↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/112

第8話 古代魔法

国立魔法学院。

選択科目の授業が始まった。

天城理人が選んだ科目の一つ。

魔法史応用・古代魔法

古代文明で使われていた、現在とは異なる魔法技術を研究する授業だ。

教室に入ると、机の上には魔法陣を書くための道具が置かれていなかった。

魔法式学の授業なら、魔法筆や魔石が用意されている。

しかし今日は違う。

先生は何も持っていなかった。

「今日の授業では、古代魔法について学びます」

黒板に文字が表示される。

古代魔法

「現在の魔法とは、大きく仕組みが異なります」

理人はノートを開いた。

「現代魔法では、魔法式、魔法陣、魔力制御によって安定した魔法発動を行います」

先生は簡単な魔法陣を書く。

「式によって必要なエネルギー量を計算し、魔力の流れを制御する」

「誰が使っても同じ結果を出せる」

これは現代魔法の特徴だった。

科学技術と同じ。

再現性がある。

しかし。

「古代魔法は違います」

先生が魔法陣を消す。

「古代魔法には、基本的に魔法式や魔法陣を必要としません」

教室が少しざわつく。

理人も少し驚いた。

「え?」

魔法式学では、魔法陣が魔法の設計図だと習った。

それを使わない。

どうやって制御するのか。

先生は説明を続ける。

「古代魔法では、最初に魔法を詠唱します」

「そして、特定の条件――トリガーが発生した瞬間、魔法が展開されます」

先生が例を出す。

「例えば、古代の雷魔法」

「術者は事前に詠唱を行います」

「しかし、その時点では魔法は発動しません」

「空気中の水分量が一定以上になる」

「その条件を満たした瞬間、魔法が発動します」

理人は考える。

「予約式……?」

先生が少し首を傾げる。

「予約式?」

「あ、いや」

理人は慌てて訂正する。

「条件を満たしたら起動する仕組みです」

先生は頷いた。

「その理解で近いです」

古代魔法の最大の特徴。

それは、

感覚による制御

だった。

現代魔法では、

必要魔力。

発動速度。

範囲。

威力。

すべて数値化されている。

しかし古代魔法は違う。

術者自身が、

「どれくらいの力が必要か」

「どのタイミングで発動するか」

を感覚で判断する。

そのため、

才能の差が大きく出る。

同じ魔法でも、使う人によって結果が変わる。

「だから古代魔法は失われました」

先生は言った。

「再現性が低く、教育が難しかったためです」

「でも」

先生は続ける。

「古代魔法には、現代魔法にはない利点があります」

魔法陣が必要ない。

準備が少ない。

条件さえ満たせば高速発動できる。

つまり、扱える人間にとっては非常に強力。

そして実習。

「今日は簡単な古代魔法を体験してもらいます」

生徒たちが外へ移動する。

広い訓練場。

先生が説明する。

「今回使うのは、空気中の水分量をトリガーとした放電魔法です」

「まず詠唱を覚えてください」

生徒たちは詠唱を繰り返す。

理人も真似する。

「……これでいいのか?」

魔法式もない。

魔法陣もない。

ただ言葉を覚える。

少し不安だった。

全員が準備を終える。

先生が言う。

「空気中の水分を感じてください」

「湿度が高まった瞬間を見極めます」

生徒たちは集中する。

理人も周囲を見る。

「水分量……」

理科の知識が働く。

空気。

温度。

湿度。

雲。

いろいろな情報を考える。

その瞬間。

パチッ。

小さな音。

指先から電気が走った。

「成功した!」

周囲から声が上がる。

理人も自分の手を見る。

小さな雷。

本当に発動した。

しかし。

理人は別のところを見ていた。

「……」

魔法そのものではない。

発動条件。

湿度。

空気中の水分。

電位差。

「これって……」

理人は呟く。

「雷が起きる条件を人工的に作ってるだけなのか」

隣の生徒が驚く。

「また難しいこと考えてる?」

「いや、普通に気になっただけ」

本人は本当に普通だと思っている。

先生は理人を見る。

「古代魔法を一度で理解する人は珍しいですね」

「そうですか?」

理人は首を傾げる。

「ただ、仕組みを考えただけです」

先生は少し笑った。

古代魔法。

かつて賢者、勇者、魔王たちが扱った特殊な技術。

現在では失われつつある魔法。

しかし。

一人の高校生にとって、それは未知の神秘ではなかった。

ただの――

まだ解析されていない現象だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。