第82話 クリスマス会
二学期。
長かった授業も、ついに終わりを迎えた。
「……終わった」
天城が机に突っ伏す。
「終わったな」
アイランドも隣で笑う。
「単位は?」
「ちゃんともらえた」
「よし!」
天城は拳を握った。
「冬休みだ!」
魔法学院の二学期。
魔法開発実践。
野外調査実習。
その他の授業。
いくつもの課題を乗り越え、二人は無事に単位を取得した。
そして。
冬休み。
「そうだ」
天城が思い出したように口を開く。
「ニューゴン先生がクリスマス会やるらしいぞ」
「クリスマス会?」
「ああ。先生の家で」
「楽しそうだな!」
天城はスマートフォンを見る。
「班の3人で行かない?」
「俺も?」
「もちろん」
天城がアイランドを見る。
「……あ」
アイランドが少し申し訳なさそうな顔をする。
「悪い」
「家の用事がある」
「そっか」
「行きたかったんだけどな」
「また今度だな」
「おう!」
アイランドは笑った。
天城は次にフィクアリーへ連絡する。
「クリスマス会?」
「ああ」
「ニューゴン先生の家でやるらしい」
「……行く」
「即答だな」
「家にいたくないから」
「……」
天城は一瞬だけ黙る。
「そっか」
「うん」
「じゃあ、決まりだな」
「うん」
フィクアリーはそれだけ答えた。
そして。
クリスマス当日。
ニューゴン邸。
「お邪魔します!」
天城が玄関を開ける。
「いらっしゃい!」
ニューゴン先生が笑顔で出迎える。
「よく来たのぉ!」
「先生、気合入ってますね」
天城が部屋を見る。
壁にはクリスマスの飾り。
テーブルには料理。
ケーキ。
飲み物。
大量のお菓子。
「当然じゃ!」
ニューゴン先生が胸を張る。
「年に一度のクリスマスじゃからな!」
「……」
フィクアリーが料理を見る。
目が少し輝いた。
「食べていい?」
「もちろんじゃ!」
「じゃあ食べる」
フィクアリーは小さな皿を取る。
「それだけ?」
天城が驚く。
「うん」
「少な……」
「食べられる量だけ」
「そうか……」
そこへ。
「お邪魔します」
石破武が入ってくる。
「おお、石破!」
ニューゴン先生が手を振る。
「久しぶりじゃの!」
「お久しぶりです」
石破は笑顔で頭を下げる。
フィクアリーと同じ三年生。
普段から同じクラスである。
「フィクアリーも来てたのか」
「うん」
「よかった」
石破が微笑む。
続いて。
「こんにちは!」
神埼おとが入ってきた。
「お邪魔します!」
「おお、神埼!」
天城が手を振る。
「今日はよろしくお願いします!」
そして。
「お邪魔します」
その後ろから、見慣れた青年が入ってきた。
「神埼先輩!」
「久しぶりだな」
神埼信之。
アスフェルダム魔導隊の副隊長。
今日は珍しく制服ではなく、私服だった。
「仕事は?」
天城が尋ねる。
「有給消化」
「……有給あるんですね」
「一応ね」
神埼信之が苦笑する。
「たまには休まないと、隊長に怒られる」
「レガリオス隊長に?」
「ああ」
「意外ですね」
「俺も意外だったよ」
神埼信之が笑う。
全員が揃った。
天城。
フィクアリー。
石破。
神埼おと。
神埼信之。
そしてニューゴン先生。
アイランドだけは、家の用事で来られなかった。
「では!」
ニューゴン先生がグラスを持ち上げる。
「クリスマス会を始めるぞい!」
「乾杯!」
グラスが軽くぶつかる。
料理を食べ。
お菓子を食べ。
くだらない話をする。
「そういえば天城」
石破が口を開く。
「二学期の成績はどうだった?」
「……」
天城が目を逸らす。
「聞かないでくれ」
「悪かったのか?」
「単位は取れたからいいんだよ」
「なるほど」
石破が笑う。
「フィクアリーは?」
「全部取れた」
「さすがだな」
「……」
フィクアリーがケーキを小さく食べる。
「おいしい」
「それはよかった!」
ニューゴン先生が嬉しそうに笑う。
神埼おとはそんな光景を眺めていた。
そして。
フィクアリーの隣に座る。
「先輩」
「ん?」
「この前の魔法」
「うん」
「冬休みに一緒に研究しましょうね」
「うん」
「どんな魔法にします?」
「まだ決めてない」
「じゃあ、いろいろ試しましょう!」
「楽しそう」
二人が話している。
その様子を天城が少し離れた場所から眺めていた。
「……フィクアリー」
「?」
「なんか最近、友達増えたな」
「……」
フィクアリーが少し考える。
「そうかも」
ほんの少しだけ。
嬉しそうに笑った。
窓の外では雪が降り始めていた。
二学期を終えた学院生たちにとって。
短い冬休みが始まる。
そして。
この冬休み。
フィクアリーと神埼おとは。
二人の魔法研究が始まろうとしていた。




