第6話「『無敗』のガルドス」
柔らかな外光が差し込む生徒会室には、九人の姿があった。
まず、窓際の席。
生徒会長に与えられたその場所には、当然ザイアが座っている。
そして、部屋の中央に置かれた長机。
それを囲うように座るのは、執行部の五人とレイ。
それと、真紅のフルプレートを纏った長身の少年と、モノクルをかけた細身の少女。
彼らは、レイたちがダンジョンに潜っている間に帰還した、学園でも有数のパーティーのリーダーたちだった。
「転移トラップに、未知の蠍型モンスター……」
シュナからの報告を受け、ザイアが低く呟く。
その表情は険しい。
「はい。それと、最後には屍魔法使が現れました」
「屍魔法使だと?」
真紅の鎧を鳴らしながら、少年が口を挟む。
「第四階層以降にしか出ねえはずだろ、そいつは」
「転移トラップもだ。それも第一階層では出現しない」
モノクルの少女が、冷静に言葉を重ねた。
「やはり、ダンジョン自体も変質していると考えるのが妥当か」
ザイアが短く息を吐く。
「それと、最も重要な報告がひとつ」
シュナがそう前置きし、言葉を続ける。
「第一階層の最奥にて、ボス部屋を発見しました」
「なに……?」
ザイアの目が細められる。
「間違いないのか?」
「はい。授業で教わったままのものがありました」
「ありえんのか? 階層ボスの再出現なんて」
「本来ならばありえない」
ザイアが静かに首を振る。
「学園のダンジョンは、騎士により最下層を残してすでに踏破済み。当然、階層ボスは撃破されている」
言いながら、思考を巡らせるように目を伏せる。
「……イリスはどう思う?」
その問いに、モノクルの少女——イリスが口を開く。
「考えられる仮説はいくつかあるが……どれも根拠に乏しい。とにかく情報が足りん」
「……だが結局よ」
フルプレートの少年が割って入る。
「攻略すんのは変わんねえんだろ? ごちゃごちゃ考える必要なくねえか?」
「脳筋め……」
イリスがぼそりと呟く。
「今話し合うべきなのは、ボス攻略についてだろ」
「……まあ、間違いではないな」
ザイアは小さく頷き、シュナへと視線を向けた。
「ボス部屋には何か条件はあったか?」
「入場制限がありました。人数は、十三名以下です」
「ふむ……」
ザイアが顎に手を当てる。
「執行部は参加するとして——」
「もちろん俺らも参加だ!」
フルプレートの少年が、勢いよく立ち上がった。
「執行部が現状六人で、俺ら暁の紅玉が七人だ。ちょうどいいだろ?」
「おいガルドス」
イリスが鋭く言葉を投げる。
「お前、第一階層のボスが何なのか知っているのか?」
「知らん!」
即答だった。
「だが、俺らと執行部が手を組んで負けるはずはない!」
そして、ガハハと豪快に笑う。
イリスはこめかみを押さえた。
「……これで、戦闘に関しては一級品なのがまた……」
やれやれと、イリスが深くため息を吐く。
「あの」
その時、ノイーダが静かに手を挙げた。
「それについてなのですが、リアンさんは置いていくべきだと思います」
「は?!」
突然の言葉に、リアンが目を見開く。
「なんでそんな話になる?!」
「いや、だって……」
ノイーダが立ち上がり、リアンの隣へと歩み寄る。
そして、左肩を軽くつついた。
「いっ?!」
それだけで、リアンの顔が歪んだ。
反射的に肩を押さえる。
「傷は治っていますが、痛みを感じる。いわゆる幻肢痛です」
ノイーダが淡々と告げる。
リアンの額に、じわりと脂汗が浮かんだ。
「精神的な問題ですから、少しの間戦闘から離れた方がいいです」
そう言われ、リアンは眉を寄せる。
「俺は——」
「今回は残れ、リアン」
だがザイアの静かな言葉に、リアンが口をつぐんだ。
「いずれ必ず、万全のお前の力が必要になる」
「……はい」
リアンは目を伏せ、唇を噛んだ。
その様子を見て、ガルドスが声をかける。
「安心しろリアン!」
鎧を鳴らしながら、豪快に笑う。
「暁の紅玉には優秀な前衛が多い。必ず戦果を持ち帰ってやる!」
「……よろしくお願いします。ガルドスさん」
リアンが小さく頭を下げる。
ガルドスは大きく頷いた。
「しかし、そうなるともう一人参加させたいな」
イリスが言う。
その言葉に、リアンが顔を上げた。
「だったら、適任がいますよ」
そして、その視線が一人へと向く。
「レイ君。頼まれてくれるかい?」
唐突な指名。
だが——
「はい。もちろん」
レイは、あっさりと頷いた。
「……おいおい。このひょろっちい一年坊主で大丈夫なのか?」
ガルドスが、値踏みするようにレイを見る。
「実力は確かですよ」
リアンが静かに告げる。
「なんたって、我々が苦戦した蠍型モンスターを一人で蹂躙してましたから」
「ほう……?」
ガルドスの片眉が上がる。
その口元に、にやりと笑みが浮かんだ。
「なら、その実力を見せてみろ」
一瞬、空気が止まる。
ザイアが呆れたように肩をすくめた。
「……ガルドス。今はそんなことをしている場合では——」
「あるんだな、これが」
自信に満ちた声で、ガルドスが遮った。
「執行部と暁の紅玉のレイド戦は確定だ。なら、こいつとは背中を預け合うことになる」
ガルドスは続ける。
「こいつの力を知らなければ、背後が気になって力を十全に発揮できない。そうだろ?」
「……一理はあるか」
ほんの一瞬だけ言い淀んだ後、ザイアが小さく呟く。
「だが、どう証明する?」
「んなもん決まってるだろ」
ガルドスが、ゆっくりとレイを見下ろした。
「俺と決闘しろ」
◆ ◆ ◆
石畳のフィールドを中心に、円形に広がる観客席。
主に、対人戦闘の授業で使われる学園の施設——競技場。
まるでコロシアムのようなその空間には、すでに多くの生徒が詰めかけていた。
ざわめきが、波のように広がっている。
「……観客が多いわね」
周囲を見回しながら、シュナが呟く。
「私が噂を流したんだ」
隣に座るイリスが、あっさりと答えた。
「噂ですか?」
「ああ」
モノクルを軽く押し上げる。
「暁の紅玉のリーダー、”無敗”のガルドスと、生徒会長から直接執行部へスカウトされた謎の一年生の決闘が始まる……とな」
シュナの目が、わずかに見開かれる。
「どうしてそんなことを?」
「娯楽だよ」
イリスは肩をすくめた。
「今の学園には、息が詰まるような空気が漂っている。それを少しでも払拭できればと思ってな」
その言葉に、シュナはわずかに眉を顰める。
「……なにも、レイを見世物にしなくたって」
そして、ぽつりと小さく溢した。
「何か言ったか?」
「……なんでもありません!」
強く否定するシュナに、イリスは不思議そうに首を傾げた。
その時——
「決闘形式は一本勝負。勝利条件は、相手の降参か武器の破壊」
フィールドの脇に立つザイアの声が、場に響いた。
ざわめきが、すっと収まる。
全員の視線が、中央へと集まった。
そこには、対峙する二人の姿。
——ガルドス。
真紅のフルプレートに身を包み、悠然と立っている。
左手には、ひとつだけ嵌められた指輪がきらりと光る。
その指輪に、ガルドスはふっと息を吹きかけた。
指輪の周りがの空気が、わずかに揺らぐ。
そして、レイ。
胸当て。黒い外套。黒いブーツ。
ダンジョンに入った時と同じ装備を身に纏い、静かに立っていた。
「防具は各々の物を使用。武器のみ、試合用の木剣とする。他に制約は?」
「なし。なんでもありだ」
ガルドスが口角を上げる。
「よし。では、二人とも武器を選べ」
ザイアの言葉に、二人は並べられた木製武器の前へと動いた。
ガルドスは迷わず、一本の大剣を手に取った。
軽く振って、感触を確かめている。
対してレイは、多くの武器の前で足を止めた。
視線を巡らせ、武器を見比べる。
——少しの逡巡。
やがて、レイはガルドスへと顔を向けた。
「スキルで木剣を強化するのはありですか?」
「当然だ」
ガルドスが首肯する。
「では……これとこれを」
そう言って、レイは二本の直剣を手に取る。
視界にはウィンドウが表示されている。
『木製の直剣』
——攻撃力:E-
——耐久力:E
「二刀流か?」
「いえ」
短く答え、レイは空中に六芒星を描く。
続いて浮かび上がった青い歯車に、ガルドスが興味深そうに目を細めた。
「……ほう」
かちりと噛み合った歯車が回転し、二本の木剣へと魔法陣を転写する。
すると——木剣が、引き寄せられるように近づいた。
二本が接触した瞬間——境界が、消える。
刀身が捩れ、伸び、削れ——再び組み上がる。
そうして出来上がったのは、一振りの直剣だった。
「……なんだ? 今のは」
観客席で、イリスがシュナに問う。
「融合の魔工刻印だそうです。おそらく、装備と装備を組み合わせて強化するスキルかと」
「へえ……」
イリスの視線がレイへと注がれる。
「ジョブは?」
「魔工技師と言ってました」
「そうか……」
目を細め、イリスがレイを見つめる。
「まあだが、強化だけじゃ……ガルドスには勝てないだろうな」
そう言いながらも、瞳には明確な興味が宿っていた。
視線の先で、レイが軽く剣を振り感触を確かめる。
『融合された木剣』
——攻撃力:C-
——耐久力:C
そしてステータスも確認し、満足げに頷いた。
「では、両者構えろ」
ザイアの声に、二人がフィールドの中央へと足を運ぶ。
ガルドスが大剣を肩に担ぎ、ゆっくりと構える。
対するレイも、剣を正面に構えた。
静寂が落ちる。
「審判は私が務める。危険だと判断した場合、即座に介入する。異論は?」
「無え」
「ありません」
「よし」
一拍の間。
そして——
「それでは——始め!」
ザイアの号令が響いた。
直後——
ガルドスが石畳を砕く勢いで踏み込み、上段から斬りかかった。
「ふん!」
唸りを上げる大剣。
それを迎え撃つように、レイは直剣を斜めに構える。
力を受け流す構えだ。
そして、大剣が直剣に触れる瞬間——
「幻惑剣」
ガルドスが呟く。
すると——大剣が、音もなく直剣をすり抜けた。
「——っ?!」
レイの目が見開かれる。
その直後、攻撃が直撃する。
身体が吹き飛び、壁へと叩きつけられた。
衝撃とともに肺から空気が一瞬で抜け、土煙が舞い上がる。
「こほっ……重い、ですね……」
煙の中で、小さな瓦礫を払いながらレイが立ち上がった。
「ほう!」
ガルドスが笑みを浮かべる。
「初見の俺の一撃を受けて立ち上がるとは、なかなかやるじゃないか!」
レイは応えず、ただガルドスの剣を見つめていた。
「……僕の剣は確実に捉えてました。非実体化でもしたのでしょうか」
その呟きを聞き、ガルドスが声を張り上げた。
「その通りだ!」
大剣を肩に担いで続ける。
「俺のジョブ、幻剣術士のユニークスキル……相手の武器をすり抜ける」
そして、にやりと笑った。
「さあどうする。俺と剣で打ち合うことはできんぞ?」
試すような視線。
それに対し、レイは——
「なるほど……面白いスキルですね……!」
きらきらと、目を輝かせていた。
「相手の武器をすり抜ける、と……」
呟きながら、自身の胸当てに視線を落とす。
そこにあるのは、真新しい傷。
先ほどのガルドスの攻撃によってできた傷を見て、レイは思案する。
「ふむ……」
そして、手にした直剣を見つめる。
「……やってみても面白いかもしれません」
次の瞬間——直剣に、青い光が迸った。
これまでよりも一層強く輝く光に伴って、直剣の質感が変化する。
数瞬の後、光が収まる。
レイはステータスを確認すると、にんまりと笑った。
「何か手を思いついたか?」
「はい」
短く答え、レイはゆっくりと剣を構えた。
「面白い」
呼応するように、ガルドスも構える。
——刹那。
ガルドスが、力強く踏み込んだ。
レイとの距離を一瞬で消し去り、先ほど同様上段から斬りかかる。
それを見たレイは——迎え撃つように、剣を振った。
「打ち合いはできないと言っただろう!」
ガルドスは叫び、勢いのまま大剣を振り下ろす。
そして、その大剣は、レイの直剣をすり抜けて——否。
——カンッ、と。
乾いた音が響いた。
それは、この場にいる誰もが聞き覚えのある——木剣と木剣が、ぶつかり合う音。
「なに?!」
レイの直剣が、ガルドスの大剣を受け止めていた。
観客席にざわめきが起こる。
「……何をしたんだ?」
イリスが眉を寄せ、シュナに問う。
「わ、わかりません……ただの強化ではないのは、確かですが……」
誰もが理解できず、困惑している。
だが、その中で——ガタリと一度音がした。
「まさか……!」
ノイーダが、勢いよく立ち上がる。
「何かわかったのか?」
クルーガが問うが、ノイーダはぶつぶつと呟くばかり。
「いや……でも……そんなことが……」
「おいノイーダ。説明してくれよ」
リアンに促され、ようやく考えを口にする。
「……ガルドスさんの幻惑剣は、武器をすり抜けます。ですが、先ほどのレイさんの胸当てのように、防具まではすり抜けません」
そこまで言って、ノイーダが眼鏡をくいと掛け直す。
「つまり、レイさんは……木剣を、防具に改造したのではないか……と」
「……は?」
空気が、固まる。
「……それは、世界のルールを壊しているのでは?」
アーリアの言葉に、ノイーダは首肯する。
「……僕もそう思います。ですが……」
会話している間も、レイはガルドスの攻撃を何度も受け止めている。
「あれを見るに、それ以外考えられません」
イリスは、ぞくりと背筋を震わせた。
「……ははっ。面白いな、あいつ」
皆の視線が、レイへと向かう。
そのレイの口元には、笑みが浮かんでいた。
「久しくしていなかったが、剣での打ち合いもやはり面白い!」
ガルドスが豪快に笑う。
それに釣られるように、レイの感情も昂っていた。
「はは……! これは、楽しいですね!」
木剣がぶつかり合う音が何度も響く。
その剣戟の中で、ガルドスが大剣を大きく振り抜き、レイが後方へ跳んだ。
着地と同時、レイは直剣へと視線を落とした。
『融合された木剣』
——防御力:C
——状態異常耐性:F
「……こうしてみたらどうでしょう!」
呟きとともに、木剣の質感が再び変わる。
『融合された木剣』
——防御力:B
——状態異常耐性:なし
「よし!」
満足そうに一つ頷き、剣を構え直す。
そして、踏み込んだ。
直剣が横薙ぎに振るわれ、ガルドスの脇腹へ迫る。
ガルドスはそれを受けるため、大剣を逆手で持った。
だが——カンッという音が響いた。
防御力により、大剣が勢いよく弾かれる。
「は?!」
体勢が崩れたガルドスへ、レイが二撃目を振るう。
——刹那。
ガルドスの指輪が、赤く光った。
瞬間、指輪の周りで空気が渦巻く。
その空気は瞬時に圧縮されると、レイの直剣を目がけ弾丸となって放たれた。
——パァンと高い音を奏で、直剣が弾かれる。
「おお?」
レイが目を見開く。
間髪入れず、ガルドスが頭部を目がけ斬りかかる。
しかし——
レイが風を帯びたブーツで、トンと軽く地面を蹴った。
ふわりと浮かび上がった身体を捻り、大剣のすぐ横を通り抜ける。
再度空中でブーツが風を帯び、レイがくるりと回転する。
そして、その勢いを利用して鋭く剣を振るった。
だが、ガルドスの指輪から再び放たれた風の弾丸がその剣を弾く。
「ぐぬぬ……」
レイが唇を尖らせて、ふわりと着地する。
その姿を見て、ガルドスは快活に笑った。
「やるなあ一年坊主!」
そして、真っ直ぐにレイを見る。
「俺の名はガルドス。お前の名を聞こう」
レイも剣を下ろし、視線を返した。
「レイです。よろしくお願いします」
「……いい名前だ」
ガルドスがにやりと笑う。
彼らの目には、もはや模擬戦であるという意識はなかった。
ただ目の前の相手を下すために、剣を構え直す。
乾いたそよ風が、間を吹き抜けた。
——二人が同時に、鋭く踏み込む。
最速で距離を詰め——互いの剣が、突き出される。
相手を的確に沈めるための急所——喉元へと。
「そこまで!」
瞬間。
ザイアの刀が、レイとガルドスの木剣を両断した。
「この勝負、引き分けとする!」
ザイアの声が、競技場全体に響き渡る。
……一瞬の静寂。
そして——
瞬く間に、ざわめきが広がった。
「引き分けた?! あの『無敗』のガルドスに?!」
「何者なんだ、あの一年……!」
「最初から最後まで、何が起こったかわからなかったぞ……」
困惑と興奮が入り混じる観客席。
その喧騒を背に、ガルドスはゆっくりとレイの前に歩み寄った。
「いい勝負だった」
そして、手を差し出す。
「ありがとうございます」
レイも迷いなくその手を取り、握手を交わした。
「だが、次は勝つ」
「……僕も、次は勝ちます」
レイがそう答えると、ガルドスが満足そうに笑った。
「気に入った」
ガルドスはそう言うと、収納鞄から一つの指輪を取り出した。
「お前にこれをやる」
言葉とともに差し出されたのは、先ほどガルドスが使用していたのと同じ指輪だった。
「いいんですか?!」
「ああ。俺が認めたやつに渡している。お前で三人目だ」
「ありがとうございます!」
レイが目を輝かせながら受け取る。
「それに魔力を込めると、空気の圧縮弾を放つことができる」
「素晴らしい……」
早速指に通す。
指輪はするりと形を変え、ぴたりとフィットした。
「おお……」
レイが感嘆の息を漏らし、そのままじっと観察する。
「外側にある螺旋状の溝……これが魔力の流れを誘導して、直感的に使えるようになってますね……」
ぶつぶつと分析しながら、レイの目はどんどん輝きを増していく。
「ですが、何より——」
すっと、空に手を掲げる。
「見た目がかっこいいです! 機能性と意匠の両立……素晴らしいです!」
「ほう! それがわかるか!」
ガルドスが嬉しそうに笑う。
そして腕を組み、誇らしげに言った。
「そいつは、俺が作ったのだ!」
「本当ですか?!」
レイがきらきらとした目でガルドスを見上げる。
「すごいです! ガルドスさんすごいです!」
「そうだろう!」
ガルドスは満足そうにガハハと笑い声を上げた。
ザイアが微笑みながら、そんな二人の近くに寄る。
そして振り返り、観客席へ集まった生徒たちを見た。
「皆の者、聞け!」
凛とした声に、観客席のざわめきが静まる。
「つい先ほど……ダンジョン第一階層にて、ボス部屋を発見した」
その言葉に、動揺が広がる。
「そこへ、我々執行部と暁の紅玉——そして、このレイを加えた連合で挑む」
ガルドスが一歩踏み出し、ザイアの横に立ち並ぶ。
軽く肩を叩かれ、レイもその隣へと立った。
視線が、一斉に集まる。
「決して容易ではないだろう。だが——」
ザイアが、ゆっくりと生徒たちを見渡す。
「我々は必ず、成果を持ち帰る」
その言葉には、一切の迷いがなかった。
「信じて待っていろ!」
高らかな宣言が競技場に響く。
一瞬の静寂の後——歓声が、爆発した。
「おおおおおおお!!!」
地鳴りのような歓声が、競技場を揺らす。
その中心で、レイは少しだけ驚いたように目を瞬かせ——
それから、いつもの柔らかな笑みを浮かべた。
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