どうやら、僕の世界と違って「春」らしい。空に向かってそびえる建物は、レンガに、白、ピンク、緑、黄色。
大きな家ではない。
派手な形でもない。
そのような面では、日本にも似ている。
でも、鮮やかだ。
近所付き合いの少なくなった日本の都市じゃない。
近所のみんなが協力していて、活気がある。
でも、みんなは、僕の知ってるみんなじゃない―植物も動物も道具も人も子供も。
植物に話しかける女の人。
平等な立場での子供と大人の会話。
僕の世界よりも微笑ましくて、差別の無さそうな優しい世界。
この世界にはいろんな人がいるからだろうか。
服装は全く僕の世界と変わらないけれど。
でも、金髪の人も、黒髪の人も、青髪の人も、銀髪の人もいる。黒い目の人も、茶の目の人も、青の目の人も、緑の目の人もいる。
「ついてきてる?迷子になってねーよな」
「なってないよ」
何故、僕は6歳の男の子に心配されているのだろう……。
コイツが知り合いに会ったようで、足を止める。
というよりも、用があるのはこの建物?
コイツがサングラスをはずす。
「chbch guuhv kbf. yfycyv hthof hvhbd agbod. 」
コイツがわけが分からない言語を喋っている。
「ychc rxt jcu hcjvsrwgjo. ephcqbkn ezo jviblp. 」
知り合いらしきオレンジの目の色で優しい茶色―ボワ色の髪をポニーテールにした女の人が笑いながらそれに答える。
「igcal gxts anrt?」
女の人が僕のことを指差して、コイツに何かを聞いている。
「お前、これ、食べろ」
と、ソフトキャンディを投げてきた。
え?
女の人が不思議そうな顔をしている。
僕が不思議な顔をしたいんだけどな。
分かったけど。
「食べたけど?」
「それでよし」
女の人がコイツに喋りかけた。
「それで、この子、誰なの?」
聞き取れる‼︎
僕、女の人の言葉が聞き取れる‼︎
「コイツは、ルイ・サトー、です」
コイツが敬語を使っている。
「ルイ、よろしく。私はナミヌ・リアート。ナミって呼んで」
「よろしくお願いします。ナミ、さん」
「で、あなたと陸の関係は?」
陸?誰だ、ソイツ。
『「もしもし。母さん?僕の家、通ってる私立白流中学校から、遠いだろう?しかも、今日から夏休みだからさ。友達の陸の家が中学校から近いらしいから、夏休みから泊まりに行くよ』
陸!
コイツのことか!
「図書―むぐぐっ!」
やめろ!
陸、僕の口をふさぐな!
「俺の母方の従兄弟です」
「そうなの?どこから来たの?」
おいっ!
そろそろ、手……をは……ず……せ……ぇ……、死……ぬ…………。
僕の睨みに気づいて、手をはずす。
「変なこと言うなよ」。目が、そう言っている。
「アリアンテ地方です」
ちょっと待て、リク!そんな所、知らないぞ!
「あら、そんな田舎から」
「ナミさん、失礼ですよ。変わってないですね」
本人の目の前で田舎って言うところ、失礼極まりなくないか?
「ミリハさんはどうですか?帰ってきていませんか?」
「ええ。帰ってきてない。リオルトも帰ってきてないよ」
「そうですか……」
場の空気が重たい。
僕が軽くしないと。
「布団がふっとんだ。なんちゃって」
ああ、ナミさんと陸の視線が痛い。
「お前、学校でモテなかっただろ?」
うん。それが?
「ふーん。やっぱり」
なんだよ、それ。
「ナミさん、部屋を買いたいのですが」
「いいよ。前に貸した部屋がいい?」
前に貸した部屋?
来た時から思っていたけど、やはりコイツ、僕と来る前にもこの世界に来ているらしい。
「お願いします。買う時は600000ヴェイルでよかったですよね」
ヴェイル、は魔法使いの世界のお金の単位でいいのかな?
600000ヴェイル?日本で買ったら、もうちょっと、せめて、あと一桁は多いでしょ。
「そうよ」
「これを」
陸がお金をナミさんに渡した。
「はい、カギ」
「ありがとうございます。ついてこい」
「あー、分かったよ」
「頑張って、少年」
あは。
頑張……り……ま…………す…………。
先行きが心配です……が。
陸はスタスタと階段を上る。
どうやら、部屋は3階らしいぞ。
コンクリート製の階段と違い、廊下にはベロア生地の赤い絨毯が敷かれている。
フワフワとした足の感覚が、陸が部屋のドアの前に立つと、ワクワクとした気分に変わった。
304号室だ!
ガチャ。ギィー。
うわあ。
きれいな部屋だ!
木目調の白っぽいフローリング。
机とテレビらしきものが置いてある。
寝室にはフカフカのベッドが2台、真ん中には仕切り、ドアが2枚、それぞれ部屋の端についている。
そして、左右対称についているドアの奥には個人部屋がある。
うわっ!広い!寝室と同じくらいに!
キッチンもトイレも風呂も綺麗に保たれているこの家は、白とレモン色が基調になっている。
「おいっ!勝手に歩き回ってブツブツ呟くな!不気味だっ!荷物は、右の部屋をお前の部屋にするから、そこに置け。あとでベッドは動かして自分の部屋に置くからな。はあ。俺が買ったって言うのに」
それはそうだ。
というより、6歳の子に家を買ってもらって、6歳の子よりはしゃいで、6歳の子に気味悪がられる僕って……。
はあ。
「ねぇ、訊きたいんだけど、僕、佐藤流射だよ。どうして、ルイ・サトー、ってナミさんに紹介したんだ?」
「うるさいなぁ。お前の特技は直感と勘じゃなかったのかよ?ちょっとは活用しろよ―この世界は日本人の名前じゃ怪しまれる。サトウ・ルイって紹介したら、姓がルイ、名がサトウになるぞ。しかも、この世界に漢字なんて存在しているわけがない。漢字で紹介したら異世界から来たことがバレるだろ」
「で、でも、ナミさん、君のこと陸って言ってたじゃないか」
「陸じゃない、リクだ。リク・アリガって紹介してるんだよ。俺の名前は有賀陸だからな。覚えとけ」
「分かったよ。じゃ、あれは?ソフトキャンディ。なんだったんだ?」
「この世界のものだよ。この世界にいるんだから、当たり前だろ?翻訳機能のあるソフトキャンディだ」
「へえ。あ。600000ヴェイルでこの部屋買っただろう?一桁、足りてないんじゃ」
「はあ。あのさ、お前の頭、何のためにあるんだよ。お前の世界中心で考えんなよ。この世界はこの世界。金の単位と価値も、ち・が・う・ん・だ・よ!」
は、はあ。
ご、ごめんなさい。
はああ。6歳の子に怒られる僕って……。
「1ヴェイルには、10円の価値がある。それだけのことだ。ああ、そうだ。この旅行は、お前の高等部進学試験前に帰ることになっている。旅行しつつ、レポート提出で進学点を取っとけ。で、異世界一自由なこの世界の学園に通ってもらう。レイネス学園というんだが。2週間に一度行けばいい学園だ。一つ言っておくが、決して、ヤクザだらけの学園じゃない。レイネス学園はこの世界一(?)入試が厳しい学園だ。まぁ、お前のレベルなら、入れるだろうよ」
「旅行だろ?学園に入ったら、どこへも行けないじゃないか」
「だーかーらー!あー!うっとうしい!2週間に一度学園内に入れば良いんだよ。通信授業で勉強。分かったか!」
「分かった、分かった」
「……」
…………。
え?
「ハーヤーク、いけ!」
は?
「学園だって!早くいけ!30分後に入試、始まるぞ?」
はあー⁉︎
リクに背中を押されて、部屋を追い出されてしまった。
……はあ。
ん?
どこ通って行けばいいんだよ。
おい!
リク〜!
こんにちは。
風葉 千尋です。
楽しんで頂けたでしょうか?
投稿するのは初めてなので、なかなか慣れていません!
が、しかし!
楽しい話が書けたのではないか、という、自己満足は、あります。
次話投稿も頑張らせていただきます!
ここからは、ネタバレ含むかもですー。
異世界転移の話を書こうと思ったのは、友達の影響です。
まあ、私自体もファンタジーが好きなんですけど。
友達に、楽しんで読んでもらえたらなー、と、思ってます。
もちろん、読んで下さる皆様にも!
自分が書ける、読んでもらえる、この機会、シッッッカリ書きます!
続きの話も、どうか、どうか、読んで下さい!
「あのさ、すごく、うるさいよ。」
あ、リク。
「なんで俺のこと呼び捨てにしてんのさ。」
私が、リクを作ったんだもん。悪い?
そっちこそ、ナミさんに対して敬語で利口なのに、なんで私に対しては全く敬意がないわけ?
「お前には敬意を持つ必要がないよね。俺、必要性のないことはしない主義だから。」
ムッカー!
「てかさ、お前の部屋、汚くね?」
ムッカー!
っていうか、どうやって、入ってきたのよ!
変態!
「6歳相手にそうやってムキになるところ、馬鹿っぽいね。ルイより、馬鹿なんじゃないの?」
ムッカー!
6歳をボコボコにするところは見せられないのでこれで失礼します!
次回も、よろしくお願いします!




