第65話 全国魔法学院連盟 飛行魔法大会①
魔法大祭から数週間後。
学院には再び大きな行事が訪れていた。
全国魔法学院連盟・飛行魔法大会。
昨年は学院襲撃事件の影響で中止となったため、二年ぶりの開催である。
会場となる巨大競技場には、全国各地から生徒や教師、観客が集まっていた。
実況の声が会場へ響き渡る。
「皆様、お待たせしました!」
「全国魔法学院連盟・飛行魔法大会、まもなく開幕です!」
巨大スクリーンにはアスフェルダム王国の地図が映し出される。
「本大会には、王国内すべての魔法学院が参加!」
「さらに通信制教育機関である魔法ゼミナールの代表選手も加わります!」
観客席から歓声が上がる。
「優勝者には、隣国レグナス共和国代表との国際交流戦への出場権が与えられます!」
その言葉だけで会場の熱気はさらに高まった。
レグナス共和国。
かつて王国だった隣国。
王の死去により、現在は共和国として新たな体制を築いている国である。
その国内でも選び抜かれた飛行魔法の使い手と戦える。
魔法使いにとって、これ以上ない名誉だった。
応援席。
天城理人、神埼おと、石破武、ニューゴン先生たちも観客席へ座っていた。
「今年は無事に開催できて良かったですね。」
神埼おとが微笑む。
「ああ。」
石破も静かに頷く。
「去年は大会どころじゃなかったからな。」
ニューゴン先生は懐かしそうに笑った。
「平和が一番じゃ。」
その時だった。
グラウンドへ一人の男子生徒が姿を現す。
場内が一気に沸いた。
「おおおおおっ!」
「成田ー!!」
「世界記録保持者!」
実況も興奮を隠せない。
「本学院代表!」
「飛行魔法世界記録保持者!」
「成田翔平選手です!」
成田は歓声へ軽く手を振る。
その表情には余裕があった。
天城は思わず身を乗り出す。
「成田先輩……。」
魔法大祭では神埼おとに一瞬で敗れた。
しかし。
それは戦闘魔法の話。
飛行魔法となれば話は別だった。
「飛行だけなら学院最強。」
石破が静かに言う。
「いや、この国でもトップクラスだ。」
神埼おとも頷く。
「魔法大祭では相手が悪かっただけです。」
「本来なら優勝候補でした。」
実況が続ける。
「それでは今年のコースをご紹介しましょう!」
巨大スクリーンへコース図が映し出される。
「総距離――六十万メートル!」
会場がどよめく。
「最初の五十キロはポジション争い!」
「続く三百キロは高低差二百キロにも及ぶ『大彗星の丘』!」
「空気すら消える宇宙空間付近を飛び続ける、最大のスタミナ勝負です!」
映像には雲を突き抜け、宇宙へ駆け上がるコースが映る。
「その後は十五万メートルの超高速急降下!」
「ソニックブームによる乱気流をどう攻略するか!」
「さらに三十キロのフォルスストレート!」
「焦って仕掛ければ、最後の大カーブでコースアウト!」
「そして最後は七十キロ!」
「風圧結界が解除されるオープンストレッチ!」
「残った魔力をすべて使った最終決戦です!」
観客席から歓声が響く。
「面白そう!」
「今年も荒れるぞ!」
天城も興奮していた。
「すごい……。」
「十五分間ずっと全力なんですね。」
ニューゴン先生は笑う。
「飛行魔法は速度だけじゃない。」
「魔力量。」
「魔力制御。」
「空気抵抗。」
「位置取り。」
「全部が勝負じゃ。」
スタート地点では選手たちが整列を始めていた。
成田も静かに目を閉じる。
周囲には全国各地の強豪たち。
誰一人として油断している者はいない。
応援席では学院の生徒たちが立ち上がる。
「いくぞー!」
「せーの!」
全員の声が一つになる。
「フレー! フレー!」
「な・り・た!」
「フレー! フレー!」
「な・り・た!」
天城も全力で声を張り上げる。
「頑張れー!!」
成田は小さく拳を握り、応援席へ向かって親指を立てた。
やがて。
選手たちを包んでいた光の壁が静かに輝き始める。
実況が声を張り上げた。
「間もなくスタートです!」
全国最速を決める十五分間。
その幕が、今まさに上がろうとしていた。




