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第71話 野外調査実習

 二学期が始まり、天城理人は新しい実習棟へ向かっていた。

 今日から始まる新科目。

 野外調査実習。

 学院の外にある実習林やダンジョンで魔物と戦い、生存技術や連携を学ぶ授業である。

 実習場へ入ると、一人の男が腕を組んで待っていた。

 金髪を後ろへ撫でつけ、長いコートを羽織った中年教師。

 男は大きく両手を広げる。

「グーテンモルゲン!」

 生徒たちは顔を見合わせる。

「……?」

 男は満足そうに頷いた。

「私のことは!」

「Mr.ジャーマンと呼びたまえ!」

 教室が静まり返る。

「本名は黒板に書いてある。」

「だが覚えなくていい!」

「私はMr.ジャーマンだ!」

 誰かが小さく笑う。

 しかし次の瞬間。

 男の表情が一変した。

「だが。」

「実習中にふざければ死ぬ。」

「森も。」

「ダンジョンも。」

「魔物は待ってくれない。」

 その鋭い眼差しだけで、生徒たちは背筋を伸ばした。

「面白く授業はする。」

「だが甘やかしはしない。」

「命に関わるからだ。」

 静まり返った実習場で、Mr.ジャーマンは満足そうに頷く。

「よし。」

「今日はパーティー発表だ。」

 巨大スクリーンへ名前が映し出される。

「野外調査実習では。」

「三年生一人。」

「二年生二人。」

「この三人で半年間行動してもらう。」

「互いの命を預ける仲間だ。」

「しっかり覚えろ。」

 天城は自分の名前を探す。

 そして。

「……あ。」

 そこにはこう書かれていた。

三年 フィクアリー・パール

二年 天城理人

二年 アイランド・アームストロング

「よろしく。」

 聞き慣れた声がした。

 振り向くと、長い水色の髪を揺らした少女が立っていた。

 フィクアリー・パール。

 魔法大祭準決勝で天城と戦った三年生。

 水魔法を主軸としながら、属性変換を自在に扱う天才。

 名門パール家の出身でありながら、「落ちこぼれ」と呼ばれ続けてきた少女だった。

「よろしくお願いします。」

 天城が頭を下げる。

 フィクアリーは小さく微笑んだ。

「天城くんは強かった。」

「だから安心。」

 その笑顔の奥には、どこか影があった。

 魔法大祭の時と同じ。

 どこか無理に笑っているような表情だった。

 その時。

 ドスン。

 地面が揺れた。

「よろしくお願いします!」

 身長二メートル近い大男が元気よく頭を下げる。

 アイランド・アームストロング。

 身体強化魔法の名門、アームストロング家の出身。

 準々決勝ではフィクアリーに敗れたものの、その破壊力は学院屈指。

 一撃なら誰にも負けないと言われる魔法使いだった。

「アイランドです!」

「よろしくお願いします!」

 天城も笑顔になる。

「よろしく。」

 アイランドは照れくさそうに頭を掻いた。

「僕、頭はあまり良くないんです。」

「でも仲間を守ることだけは誰にも負けません!」

 フィクアリーが少しだけ笑う。

「頼もしい。」

 Mr.ジャーマンが三人の前へ来た。

「今年の実習内容は実戦だ。」

「今日は実習林で連携確認を行う。」

「魔物との戦闘はまだない。」

「まずは互いの戦い方を知れ。」

 三人は頷く。

「はい!」

 先生は腕時計を見る。

「十分後。」

「実習林へ移動開始。」

「そこでお前たちのチームワークを見せてもらう。」

 そう言い残し、次の班へ向かっていった。

 アイランドは大きく息を吸う。

「頑張りましょう!」

「僕が前衛をやります!」

 フィクアリーも静かに頷く。

「私は支援。」

「属性変換で状況に合わせる。」

 二人の視線が天城へ向く。

 天城は少し考え、答えた。

「僕は後ろから状況を見ます。」

「叡智の瞳で敵を解析して、弱点を探します。」

 三人は互いに頷き合う。

 まだ出会ったばかり。

 それでも、この先半年間。

 命を預け合う仲間になる。

 その最初の一歩が、今始まろうとしていた。

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