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第84話 図書館ではお静かに!

 翌日。

 国立図書館。

 学院の図書室とは比べ物にならないほど巨大な建物だった。

 高い天井。

 何階にも続く本棚。

 古代魔法から最新の魔法理論まで。

 国中の文献が集められている。

「すごい……」

 神埼おとが辺りを見回す。

「静かに」

 神埼信之が人差し指を口元に当てる。

「図書館だからな」

「……はい」

 フィクアリーも周囲を見る。

「人、多いね」

「ここは国立図書館だからな」

 三人は受付を通り抜ける。

 信之が職員へ身分証を提示する。

「特別保護文書を閲覧したい」

「確認します」

 しばらくして。

「……許可が下りました」

「ありがとう」

 三人は奥へ進んでいく。

 一般の利用者が入れない区画。

 古い資料が並ぶ場所。

「ムンドゥ・リスグラージュ」

 フィクアリーが検索端末へ名前を入力する。

 いくつかの資料が表示された。

「……あった」

「本当?」

 おとが画面を覗き込む。

「『極微界律』系統」

「これです」

 信之も画面を見る。

「開いてみよう」

 古い資料が表示される。

 そこには。

 固有能力系統――極微界律

 と記されていた。

「小さい世界を感じ取る能力……」

 おとが読み上げる。

「『小さい世界』って何でしょう?」

「分からない」

 フィクアリーが答える。

「でも」

「ムンドゥは、それを見ていた」

 資料を読み進める。

 さらに。

 一つの論文が表示された。

「……論文?」

 タイトル。

 『極微界律系統に関する考察』

 著者。

 エボルド・ビルシート

「……」

 三人が同時に黙る。

「エボルド……」

 おとが小さく呟く。

「ビルシート……」

 信之も眉をひそめる。

「かなり古い論文だな」

 フィクアリーは画面を開く。

 そこには。

 こう書かれていた。

 ――――――――――

 『極微界律』とは、小さい世界を感じ取る能力である。

 この能力者が感じ取る世界を、私は仮に「量子力学」と呼ぶ。

 ――――――――――

「……量子力学?」

 おとが首を傾げる。

「聞いたことない」

「俺もない」

 信之が答える。

「物理学の一分野……なのか?」

 フィクアリーは文章を読み続ける。

 そこには。

 量子力学という言葉の説明が続いていた。

 量子力学。

 それは。

 極めて小さな世界を扱う学問。

 その世界では。

 現代魔法学の基礎となっている物理法則が。

 そのまま通用しない。

「……」

 フィクアリーの目が止まる。

「これ」

「私が見てるものに近い」

「先輩?」

「……分からないけど」

 フィクアリーは画面を見つめる。

「『物理学の常識が通用しない』ってところ」

「少し似てる」

 おとが続きを読む。

 ――――――――――

 この系統の固有能力は、現在確認されている限りムンドゥ・リスグラージュと人物不明の2名が保有している。

 魔法歴6700年までに、極微界律系統と思われる能力者は2名しか確認されていない。

 しかし。

 その二名が本当に『極微界律』系統であったのかは、未だ明らかになっていない。

 ――――――――――

「2人……」

 おとが呟く。

「少なすぎません?」

「他の固有能力なら」

 信之が資料を確認する。

「同じ系統が一年に一人程度重なることも珍しくない」

「でも」

「極微界律は違う」

 フィクアリーが能力識別の記録を見る。

 固有能力には。

 ある程度決まった法則がある。

 漢字は能力の系統。

 読みは能力の本質。

 だから。

 同じ漢字を持つ能力者が複数存在すれば。

 同じ系統である可能性が高い。

 フィクアリーが検索する。

「極微界律……」

 検索結果。

 二件。

「……」

「ムンドゥと」

 おとが画面を見る。

「名前不明の一人だけ」

「本当に少ない……」

 信之が呟く。

 フィクアリーは論文へ戻る。

 その先には。

 エボルドの考察が続いていた。

 ――――――――――

 しかし。

 現代魔法学における第一法則。

 すなわち物理法則に反する世界が存在するとは考えにくい。

 したがって。

 量子力学なる世界は、存在しないと考えるのが妥当である。

 ――――――――――

「……」

 三人は黙る。

「なんか」

 おとが首を傾げる。

「変な論文ですね」

「どこが?」

「量子力学っていうものを説明してお

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