3.生徒会メンバーは美人さんと王子様(?)〜バトル部〜
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「次はどの部室ですか?会長」
「次か?バトル部だな」
僕の少し前を歩くカルさんが振り向いた。
「バトル部か……。ルイ、入った瞬間に飛んでくる攻撃に気を付けろよ?」
それ、すごく怖くないですか……?
しかも、すごく危ないし。
「バトル部は魔法を繰り出しあって先にギブアップした方が負け、というバトルを行う部活だ。部室は、部員によって壁やドアにバリアが張ってある」
レネアさんが後ろを振り返らず、僕たちに説明する。
1番前を1人で歩くレネアさんは、「リーダー」って感じだなぁ。
「ここだな」
「ああ」
「開けるぞ?会長」
「よろしく頼む。ルイ、下がっておけ」
ギイーッ……。
「右に避けろ!レネアは左!」
え?カルさん?
ビュン‼︎
うわっっっっ!
「ありがとう、エヘント。君の動体視力はずば抜けているな」
「ありがとう、会長」
「Stop!生徒会の巡回だ!生徒会に挨拶しなさい!」
黄色の目の女の人が、紫色にも見える優しい青― 青金色のロングヘアを揺らして指示を出している。
Stop!って発音よく聞こえたけど、この世界での英語的な言語なのかな?
『こんにちは!』
「「「こんにちは」」」
「テルーシェ、こちらはルイだ。編入組の第2学年。自己紹介を頼む」
「OK。私はミュリテーナ・テルーシェ。属性は水で魔術分野は雷。魔術能力は感電だ。よろしく」
男っぽい先輩だな。って失礼かな?
「よ、よろしくお願いします」
テルーシェさんは部室の隅を指差して、レネアさんを見る。
「そこにバリアを張るから、中に入って見学してくれ」
「ああ、分かった」
「ジュンヴェイテ、結界を」
ちょっとムッとした顔で、ジュンヴェイテ、と呼ばれた男の子はサラサラの瑠璃色の髪を揺らして部屋の隅に近づいた。
綺麗な髪。瑠璃色の髪の毛に数筋、金色が入っている。
でも何か、気になるんだよね。少しの違和感。なんだろう?
「分かりました、部長。あと、ジュンヴェイテって呼ばないでくださいね?」
ヒュン。
空気が押されたような音がした。
「結界、張りましたよ?」
「ありがとう」
「生徒会、バリアの中に入って」
テルーシェさんがサラッと言う。
「ああ」
ジュンヴェイテくんも結界の中に入ってきた。
どうしてかな?
「どうして、結界の中に?」
「悪いのかよ?結界の中にいようがいまいが構わないはずだけど?」
「いや、悪くはないけどさ」
「なら、何なのさ?」
「バトル部員なら戦うのかなぁって思って」
「ぼくは他の人より丁寧に扱われているだけ。逆に、なんでバトル部員なら戦わないといけないのさ。皆、敬意を持ってその人しか出来ないことを称え合ってるんだから、別にいいでしょ?」
「えっと……」
しどろもどろって言葉が身にしみるよ。
……うーん。何かが気になる。違和感があるような?
男子なのに三つ編みのところがあるから?
いや、別にそれだけでは気にならない。
「あんた、ぼくを贔屓しないんだね」
「え?贔屓?」
「もしかして、あんた、世間知らず?」
「かも、です。はい」
「ふーん。ジュンヴェイテって名前聞いたことない?この国の王の名前なんだけど」
「ごめん。わかんないや」
「謝る必要なんかないよ。あんなクソ親父のためにさ」
ということは、ジュンヴェイテくんは王の息子?
クソ親父って呼んでたけど。
「それよりあんた、何歳なのさ。ぼくに質問するだけして自分のことを話さないのはおかしいよね」
「14だけど」
「学年は?」
「第二学年」
「ふーん。編入組か。ぼくと学年一緒じゃん。名前は?ルイ・何?」
どうして、ルイって名前、知ってるんだろう。
「ルイだって、どうして分かったの?」
「逆にわからないの?会長が部長にルイって紹介してたでしよ」
「そうだったっけ?」
ジュンヴェイテくんはわざとらしくため息をついた。
「で、名前は何なのさ」
「ルイ・サトーだよ」
「ふーん。珍しい名前だね。ぼくは、ツェルド・ジュンヴェイテ。ジュンヴェイテって呼ばないでよね。クソ親父と一緒にしないでよ?」
「う、うん」
「分かってんの?ツェルドって呼んでよね。魔術分野とかは何なの?ぼくの属性は宇宙だけど。王家だけの属性だからね。宇宙は、世界に眠る力を解放することができる、って言われているんだよね。家系魔術には、魔力を分ける術ぐらいしか無いけど。ぼくの魔力は85だよ。魔術分野は清光。能力はバリア」
「へーっ、魔力85ってすごいね」
「王家だからね。でルイはどうなのさ」
「あ、えーと、属性は土?」
「何で疑問形なのさ」
「あ、ごめん。属性は土で魔術分野は闇。魔術能力は透視だよ」
「ふーん。闇⁉︎土かと思った。魔力は?」
「魔力?えー、聞くの?」
だって、10、だし。
「さっきから聞くって言ってんじゃん」
「じゃあ、10、だけど」
「10。ふーん。なるほどね。言いたくなかったのはそれでか」
ツェルドくんに見つめられると不思議な気分になるな。
心の中を見透かされているような……。
不思議な圧がある。
ツェルドくんは手を空中で静止させた。
何するのかな?
「バリア」
ささやいたその瞬間!
空気を押しのけるような音がしてバリアができた。
バリア?
どうして、わざわざ張ったのかな?
バリア、僕たち2人の周りだけ張っても意味はないような……?
「これで話を聞かれる心配はないでしょ?」
「は、話?」
「そ。この世界は弱肉強食。魔力を分けてやる、って言ってんのさ。10、だとこの世界、生きにくいでしょ?」
別に生きにくくはなかったけど。人間界では魔力なんてあるわけないって皆、思ってるし。
「あんまり、聞かれるのは良くない話だと思ったからね。ぼくの手に手を乗せて」
「うん」
手に手を乗せた。
あったかい。
ツェルドくんの手が、振動を吸収してくれている。
「エンテート・ジュンヴェルト!」
うわっ、眩しい!
……って、何も起きてないような?
「何も起きてなくない?」
「は?何言ってんの?さっさと、上手くいったか、手、握りしめて確認してよ」
握りしめたら確認できるの?
よくわかんないんだけど。
「ツァダーラ・インテートート」
『ルイ、魔力10増加。魔力20。全快。ツェルド、変化なし。魔力85。全快』
へっ⁉︎
声?
「やったことないの?魔力確認術。拳を握って『ツァダーラ・インテートート』って言ったら相手と自分の魔力を確認が出来る呪文系魔術なんだけど。知らない?」
「うん」
「不思議だね。簡単なのに。『ツァド・イント』が音声呪文。それに、いろいろ付け加えただけ。そして、この術は相手のステータスを調べる魔術の一つなわけ。相手のことが分かると攻撃しやすいしね」
「へぇー」
この世界の魔術は呪文が要らないのかと思ってたけど違うんだ。
で、相手を知るためなのか。
なるほど、ツェルドくんが魔法使いだから僕が僕の世界の人でも出来たのか。
「ありがとう。魔力、分けてくれて」
すると、ツェルドくんは視線を逸らした。
「別に。ぼくの魔力を分けたわけじゃないし」
照れているのかな?
というより、さっきから気になっているのは何だ?
あっ!
「この三つ編み、ちょっとくしゃっ、となってるよ!」
「ん?本当?ルイ、三つ編み、出来る?」
「出来るけど。母さんが教えてくれたから」
「なら、やってよ」
「いいよ」
ええっと……。
まず、三束にして……。
「何でぼくが王を毛嫌いしてるか、気にならないの?」
「別に。話したくないなら聞かないよ」
「そう。やっぱり、いいやつだね、あんた」
「ありがとう」
いい人、って言われるのは素直に嬉しい。
存在を認められているみたいで。
「ぼくが親父を毛嫌いしてるのは、親父の政策がおかしいから。火の力を許さないところ、人を操ってまで全てを思い通りに動かそうとするところ、自分の利益・名誉を大切にするところ、嘘つきなところ、他にもたくさん」
ツェルドくん……。
「だからぼくは、王になりたいのさ。クソ親父の跡を継ぐのは気に入らないけど、王にならないと政策を変えられないでしょ。何が何でも、王になってやる。どんな目に会おうともね。ルイ、協力してよ。他に骨のあるやつがいないからさ」
すごい……。
僕には明確な将来の夢なんてない。
時には、それのせいで不思議な焦燥感に襲われる。
「分かった。僕が、協力出来るところまで、協力する」
「ありがとう」
ニコッ、と笑顔を浮かべるツェルドくん。
笑顔のあどけなさと、大人な決意が、上手い具合に混ざり合ってかっこよく見えた。
「出来たよ、三つ編み。さあ僕は、ツェルドくんの部活を見ようかな。教えてよ、自慢の部活なんでしょ?」
「うん。―バリア、解除」
「あと、僕は君のこと、贔屓しないから。丁寧にも扱わない。ツェルドくんは僕の仲間だからね。で、どんなことしてるの?」
「バトルだって。分かんないの?」
「あ、そうだった」
「はあ。……攻撃側、防御側は、決まってない。コート内で魔術を出し合って行動不可にさせるのさ。で、コート内に残っているのが1人になると勝ち。それを繰り返して技術を磨く部活なのさ。分かった?」
「うん。それにしても飛行部長、華麗だね。綺麗なまま、勝ち上がっていってる」
「そりゃそうだって。部長、応用力がすごいから。魔術能力、部長は元々違う能力だったらしいけど」
「そうなの⁉︎」
「うん。詳しくは知らないけどね。感電に変えたってことだね」
「ルイ、もう、行くぞ」
「はい!レネアさん」
「じゃあな、テルーシェ」
「バイバイ、生徒会の皆さん」




