「リオ」
その夜の晩餐会の宝石は自分で選んだ。大きなアクアマリンがはめられた宝石。それは昔、陛下の母がもっているアクアマリンを見て自分が綺麗だといったのを陛下がおぼえてくださってて、自分が入内した際にいただいたものだった。
「もうそろそろお時間ですわ。シャリナ様」
ぼんやりと思い出にふけっているシャリナにエリーが声をかける。
「ええ」
馬車で王のいる本邸に向かうともうひとつの馬車が向かってくるのが見えた。王室の家紋が付いている馬車である。これに乗れるのは王族だけだ。本邸前に着くと馬車から降り、向こうからも降りてくる。
「こんばんは。お久しぶりです」
青を基調とした服はなんともいえない品があり、夕日に照らされた艶のある髪と張りのある肌は若い誇りにあふれている。切れ長の涼しげな目が印象的な顔立ちの男である。
「ロイズ様」
シャリナに気付くとロイズは高圧的な目でシャリナを見た。そして見据えたまま「ああ、こんばんは」と返す。シャリナもロイズが自分を快くないと思っていることはわかっている。ロイズは非常にプライドが高いため嫌味を言ったりといったみっともないことはしないが、冷たい目でシャリナを見るのだった。
ロイズは挨拶もそこそこに馬車を振り返ると中に手を伸ばした。手袋をした手が中から出てきてロイズの手をとると中からかわいらしい少女が出てきた。
「こんばんは。シャリナ様」
この女は陛下の弟であるロイズの元婚約者にして現在は寵姫に落ちぶれたロリアスである。
「こんばんは。ロリアス様」
仲睦まじい様子の2人がシャリナには羨ましかった。
「お嬢様方、レディーファーストだ。先に入るといい」
ロイズは優しい声で言った。先ほどの目が嘘だったように。
「ありがとうございます」
一礼して先に本邸に入ると凛とした雰囲気の青年がいて3人を出迎えた。
この男はゼム。小姓として小さいころから陛下のそばにいる男で、現在は側近を勤めている。
「皆さまこんばんは。ようこそお越しくださいました」
凛とした声。
「陛下はただいまご公務から戻られたところですので間もなく入ります。先に部屋にお入りいただくよう仰せつかっておりますのでこちらへ」
3人が部屋に通されると、落ち着く間もなく扉の向こうがシンとする。そこから陛下がいらしたのがわかった。
扉が開かれ陛下の履いている黒いブーツがカツッと音を立てる。純白の服には金の糸で刺しゅうが施され、彼の品性と威厳を体現するようだった
3人の顔を見回すと柔らかにほほ笑む。
「皆、来てくれてありがとう」
ぱっちりとした目は人形のそれのようだった。大きな目は彼を幼く見せながら、その振る舞いは19には見えない。そこがこの男の不思議な雰囲気を作っているのかもしれない。
「こちらこそお招きいただきありがとうございます。陛下」
3人は異口同音に応える。
「堅苦しい挨拶はいい」
陛下は優しく微笑んだ。
「今夜は身内だけだのだから気楽な晩餐に」




