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第95話 最後の魔法大祭

 ――時間が経つのは、早い。

 春だった学院は、いつの間にか夏へ近づいていた。

 そして。

 魔法学院最大の祭典。

 魔法大祭。

 今年も、その日がやってきた。

 ただし――

 今年は、例年とは少し違う。

「今年の魔法大祭は三日間にわたって開催されます!」

 会場中央。

 司会を務める教師が声を張り上げる。

「第一日目!」

「五キロメートル競争!」

「お題競争!」

「必殺技披露!」

「そして第二日目!」

「トーナメント式対戦!」

「さらに第三日目!」

 一拍置いて。

「今年から新設された――」

「チーム競技!」

 会場が一気に沸いた。

 今年から新しく追加された競技。

 その詳しいルールは、未だに生徒たちにも完全には知らされていない。

 ただ一つ決まっていること。

 チームは、明日のトーナメント式対戦のブロックによって決まる。

 Aブロック。

 Bブロック。

 Cブロック。

 Dブロック。

 それぞれの所属選手が、三日目には一つのチームとなる。

「つまり、今日と明日の結果が――」

「三日目の戦いに繋がるってことか」

 観客席から声が上がる。

 その通りだった。

 今年の魔法大祭は――

 三日間すべてが繋がっている。

 そして。

 天城理人たち三年生にとっては――

 これが最後の魔法大祭だった。

 ◇

「……最後か」

 控室。

 天城は、静かに呟いた。

 隣にはアイランド。

「なんか実感ないな」

「ああ」

 去年は二年生だった。

 その前は一年生だった。

 そして今。

 自分たちは三年生。

 この学院で過ごす魔法大祭は――

 これが最後。

「絶対勝とうぜ」

 アイランドが笑う。

「もちろん」

 天城も笑った。

 そして。

 第一競技が始まる。

 ◇

五キロメートル競争

「位置について――!」

 数多くの生徒がスタートラインに並ぶ。

 天城は出場しない。

 この競技に出るのは――

 アイランドだった。

「よーい!」

 ――ドン!

 一斉に生徒たちが飛び出す。

 身体強化。

 風魔法。

 地面との摩擦を減らす魔法。

 様々な魔法が飛び交う。

 その中で。

 一人の生徒が、序盤から異常な速度で飛び出した。

「速い!」

「今年もか!」

 二年・岡崎振護。

 去年も一年生ながら五キロメートル競争を制した男。

 自身を波へ変える、独特の古代魔法。

 今年も――

 その速さは健在だった。

「岡崎が独走!」

「二位争いが激しい!」

 その後ろ。

 三年生が追い上げる。

 そして。

 終盤。

「二位! 三年、鳴神春香!」

「三位! 二年、吉田風美!」

 歓声が上がる。

 そして――

「四位!」

 実況の声が響く。

「三年、アイランド!」

「うおおおおお!」

 アイランドはゴールへ飛び込んだ。

「くっそ……!」

 息を切らしながら地面に手をつく。

「三位、届かなかった!」

 それでも。

 四位。

 十分な結果だった。

 ◇

お題競争

 続いて、お題競争。

 今年のお題は――

「与えられた素材から、最も優れた魔法構造物を作れ!」

 制限時間。

 十分。

 参加者たちが一斉に魔法を展開する。

 そして。

 一際目立っていたのは――

 二年生、エクレシア・イクシー。

 魔力が渦を巻く。

 素材が次々と形を変える。

 削り。

 組み合わせ。

 構造を調整し。

 最後には――

 まるで精密機械のような魔法構造物が完成した。

「……すげぇ」

 観客席から声が漏れる。

 審査員たちが作品を確認する。

 一人。

 また一人。

 札を上げる。

「満点!」

「優勝!」

「二年、エクレシア・イクシー!」

 会場から大きな拍手が起こった。

 ◇

必殺技披露

 そして。

 天城理人の出番。

「続いて――」

 司会の教師が名前を呼ぶ。

「三年!」

「天城理人!」

 歓声。

 去年。

 天城はこの舞台で、超電導加速砲――レールガンを披露した。

 観客の記憶にも、まだ残っている。

 だが。

 今年。

 天城は薙刀を構えた。

「……」

 静かに息を吸う。

 今年は――

 レールガンではない。

「炎槍」

 炎が生まれる。

 天城が使う、炎魔法の基礎技。

 観客からは、少し意外そうな声が上がる。

「炎魔法?」

「去年とは全然違うぞ!」

 天城は炎槍を見つめる。

 そして。

 左手を前へ出した。

「――蒼圧」

 空気が変わった。

「……?」

 炎槍の周囲。

 温度が急激に変化する。

 青い光が炎を包み込む。

「何だ……?」

 炎槍が――

 変わる。

 その炎は、先ほどまでとは明らかに違っていた。

 より激しく。

 より鋭く。

 そして――

 圧倒的な威力を秘めている。

 天城は薙刀を振るった。

「いけ!」

 炎槍が飛ぶ。

 標的へ直撃。

 ――轟音。

 巨大な標的が大きく吹き飛ぶ。

 防御結界が激しく揺れる。

「うおおおおおお!」

 観客席から歓声が上がった。

「炎槍であれかよ!」

「去年のレールガン使ってないぞ!」

「何をしたんだ!?」

 しかし。

 天城は何も答えない。

 ただ。

 小さく笑った。

 蒼圧。

 それは単独の必殺技ではない。

 魔法そのものを強化するための、新しい発想。

 そして――

 天城がこの数か月間、魔法開発を続けてきた理由の一つだった。

 ◇

 最後。

 神崎おとの番。

「二年、神崎おと!」

 会場が沸く。

「また何するんだ?」

「去年のトーナメントで使ったやつじゃね?」

 おとは両手を前へ出す。

 目の前には――

 一つの巨大な岩。

「……」

 静かに構える。

「共振」

 ――ビリッ。

 空気が震える。

 岩が細かく振動し始める。

「……何だ?」

「去年も見たけど……」

「何をやってるのか全然分からん」

 振動が強くなる。

 そして――

 パキッ。

 岩に亀裂が走る。

 次の瞬間。

 ――バキィィィン!!

 岩が粉々に砕け散った。

「え?」

「なにが起こった?」

「やっぱり理解できない...」

 観客の多くは、未だにその仕組みを理解できていない。

 おと本人も、特に説明する気はない。

 ただ笑っている。

 審査結果。

「第三位!」

「二年、神崎おと!」

 拍手が起こる。

 おとは嬉しそうに手を振った。

 ◇

 こうして。

 魔法大祭第一日目。

 三つの競技が終了した。

 そして。

 明日。

 いよいよ。

 魔法学院最大の戦いが始まる。

 トーナメント式対戦。

 そして、その結果によって――

 三日目のチームが決まる。

 天城は会場を出ながら、空を見上げた。

「……明日か」

 最後の魔法大祭。

 最後のトーナメント。

 そして――

 今年から始まる、新しいチーム戦。

 まだ誰も、その全貌を知らない。

 天城理人にとって。

 これが最後の魔法大祭。

 だからこそ。

 天城は笑った。

「……全部、楽しむか」

 夕暮れの学院に。

 生徒たちの声が響いていた。

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