第72話 チームワーク①
実習林。
木々が生い茂る森の中には、木製の人形や結界で守られた標的が点在している。
Mr.ジャーマンは全班を見渡した。
「今日は魔物との実戦ではない。」
「各班の連携を確認する。」
「一番大切なのは個人の強さじゃない。」
「仲間を信じられるかだ。」
各班が順番に実技を開始する。
その中でも、一際注目を集めている班があった。
「次。」
「石破班。」
実習場が少しざわつく。
「去年の飛び級最強班だ。」
「石破先輩のところか。」
三人が前へ出る。
三年。
石破武。
二年。
鳴神春香。
二年。
煙道正道。
Mr.ジャーマンが開始を告げる。
「始め!」
開始と同時。
煙道が両手を前へ突き出した。
「蒸気展開。」
大量の白い蒸気が一気に森へ広がる。
視界は完全に真っ白。
「見えない!」
「敵なら何も分からないぞ。」
煙道はさらに炎魔法を重ねる。
蒸気が高温となり、森全体が灼熱の霧に包まれた。
その中を、一筋の雷が駆け抜ける。
「雷迅」
鳴神春香の身体が青白い雷へ変わる。
肉体は雷そのものとなり、木々の間を一瞬で駆け抜けた。
ズバッ。
ズバッ。
ズバッ。
標的が次々と切り裂かれる。
「速い!」
「全然見えない!」
煙道は蒸気を自在に操り、標的の退路を塞ぐ。
視界を奪い。
熱で動きを鈍らせ。
そこへ鳴神が雷速で飛び込む。
まさに理想的な連携だった。
天城は思わず呟く。
「役割が完全に決まってる……。」
アイランドも感心する。
「煙道が援護。」
「鳴神が決める。」
「すごいです。」
しかし。
実習用の標的が突然、強力な防御結界を展開した。
鳴神が一瞬足を止める。
「っ!」
その瞬間だった。
石破が前へ出る。
「lim→0」
魔法陣は現れない。
杖も振らない。
ただ静かに呟くだけ。
次の瞬間。
標的を覆っていた結界が音もなく消えた。
「今だ。」
「はい!」
煙道が巨大な炎を放つ。
蒸気爆発。
標的の動きが止まる。
その隙を鳴神が逃さない。
「はぁぁぁっ!」
雷となった拳が標的を貫いた。
轟音。
木製人形は粉々に砕け散る。
実習場から歓声が上がる。
「完璧……。」
「三人とも無駄がない。」
天城は石破を見つめる。
(石破先輩は前へ出ない。)
(二人を信じて任せてる。)
(でも。)
(危険になった瞬間だけ、自分が全部片付ける。)
まるで保護者だった。
二人が自由に戦えるように。
絶対に危険な状況だけは作らせない。
煙道も鳴神も、そのことを理解している。
だから迷わず攻められる。
Mr.ジャーマンは静かに頷いた。
「いい連携だ。」
「石破。」
「お前は前衛じゃないな。」
「指揮官だな。」
石破は苦笑した。
「二人が優秀なんです。」
「私は保険ですよ。」
鳴神が笑う。
「先輩がいるから思い切り突っ込めるんです。」
煙道も大きく頷いた。
「俺もです!」
「後ろに石破先輩がいると思うと、負ける気がしません!」
Mr.ジャーマンは腕を組む。
「理想的だ。」
「前衛は攻めることだけ考えろ。」
「後衛は全体を見る。」
「互いを信じる。」
「これがパーティーというものだ。」
天城は石破班を見つめながら、小さく拳を握る。
(強いだけじゃない。)
(信頼で繋がっている。)
(これが……学院最強のチーム。)
次はいよいよ、天城たちの班の番だった。




