第56話 準々決勝②
準々決勝第二試合。
実況の声が闘技場に響く。
「三年・フィクアリー・パール!」
「対するは!」
「二年・アイランド・アームストロング!」
大歓声。
フィクアリーは短い杖を静かに握る。
対するアイランドは腕を鳴らしながら笑った。
「遠距離戦は苦手なんでね。」
「最初から全力で行く!」
審判が旗を振る。
「始め!」
開始と同時。
アイランドの身体が光る。
「身体強化!」
爆発的な脚力。
闘技場の石畳を砕きながら一直線に駆け出した。
狙いはただ一つ。
魔法を展開される前に決着をつける。
しかし。
フィクアリーは慌てることなく数枚の術式紙へ魔力を流した。
次の瞬間。
無数のシャボン玉が闘技場中へ浮かび上がる。
「来ました!」
「フィクアリー選手の泡魔法です!」
赤。
青。
緑。
様々な色の泡が空中を漂う。
アイランドは勢いを緩めない。
拳を振るう。
風圧だけで何個もの泡を避けながら距離を詰めていく。
「近付けば勝ちだ!」
その瞬間。
拳から生じた風圧が一つの泡へ触れた。
パチン。
小さく割れる。
誰も気に留めなかった。
しかし。
割れた泡の中心が白く輝く。
「……?」
アイランドが目を見開いた。
直後。
轟ッ!!
凄まじい爆発が起こった。
さらに。
その衝撃で周囲の泡が次々と弾ける。
パチン。
パチン。
パチン。
一つ割れるたびに爆発。
その爆発が新たな泡を割る。
連鎖。
連鎖。
連鎖。
まるで核分裂のように、爆発が際限なく広がっていく。
闘技場全体が白煙に包まれた。
「な、何だこれは!」
「連続爆発だ!」
実況も叫ぶ。
轟音が止み、煙が晴れていく。
そこには。
場外まで吹き飛ばされたアイランドの姿があった。
服は焦げ、全身煤だらけ。
それでも四肢は無事だった。
身体強化によって致命傷だけは免れていた。
アイランドは苦笑しながら空を見上げる。
「……参った。」
「当たったら終わりだったな。」
審判が旗を掲げる。
「場外!」
「勝者!」
「三年・フィクアリー・パール!」
会場は大歓声に包まれた。
「すごい威力だ!」
「身体強化を吹き飛ばしたぞ!」
「怖すぎる……!」
フィクアリーは観客へ一礼すると、そのまま静かに闘技場を後にした。
◇ ◇ ◇
選手控室。
一人一部屋用意された静かな部屋。
フィクアリーは椅子へ腰掛ける。
しばらく俯いていたが、小さく息を吐いた。
「……まだ。」
握った拳に力が入る。
「まだ足りない。」
視線は次の試合表へ向く。
「絶対に負けられない。」
その瞳には、先ほどまでの穏やかな貴族令嬢の面影はなかった。
静かに燃えるような執念だけが宿っていた。




