↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
73/112

第73話 チームワーク②

 「次。」

 「フィクアリー班。」

 Mr.ジャーマンの声が実習林へ響く。

 三人が前へ出る。

 三年。

 フィクアリー・パール。

 二年。

 天城理人。

 二年。

 アイランド・アームストロング。

「始め!」

 開始と同時。

 アイランドが大地を蹴った。

「身体強化!」

 筋肉が膨れ上がり、一瞬で標的へ迫る。

「はぁぁぁぁっ!」

 拳が振り抜かれた。

 ドォォォン!!

 標的が粉々に吹き飛ぶ。

 衝撃だけで周囲の木々が大きく揺れ、何本もの細い木が風圧で倒れた。

「すげぇ……。」

「一撃で吹き飛ばした。」

 天城も続く。

「天弓。」

 鉄片が宙へ浮く。

「雷轟。」

 青白い雷が鉄片を包む。

「光の柱で貫きたまえ。」

 轟音。

 レールガンが一直線に飛び、標的を次々と撃ち抜いていく。

「よし!」

 数体の標的が崩れ落ちる。

 しかし。

 フィクアリーだけは動かなかった。

 杖を握ったまま、俯いている。

「フィクアリー先輩?」

 天城が声を掛ける。

「……。」

 返事はない。

 Mr.ジャーマンが腕を組む。

「パール。」

「何をしている。」

 フィクアリーは小さく肩を震わせた。

「……ごめんなさい。」

「私。」

「役に立たないので……。」

 その一言に、周囲が静まり返る。

「私の魔法は味方がいると使えません。」

「威力を落とせば使えますけど……。」

「そんな魔法じゃ、意味がないから。」

 天城はフィクアリーを見る。

 魔法大祭ではあれほど強かった。

 それなのに。

 今は、自分を信じられていない。

 Mr.ジャーマンが厳しい声で言う。

「戦場で何もしないのが、一番危険だ。」

「できる範囲で戦え。」

「はい……。」

 だが。

 フィクアリーは動けない。

 頭の中に蘇る。

『落ちこぼれ。』

『そんな魔力量でパール家を名乗るな。』

『失敗した罰だ。』

 食事を抜かれた日。

 叩かれた日。

 何度も否定され続けた日々。

 杖を握る手が震える。

「私なんか……。」

「どうせ失敗する……。」

 その瞬間。

 アイランドが標的に囲まれた。

「しまった!」

 天城も援護へ向かう。

 だが距離がある。

 フィクアリーは二人を見る。

 呼吸が乱れた。

「……もう。」

「知らない。」

 杖を空へ掲げる。

「水泡。」

 無数の透明な泡が空へ浮かぶ。

 その中心へ魔法陣が展開される。

 天城の叡智の瞳が反応した。

(魔力反応がない……。)

(まさか……!)

 泡の内部で金属が生成される。

 核融合によって生み出された金属ナトリウム。

「まずい!!」

 天城が叫ぶ。

「全員伏せて!!」

 次の瞬間。

 ドォォォォォン!!

 実習林全体を揺るがす大爆発。

 爆風が木々を薙ぎ倒し、炎が一瞬で森を飲み込んだ。

 さらに。

 爆発した泡から雨が降り注ぐ。

 アルカリ性の飛沫が地面を焦がしていく。

 天城は絶対防御を展開する。

 中和できる物質「塩化水素」で反応を抑え込みながら、周囲への被害を最小限に食い止める。

 煙が晴れる。

 実習林は黒く焼け焦げていた。

 「( ゜д゜)」

 誰も言葉を失う。

 Mr.ジャーマンだけが静かに歩いてくる。

「フィクアリー。」

 低い声だった。

「はい……。」

「誰が。」

「本気でやれと言った。」

 フィクアリーは俯く。

「ご、ごめんなさい……。」

「違う。」

 Mr.ジャーマンは怒鳴った。

「お前は威力を制御する訓練をしに来ているんだ!」

「味方がいる場所で最大火力を撃つ馬鹿があるか!」

「実戦なら今ので全滅だ!」

「仲間も!」

「依頼人も!」

「守るはずの街も全部吹き飛んでいる!」

 フィクアリーの目から涙がこぼれる。

「……はい。」

「返事だけは一人前だな。」

 Mr.ジャーマンは深くため息をついた。

「放課後。」

「始末書五枚。」

「それから実習林の復旧作業だ。」

「天城、アイランド。」

「お前たちも連帯責任。」

「えぇぇぇ!?」

 アイランドが思わず叫ぶ。

 天城も苦笑いするしかなかった。

 実習林に立ち込める焦げた匂いの中。

 三人の初めてのチーム実習は、予想もしない形で幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。