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65 ウィリアム視点


 王城の敷地内には、王都はもとより、我が国を守護する騎士団と魔術師団の訓練場がそれぞれある。

 今回は剣術や体術よりも、魔法のほうがバフの効果が目に見えるということで、魔術師団の訓練場に向かっていた。

 訓練場に到着すると、場内では魔術師団員たちが研鑽に励んでいたが、彼らは父上と私に気付くと一斉に鍛錬を止めて頭を下げた。


「皆の者、頭を上げよ。鍛錬を中断させて悪いが、少しばかりこの場を空けてもらえるか?」


 その場にいた全員が「はっ!」と返事をして素早く退場していった。

 言葉の意味を理解してくれる優秀な者たちで助かる。今の私の力は一次的にすぎず、公にすべきではない。



 父上と二人だけになったところで、私は訓練場に設置されている、並び立つ的の前に立った。

 体力・魔力はいまだ漲っていて、この力を試せることに武者震いがする。父上に視線を向けると小さく頷いたので、私も頷き返した。


『先ずは小手試しといこう』


 私は()()の火魔法を、中央に立つ的を目掛けて撃った。



 ドォォォォォーーン!!!



 轟音と共に、狙った的のみならず、周りの的まで吹き飛んだ。そして、的の後方の防壁までもダメージを負ったようだ。

 訓練場(ここ)は強固な防壁で囲われ、更には守りに特化した魔導具が設置されている。

 本来であれば、火球が的を射る程度のはずが、上級である爆発(エクスプロード)級の威力になってしまうとは…。

 ここに居るのが父上(みうち)のみでよかった。的と防壁の惨状を見て、私は王族にあるまじき表情をしていたからだ。

ちなみに父上も、だ。


「…ウィルよ、『試せ』とは言ったが、その状態で高位の魔法を撃つのはどうかと思うぞ」


「いえ…父上、私が撃ったのは、ただの、初級の、火魔法です。まさかこの様なことになるとは…」


「これが初級魔法だと!?

バフがかかっているにしても、規格外の威力ではないか!

もしもこれが上級魔法だったなら…。考えただけで背筋が寒くなるわ」


「私も同じ意見です…」


 まさかここまでとは思わなかった。

 ほうけていた表情を引き締めたところへ、場外に待機させていた近衛騎士たちが血相を変えて飛び込んできた。当然といえば当然だ。

 父上は彼らに『問題ない』と告げた後、近衛の一人に、訓練場の原状回復及び、防壁と魔導具の強化を担当部署に伝えるように命令した。

 そして、私にだけ聞こえるように小声で話す。


「まったく、至高の御方の御力には驚かされる。

()()()よ、早急に茶葉の調査をするように」


「かしこまりました。この件の適任者に心当たりがあるので、その者に命じましょう」


「うむ、まかせる。それからその力が、どのくらい持続したかも報告してくれ」


「御意」


 神水茶の茶葉を宿屋の女将に渡したのは、ハジメリ村を管轄している冒険者ギルドの支部長だと聞いている。

 それならばローガンを通じ、その男に指名依頼をして、茶葉の現状を調査させるのも一つの手だ。

もちろんその前に、支部長に例の茶葉を『何時』『何処で』『誰から』『どういう経緯で』入手したかを問いただす必要がある。

 一時的だとしても、これだけの力を得られるのだから、ルーバニ地方で噂になっている町や村があってもおかしくは無い。

その辺も含めてこの件は、ギルドマスターであるローガンに任せるのが得策だと思っている。


 私は陛下の御前を失礼し、その足で冒険者ギルドへ向かった。

 受付嬢も慣れたもので、私(魔道具装着済み)の姿を見ると、ローガンに私の来訪を伝えるようにスタッフに指示を出す。

そして彼女は私を応接室へと案内してくれた。

 ローガンはすぐに来ると思うが、私は受付嬢が用意してくれた茶で一服する。

王都冒険者ギルドだけあり、高級な茶葉を使っているようだ。十分に美味しい茶だが、ふと神水茶が脳裏を過ぎる。

 比べるのもおこがましいが、あれは正に至高の茶だった。


「お待たせしてすみません」


 茶を二口飲んだところで、ローガンが謝罪しながら応接室に入ってきた。

ローガンがソファに座ったところで、私は即本題に入った。


「私から依頼があります」


 そう切り出し、先ずは例の支部長へのルーバニ茶入手の経緯と、その詳細の聞き取り。そして産地の現状を調べるよう依頼内容を話す。

 もちろん神水茶のことは伏せてだ。


「仕事柄、よくお茶を飲みますが、とある宿屋で出されたルーバニ茶が、いつも以上に美味しかったのが気になったんです。

聞けば、宿屋の女将は冒険者ギルドの支部長から貰ったとの事。

その者へ、茶葉の入手に至った経緯をなどを、ギルマスに聞き取りをしてもらいたいのです」


「わかりました。聞き取りは私が責任を持って行います。で、その支部長とは何処の?」


「ハジメリ村を管轄している支部です」


「確かあそこの支部長は…、すいません…後で確認しときます」


「それでかまいません。

それから支部長の件とあわせて、ルーバニ茶の産地の現状…、例えば茶の出来や、茶に関する噂話などがないかも早急に調べてもらいたいのです。

それに伴う費用はこちらで持ちます」


 本来なら、茶葉の調査など冒険者ギルドへの依頼内容としては不相応だが、私が直々に依頼する意味をローガンは察しているだろう。


「だったら、聞き取りついでにその支部長に茶の調査をやってもらいますよ。それが一番手っ取り早い。依頼内容は私の方で何とでもします」


ローガンの策は私が考えていたことと同じだった。ローガンの評価が私の中で上がる。


「感謝します。

この案件は早急に報告がほしい為、その辺も留意してください。

これは前金としてギルマスに渡しておきます。ハジメリ村と、ルーバニ地方へのスクロール購入に充ててください。

支部長への報酬額も任せます。前金で足りなければ教えてください」


「承知しました。早速支部長と面会して、結果は明日か明後日にでも報告できるようにしておきます。

それから茶の調査に関しては、1週間もあれば終わるでしょう」


「よろしく頼みます」


仕事が早くて助かる。

私は金貨と大金貨が詰まった革袋をローガンに渡し、冒険者ギルドをあとにした。


スクロールは高額商品です。

次回はイツキ視点に戻ります。

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