7.似あわねぇ僕の歓迎会 前編
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「似あわねぇな」
おかえりもなしに僕をけなせるって、逆にすごいな。
コイツ、大物だ。
僕が小さいだけなのかもしれないけど……。
ガチャ。
「ただいまー」
「……ルイか?」
リク、どこにいるんだよ?
あ、部屋の中にいたのか。
じぃーっ。
「な、なんだよ?」
「いや。ルイ、お前、その制服似合わねぇな」
「なんだよ。似あわねぇとか言うなよ。確かに僕にはセンスないけどさ……」
「うん。お前、ダサいもんな」
「ダサいって言うなよ!ひどいな」
「お前がセンスないって言ったんだろう?」
「そうだっけ?」
「ああ。『なんだよ。似あわねぇとか言うなよ。確かに僕にはセンスないけどさ……』ってな」
さすが、リク。
声真似がすごく上手い。
「……確か、に、言っ、た、か、な?」
「言ったって。お前、自分の言動に責任持てよな」
「ごめんって」
「それにしても、本当、お前、制服似あわねぇな」
「そうかな?」
「ああ!分かってねえのか?」
「似合ってないのかなー、とは思ってたけど」
「分かってるじゃん。お前に、白地に黒のチェックのズボンとか、似あわねぇから。ヤバイって。鮮やかな群青色のブレザー?だめだ。お前には似あわなさすぎる」
「ひどいな」
「そうか?正当な評価だろ。唯一、お前に似合うのは、その、青のネクタイぐらいだ」
リクって毒舌なんだよな。
本当にコイツ、6歳か?
「俺が、6歳?」
もしかして、声が口から出てた?
「俺は5歳だ」
ふーん。5歳か。
って、5歳ぃ⁉︎
「本当か、リク⁉︎」
「俺がウソをついてなんになる?」
「確かに……」
「話を戻すぞ。その制服、レネアさんが着ているところを想像してみろ」
すらっとした足に、少し丈が短くなり細い足首が見えるズボンがフィットしている。
第1ボタンまで閉じ、小さすぎず、大きすぎないティンプルができた緑のネクタイを締めているレネアさんの姿はキリッとした印象。
ブレザーにはゴミ一つ付いていなかった。
「かっこよかったな」
「だろ?じゃあ副会長のことを想像してみろ」
レネアさんよりも長い足に、ゆったりとした印象を与えるズボンの履き方。細く、そして力強い足首が露出し、より一層、カルさんのオーラを艶やかにみせる。
第1ボタンを外し、ネクタイを少し緩めたカルさんは、気怠げだけど、それがまた妖艶さを生み出す。
ブレザーのボタンは外していたけど、それがよく似合ってる。
「かっこいいな」
「だろ?他の男子生徒会メンバーは?」
ツェルドくんは、ズボンが少し長くてすそがクシャッとなっていた。でも、それを指摘すると、すそを折り上げていた。
第1ボタンは開け、ちょうどいい大きさのティンプルができた青のネクタイをしめていた。
パールホワイトの学園指定のセーターは輝いて見え、毛玉一つなく、触らずとも滑らかなことが分かった。
ゴミなんか、ついているわけがないだろう?って感じだった。
「清潔感があったね」
「だろう?他のやつも、お前ほど似合ってない奴はいなかっただろ?お前って、なんか、すげーよな」
「嬉しくない」
「フッ。まあ、お前はしょうがないな。似あわねぇ顔してるもんな」
「顔⁉︎」
「ああ。顔」
「はあ……」
こんな奴と旅行なんて、異世界に旅行じゃなかったら行くわけなかったな。
「そうだ。今日はお前の歓迎会だってさ。ナミさんが腕によりをかけて、ご馳走作ってくれるって」
「本当?」
「ああ。会場はアパートの共有スペース。食堂みたいなとこだよ」
「って言われてもな」
「分んねぇか?」
「うん」
「じゃあ、今から連れてってやる」
「うん」
…………。
「何してんだよ。ボーッとしてないで早くついてこい!」
「あ、ごめん」
バタン。
スタスタスタ。
目の前で、5歳の男の子が、階段を降りている。
この光景を世の女子は可愛いと言うのかな。
僕は、全く思えないんだけど。
あ、そういやリクに聞いてなかったことがあった。
「リク、君、誕生日いつ?」
「はあ?なんだよ、突然」
「いや、気になってさ」
「10月23日。そういや、誕生日に―」
「誕生日に?」
「いや、なんでもない」
……ふーん。気になるけど。
2階を過ぎて1階に降りた。
階段を降りたところは玄関。外になる。
管理棟とは別の、本館のドアを開ける。
ここも客室だね。
スタスタスタ。
まだ?
あ、道が途切れて大きな部屋にでた。
「ここ?共有スペースって」
「確かにここは共有スペースだが。ここはリビング的な場所だ。食堂はこっちのドアの向こう」
あ、ドアがあったんだ。
ガチャ。
「おおーっ!」
2台の長机と背もたれのない椅子が綺麗に並べられている。
しっかり掃除しているらしいね。
というか食堂、広い!
壁からの圧迫感が全くない。
すごい!
「……ここがかいじょお。道にまおうなよ」
は?
ここが解除お、道に魔王なよ?
コイツ、何を言ってんだ?聞き取れないんだけど。
…………棒付きキャンディ食べてるじゃん。
あ、机の上のバスケットの中に山盛りになってる。
「リク、なんて言ったんだよ?」
「…………ジャリジャリ」
噛み砕きまくってる。
「……ここが会場。道に迷うなよ。って言ったんだって」
「分かるわけないだろう‼︎」
「そうか?」
コイツ、何も思ってない。
反省しろ!反省を!
「どうして?する必要、ないだろ」
はあぁ⁉︎
「じゃ、帰るぞ」
あ、ちょっと待てって!
っていっても待ってくれないのがリクだった。
ささっと、キャンディ、選ぼう。
……オレンジにしておこう。
ガヤガヤガヤ……。
主役の僕がいないのに、もう、食堂は賑やか。
時折、ナミさんの大声が聞こえてくるんだけど、何があったんだろう。
ていうか、僕がいるのは階段。
階段にまで聞こえてくるって本当に何があった?
リクは食前の散歩。
いい景色を見て疲れた後のご飯はとっても美味しいんだそう。
確かに、この周りはカラフルな建物やドロップみたいな石が敷き詰められた道があって、美しい風景。
心も安らいで、運動もできる。
これこそ一石二鳥!
まあ、僕は早くご飯が食べたくてしょうがないんだけど。
学園から帰ってきて、食べ忘れていたご飯は、そこまで美味しくなかった。
母さんの存在ってすごかったんだ、ってようやく今気づいた。
料理などの家事と子育て、OLとしても働いてて。
もう、すごすぎる。
僕なんて、料理すらも上手くできないのに。
僕は、だからこそ自分達の面倒を見てくれる人に感謝して、面倒を見てもらうんだ。
僕達はまだ子供。
学ばなきゃいけないことだってたくさん。
それには学ぶために、面倒を見てもらわないといけない。
子供は1人じゃ生きていけないから。
ナミさんは僕の面倒を見てくれる人の1人。
感謝して、僕達のために動いた結晶のご飯をいただくんだ!
僕は早くご飯を食べたい。
感謝するためにも。幸せになるためにも。
ジュワワワー。
よだれが口の中に溢れてる。
「こんにちはー」
「お、来たね、主役が」
おじさんやポニーテールの子や20代くらいの人もたくさん。
「食堂はまだ開けられてないからね」
柑子色というオレンジ色みたいな色のポニーテールの子だ。よく通る声だな。
この子も髪と目が同じ色。
ていうか、今ここにいるのは何人?
独身の人ばっかりいるけど。
11人かな?
来てないだけかもしれないけど。
ガチャ。
「いまから、食堂、開けまーす」
『おおー!』
「今日も、私の席以外、自由席だからねー」
『はーい』
ナミさんの席は、キッチンに1番近い席。
椅子の数は13席。
「ちょっと、放浪者さんが来てないからね。1席ないけど」
「放浪者さん?」
「このアパートの住人に、旅人がいるの。行く場所を決めずに、フラーと行っては、フラフラーと帰ってくるから、皆、放浪者さんって呼んでるんだけどね」
ポニーテールの子の説明がわかりやすい。
リクと大違いだよ、ホント。
「私はフヌ。フヌ・アラーク。中3よ。あなたは?」
「ルイ・サトーです。中2です」
「よろしくね、ルイくん!」
「こちらこそよろしくお願いします!」
「ここに座ればどう?」
フヌさんの左隣。
年が近いから楽かな。
でも、僕の左隣が空いてるけど……。
「こんにちはー」
「おー、リク!」
「フヌさん!お久しぶりです!」
「今日は、リクの復帰歓迎会でもあるから、みんなと話していきなよ?」
「もちろんです!」
ストン。
リクが僕の左隣に腰掛けた。
「そこ、リクなの⁉︎」
「当たり前だろ?」
何が⁉︎
「あちゃー。舐められてるね、ルイくん」
「ですね」
みんな席についてる?
あれ?2席空いてる。
1席はナミさん。あとは……。
あ!レネアさんがいない!
「レネア!料理、運んで!」
「……はいはい」
ガチャ。
「唐揚げと鯛の煮物です」
レネアさんが両手に大皿を持って、机の真ん中あたりで流れるような動作で置いた。
「サラダとほうれん草のおひたしよ!」
ナミさんも、レネアさんより小さいお皿を持って登場。
「はいどうぞー」
真ん中あたりにいろいろな料理が並ぶ。
「いつもと同じように、ご飯とお味噌汁は前の机に置いておくから、自分でよそってね。おかわり自由よ。では、いただきまーす」
『いただきまーす』
「ルイ!唐揚げいるか?」
おじさん!お願いします!
「はい!」
「俺はマホノ・アルトだ。はい、入れたぞ。よろしくな」
「よろしくお願いします!」
「ノークト・ケルタヴだ。ルイの先輩だ」
先輩?30代くらいだと思うけど。
「レイネス学園は俺の母校だ」
へー。あの学園、行ってる人って多いんだな。
「クレクト・スレンよ。よろしくねー」
うわあ。綺麗な人!
20代、30代ぐらいかな?
黄色と茶色の中間ぐらいの色、近いのはカフェ・オー・レー色のウェーブのかかった髪!
THE・美女!
「クレちゃん、美女だけど、大酒飲みだもんなあ」
「別にいいでしょ!好きなんだから」
「はっはっは」
「もう。ナミちゃん、ビールお願い!」
「はーい」
「ルイ、この中で一番、おじさんなのは、クレちゃんだから。覚えときな」
ビール!、とナミさんに声をかけながら、アルトさんが話した。
なるほど、スレンさん、おじさんなのか。
「今日はたくさん食べろ!」
「はい!」
「…………皆、俺の事忘れてね?」
あ。ごめん。リクの事、忘れてた。




