「決まらぬ王妃」
翌朝ロイズが朝の会議の席につくと案の定王妃の話が出る。
「そら」と言わんばかりに大臣たちの後ろに座っていたロイズは口の端をゆがめてやった。
「結婚のことはあとでもいいだろう」
兄が穏やかな口調で言うと大臣たちは「いえ」首を振るのだった。
「今はやっと国が安定し始めたのです。ここで王妃様の席を空けておくと無用な争いになりかねません」
ロイズは名前も覚えていないようなオッサンがしゃしゃり出ているのに少々イラついた。確かに国王の王位継承までは国はひどく荒れていた。西にはもともと難民の系譜でありながら軍事力を備えた民族が住みつき、東は緊張関係にある国が隣接しており不安を抱えていた。
しかし兄が王位に着くと彼の行動は早かった。西の民族に交渉し、隣国を攻めさせたのである。条件をまもり援助を行い滅ぼした隣国の新たに加わった領地を分割した。
今ではあらたな東隣の国ともうまくやっている。おかげで貿易も上手くいき確かに国は安定期になりつつある。大臣たちを信用しているわけではないが確かにこの件に関しては言うことももっともだとは思う。
「私は一層のことシャリナ様を王妃様にと思いますが――」
「黙りなさい」
ぴしゃりと兄は言った。人の多い会議室がまるで誰もいない部屋のように静まり返る。
「あなたたちの言うとおりだ。王妃は国事にとって重要。――ならば貴様らに王妃のことを決める権利はないはずだ。…もっとも、しゃしゃり出たいならば別だが?」
家臣たちは黙りこんだ。内心笑っているロイズがそこにいた。
しかし、次の言葉にロイズ自身も驚かされた。
「王妃は、私の中で決めいている。しかし現時点であなたたちに言うつもりはない」
バロウズ伯爵からの迎えが来たのはそのころだった。マリアは何一つ実家から持ち出すことはなく、バロウズ家の用意した衣服や宝石を身につけさせられた。
マリアが小さい頃から侍女として側にいたサラは涙を浮かべ、
「お嬢様の未来が今日の日のように明るいものでありますように」
と言ってくれた。声を発すれば泣いてしまいそうだったので、黙って彼女は頷いた。
伯爵の馬車は見たことない程豪華だった。
都の最先端の流行のファッションに見を包んだ彼女は馬車に乗せられる。馬車が走りだし実家が遠のいていくと泣きたくなった。しかし彼女は泣かなかった。自分に降りかかる運命を受け入れてやろうと思った。誰の養子になろうと嫁になろうと私は私だから自分の人生を生きようと、彼女は覚悟を決めたのである。
次回掲載遅れそうですので早めに投稿しておきました。




