第51話 第六試合
魔法大祭トーナメントもいよいよ終盤へ近づいていた。
「第六試合!」
「三年・ライト・エリダヌス!」
「対するは!」
「三年・アイザ・エレスト!」
両者が闘技場へ入る。
ライト・エリダヌス。
星天魔法の名門、エリダヌス家の天才。
そしてアイザ・エレスト。
この国、アスフェルダム王国の王女。
かつて国を築いた皇帝ジェニス・エレストの血を引く存在。
会場は大きな歓声に包まれた。
「王女様だ!」
「エレスト家の魔力量は別格だぞ!」
アイザは赤い髪を揺らしながら笑う。
「楽しませてね。」
ライトも微笑む。
「こちらこそ。」
互いに杖は持っていない。
今回のような大会では、相手を事前に分析して魔法を組み立てられるため、二年生以上でもあえて術式紙を使う者は多い。
「開始!」
最初に動いたのはライトだった。
数枚の術式紙を展開する。
「流れを見る。」
水が空中へ浮かび、星のような光が広がる。
星天魔法。
未来を見る魔法ではない。
膨大な可能性の中から、最も確率の高い流れを読み取る魔法。
統計。
確率。
観測。
それを戦闘へ応用したものだった。
アイザが炎魔法を放つ。
しかし。
「そこ。」
ライトが一歩横へ動く。
直後、炎が通り過ぎる。
「次は右。」
土槍が飛ぶ。
それも避ける。
観客席が沸く。
「全部読んでる!」
「未来予知じゃないのに!」
ライトは水魔法で攻撃を組み立てる。
水流を刃に変える。
アイザの動きを制限する。
しかし。
アイザも圧倒的だった。
土壁。
炎弾。
地面の隆起。
一つ一つの魔法の威力が異常に高い。
ライトは避ける。
分析する。
弱点を探す。
だが。
(魔力量が多すぎる。)
(攻撃の選択肢が多い。)
星天魔法は最も可能性の高い行動を読む。
しかし、選択肢そのものが多すぎれば対応しきれない。
アイザは笑う。
「すごいね。」
「私の攻撃、全部避けてる。」
「でも。」
大量の術式紙を取り出す。
「避ける場所をなくせばいい。」
会場の空気が変わった。
アイザの魔力が膨れ上がる。
「エレスト家の本気だ!」
巨大な魔法陣が展開される。
土。
炎。
大量の魔力が一点へ集まっていく。
ライトは星天魔法を見る。
そして理解する。
(避けられない。)
(どの未来でも。)
アイザの魔法は、狙って当てるものではない。
範囲そのものを支配する魔法だった。
「いくよ。」
「皇土炎壁。」
地面が割れる。
巨大な土塊がライトの周囲を囲む。
さらに内部には高熱の炎が流れ込む。
完全な隔離。
「逃げ道がない!」
観客席から歓声が上がる。
ライトは水魔法で防ぐ。
しかし。
土壁は破壊してもすぐ再構成される。
魔力量が違いすぎる。
「すごい……。」
「王女の力……。」
ライトは最後まで流れを読む。
しかし。
見える未来の全てで同じ結果になる。
土の檻が少しずつ動く。
ライトごと押し出していく。
場外へ。
最後の一瞬。
アイザがさらに魔力を込める。
「これで終わり。」
巨大な土の塊がライトを包み込み、そのまま闘技場の外へ押し出した。
審判が旗を上げる。
「場外!」
「勝者!」
「三年・アイザ・エレスト!」
会場が大歓声に包まれる。
「すげぇ!」
「未来を読む魔法でも止められないのか!」
ライトは土壁から出ると、笑いながら手を上げた。
「完敗。」
「最後まで一番勝率の高い未来を探したけど。」
「全部、君が勝っていた。」
アイザも笑う。
「あなたの魔法、本当に厄介だったよ。」
二人は握手を交わす。
理人はその試合を見ながら考えていた。
(ライト先輩は未来を見ているわけじゃない。)
(可能性を計算している。)
(でもアイザ先輩は、その可能性ごと力で潰した。)
技術。
知識。
才能。
そして圧倒的な魔力量。
魔法の強さには、様々な形がある。
魔法大祭は、それを改めて証明する大会だった。




