4.生徒会VS学園会〜サラッと振られ〜
文字数(空白・改行含まない):4306字
メガネからのぞく鋭い眼は、リーダーとして仲間を守る意志が垣間見える。その目が向けられているフードを被った先頭の男は地を蹴り進み、天使のような翼を持つメガネの男の仲間は宙を羽ばたき進んだ。
学園会と呼ばれるグループが王子―ツェルド・ジュンヴェイテくんを生徒会と関わらせるな、と王の命を受けて戦いを挑んできたけど……。
どうやら、レネアさんは、ツェルドくんを守るために学園会と戦うらしい。
僕も賛成だけど。
でも1つ気になっている。
「ねぇ、ツェルドくん。学園会って何?」
ツェルドくんが「俺は天才だ!」って叫ぶナルシストを見るような目で僕を見ている。
…………誤解を招くので言っておくけど、僕は自分のことを「天才だ」なんて思ったこと、ないからね⁉︎特技なんて特にないし。あー、悲し。言っていて虚しい。
「学園会は学園全体を統治する団体。初等部代表、中等部代表、高等部代表、学園会長が集まって学園全体の方針を決めてる。王に忠実な会だね。簡単に言うと。今年の中等部代表は、ノルテー・ゼナイト。で、大事なのは毎年、生徒会と学園会は対立しているってところかな」
「何で対決する?」
「そうですねぇ。ここはバトル部の前。バトル対決でもしますか?」
「分かったそうしよう。だが、バトルフィールドでやる。いいか?」
どんどん話が決まっていく。さすが、リーダーたち。
「いいですよ。でないと、生徒に迷惑をかけますからねぇ」
「ルールは、どうする?」
「こちらに任せていただけますかぁ?」
「…………いいだろう。フェアなルールを決めろ。フェアなルールを」
「言われなくても分かっていますよ。あなたの言いそうなことぐらい」
「カル・エヘント。この場にいる者に翼を与えて下さい」
言葉こそ丁寧だけど有無を言わせない感じ。
息もうまく吸えない。
「何で、お前らなんかに」
「エヘント!」
「フフフ」
ゼナイト代表はさわやかに笑う。…………白く長い前髪が覆う目元が、見えていたなら。
「エヘント、逆らうな」
―身を滅ぼすぞ?
レネアさんはそう言っているよう。
「分かったよ」
カルさんは少し指をふる。
なんか、小さく呪文を唱えているような気が。
バサッ。
一瞬で皆に翼が生えた。
ゼナイト代表が顎をクイっとしゃくると、7人いる学園会員が一斉に飛び出した。
「ルールは向こうで説明させていただきます。では」
「行くぞ。―エヘント」
「何、こいつら置いていくんですか?」
「バカか。飛び方を聞こうとしたんだ。早とちりするな。焦っているのか?」
「い、いえ」
「何、焦ってんのさ」
え、ちょっと。先輩相手に……。
「お前、オレは先輩だぞ?」
「そっちこそ、ぼくは王子だよ?それこそ王子に対する口の利き方じゃないでしょ」
「…………すみません」
「ぼくのことで焦る必要はないよ。どうせ、学園会に入るなんてことはないし」
「いや、君を守ろうとしているのは、そういう理由じゃない」
レネアさんが口を挟んだ。
「あっそ」
そういう理由じゃない、とは?
そういう理由じゃない、でツェルドくん、ニヤッと笑ったし。
「は?」
カルさんが思わず声を漏らした。
「今年の生徒会にはジュンヴェイテのような、人脈があり、なおかつ、このようなことを考えている者が必要だ。だから、ジュンヴェイテを守る。それだけだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「へえー。オレはツェルドを守るつもりだけど?」
「俺も守るが……」
「いいなー」
へっ?ティル⁉︎
「あ、ごめんなさい。みんなで仲間を護り合うのってなんか、いいなーって。あ、あ、あ、深く考えないでください」
ティル……。
「ティル、大丈夫。僕がティルを守るよ」
「えっ?」
「何それ。ぼくの前で告白したり、イチャついたり、やめてくれない?ぼくの目の前でやる必要ないじゃん。ぼく、非リアなんだけど」
うわあーーーー!
「ごめん、ごめん!ティル、本当、ごめん!」
「大丈夫。何とも思ってないから」
爽やかな微笑みを浮かべるティル。
……ちょーっと待って!
「フラれたね、ルイ」
「?……あ。ごめんね。そういうつもりじゃなくて、私はただ、告白だ、とは思わなかったよ、って言いたくて」
「へーえぇ。2人とも気にしいなんだ」
「早く行くぞ。人を待たせている自覚はないのか?」
「「「す、すみません!」」」
「飛べ、って意識したら飛べる。早くしろ」
うーんと……。
わあっ、浮いたっ!
でもってスィーッと進む。
…………。
置いていかれたっ!
「ルイ〜。進むことを意識したら、もっと早く進むから!」
「わ、分かりましたー」
おっ!進む、進む。
「よく我慢したね、会長」
「何をだ?」
「いや、怒鳴らずによく待てたなー、って」
「ディスってるのか?」
ギロっと黒縁眼鏡越しに覗く目―詳しくいうと殺気怒気光線がカルさんをとらえる。
いじられるのが嫌いなんだね。レネアさん。
「会長、ワミトル・エーナはいいんですか?連れてこなくても」
「言わなくてもわかるだろう?連れてきたらどうなるか」
「そうですね。足手まとい確定ですよねー。ワミは」
エーナ……さん、とカルさんは仲良さそう。
「その、どうしてエーナさんを連れてきたら足手まといになるんですか?」
「いや、ドジすぎるんだ、エーナは。走れば、こける。歩いていてもこける。ジャンプすれば足をひねる。攻撃はコントロールできず味方に当たる。防御には隙ができる。いても、残念な結果になるし、エーナにもデメリットだらけだ。辛いだけ。ていうか、エーナはどこにいるか分からないしな」
「そうなんですね……」
「まあ、俺たちだけで頑張るぞ」
「フィールドだよ。気を引き締めて」
着陸。
着地、初めてにしては上手いかも。
「翼、解除」
「ルールは決めましたよ。一度しか言いませんよ?」
「その前に自己紹介してくれ。相手のことが分からないと攻撃のしようがないだろう?」
「ええ。いいですよ。どちらからしますか?」
「リーダーがお手本見せたらいいんじゃねーの?」
カルさんが提案する。
「なら、俺から。俺は、レネア・リアート。土属性の氷分野、凍結能力。魔力は、65。以上だ」
「なるほどぉ。そのように自己紹介すれば良いのですね。私はノルテー・ゼナイト。魔力は、72。無属性。魔術分野は破壊。能力は粉砕。ですかね。フフフ。今まで言ってませんでしたが」
属性がない?
どういうこと?
しかも、破壊?粉砕?
どういうこと?
分からなーい!
「無属性って何?」
ティルがこちらを見ずに、学園会―学園代表の方を見ながら教えてくれた。
「無属性はどの家系にも稀に生まれる属性のない子の属性。いわば、特化したものがない感じ。無属性の子は必ず、創造か、破壊の魔術分野になるの。属性がない分、魔力は普通の人より少し高いの。家系魔術は1つも使えない」
「へええ」
「なるほどね。髪が白なのが気になってたのが気になってたけど、そういうことか。てか、あの言い方何さ。フフフって不気味に言ったら屈するとでも思ってんの?あの、クソ親父の手先」
「手先……」
「そうだよ。クソ親父の言いなりになってる、手先。ずっと同じことしか出来ないってバカだね。あの手先」
「ちょ、声、大きいって」
「いいじゃん。聞こえてても。事実は事実だからね」
あーあ、代表が目を細めて笑ってるよ。怒らせてるよ。
「そうですねぇ。事実ですかねぇ。あー、早くしてくれます?自己紹介すっ飛ばしますか?」
「…………エヘント。自己紹介しろ」
「はーい。オレはカル・エヘント。風属性、風分野、飛行能力。魔力は、68。次は誰?」
「生徒会メンバーから言っていくが、いいか?」
「ええ。好きにしてください」
「ルイ、言え」
え、僕?
「あ、はい。僕は、ル、ルイです」
「フルネームで言ってください!流れから分かりませんか?」
「す、すみません!ぼ、僕はルイ・サトーです!つ、土属性の闇分野、透視能力です。魔力は、じゅ……」
「魔力、あげたでしょ」
「20です!」
驚いている顔は、いち、に、さん…………10!
どうやら、
「あれ?10じゃなかったっけ?」という顔と
「20?中2だよな?」という顔に分けられるらしい。
「ルイ……?」
レネアさんが聞きたそうだけど…………でも、せっかくバリアを張って魔力を分けてくれたのにみんなに言ってどうする!
「後で……後で詳しく説明します」
「ああ、頼む。次、ジョーノーヴ、紹介を」
「はい。クティルヴィア・ジョーノーヴです。魅力属性、水分野、放水砲能力です。魔力は、56」
なるほど、ティルの魔力が56なら、中2の魔力は50〜60くらいなんじゃないかな?
うん、確かに僕の魔力は低すぎるな。
「王子は言わなくてもいいです。皆、知っていることです。では、学園会中等部メンバー紹介に移りますね」
「ケリア・トリエスです。闇属性、植物分野、つる能力。魔力は65」
黒髪の美女が紹介をする。フードを被っていても漂う、この美女オーラ。すごい!
流れ的に、トリエス先輩は学園会中等部副代表なんだと思うけど。多分。
「セネン・フォロカ。雷属性、風分野、気流創生能力。魔力は68」
書記さんかな?
フードは被ってないけど、ローブは学園会メンバーの中でも1番しっかり着ている。
ショートカットの黄色の髪が似合っている。
「ゼイ・ワザフだ。水属性、動作分野、念力能力だ。魔力は59」
着崩した制服とローブがキマっているこの男の子は、ゼイ・ワザフくんと言うらしい。
髪は透明感のある水色と青色のグラデーション。日に当たってそう見えるだけかもしれないけれど。
でも、すっごく綺麗。ああ、海の色に似てるんだ。浅瀬の、緑がかった透明な水色。深瀬の、群青色にも見える青。
見惚れる。
…………ただ、視線がキツイ。どうして?
「ラナフ・アレイア。水属性、変化分野、変身能力。魔力は57」
ワザフ君よりだーいぶ、おっとりした男子。
んー、影が薄いな。僕以上かも。
髪の色は消え入りそうな水色。こっちが心配になる。
目は、上の部分は青。下の部分にいくにつれて黄色に変わる。
「うーん、ルールをまだ説明していませんでしたが、参加人数は、ここにいる生徒会メンバー+王子の人数に合わせていますので。どうしましょう。ワザフをバトルから抜けさせましょうか」
「どうしてですか!」
「戦力、および、能力のバランスを考えて下したまでです。逆らわないで下さい」
ワザフくんは唇を噛んだ。
「我々は命令があれば従う会に所属しています。学園をこの国にふさわしい高レベルなものにするための会に。そのためには手段を選ばない。なら、あなたを外す理由、お分かりになりますよね?あなたの都合で、手段を変えればどうなるでしょうか。あなたも、もちろん強い。けれども、このメンバーで入れるべき人ではない」
代表は、一呼吸置いた。
「代わりはあなたです」




