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第5話 魔法式学

国立魔法学院。

天城理人の異世界で初めての授業が始まった。

教室に入ると、そこには大きな黒板と、見たことのない道具が並んでいた。

机の上には、小さな魔石や透明な板、そして一本の白い棒。

理人はその棒を手に取った。

「……チョーク?」

見た目は学校で使うチョークにそっくりだった。

隣の生徒が不思議そうに見る。

「君、初めて見るのか?」

「はい。まあ……」

理人は少し誤魔化した。

この世界では魔法を知らない方が珍しい。

「これは魔法筆だよ」

「魔法筆?」

「魔法式を書くための道具」

先生が教壇に立つ。

「それでは授業を始めます。本日は魔法式学の基礎です」

教室が静かになる。

「魔法とは、ただ願うだけで発動するものではありません」

先生は黒板に一つの魔法陣を書く。

「魔法とは、エネルギーを正しく変換する技術です」

理人はその言葉に少し反応した。

「エネルギー変換……」

地球の科学と似ている。

先生は続ける。

「魔法式は、魔力の流れを制御する設計図です」

「この記号はエネルギーの方向」

「この部分は変換率」

「この線は魔力経路」

黒板には複雑な記号が並ぶ。

他の生徒たちは真剣にノートへ書き写している。

理人も書こうとした。

しかし――

「……」

手が止まる。

「何これ」

知らない文字。

知らない記号。

知らない法則。

理人は少し困った顔になる。

理科なら仕組みから理解できる。

でも、初めて見るものをいきなり暗記するのは苦手だった。

「まずは覚えるしかないか……」

理人は珍しく素直にノートを取った。

先生は次に、魔法筆について説明を始めた。

「この魔法筆は普通の筆記具ではありません」

理人はチョークを見る。

「内部には粉末化した魔石と、有機触媒が含まれています」

「有機触媒……?」

理人の目が少し輝いた。

「魔石のエネルギーを利用し、描いた魔法式を一時的な回路として機能させます」

つまり、

魔法筆で魔法陣を書く。

魔石や術者自身の魔力を供給。

魔法式がエネルギー変換を行う。

魔法が発動する。

理人は考える。

「……これ、電気回路に近い」

魔法を発動させるための回路。

魔法陣は、その設計図。

「では、実際に魔法を使ってみましょう」

先生が言う。

生徒たちが少し緊張する。

「初めて扱う魔法は、最も基本的な火魔法です」

先生は床に魔法陣を描く。

円形の魔法陣。

その中央に魔石を置く。

「この形にも意味があります」

先生が説明する。

「魔法陣が円形なのは、エネルギー循環を起こしやすいからです」

「魔力は流れ続けることで安定します」

「円形構造は流れが途切れにくく、均一に力を伝えられる」

理人は魔法陣を見る。

「……なるほど」

先生は続ける。

「逆に、直線的な構造ではエネルギーが一方向に偏ります」

「制御が難しくなり、暴発の危険があります」

理人は納得した。

「配線を一本に伸ばすより、循環回路にした方が安定するってことか」

先生が少し驚く。

「今の説明だけで理解したのですか?」

「いや、似たような考え方をしただけです」

理人は普通に答えた。

いよいよ実践。

生徒たちは順番に魔法陣を書く。

そして、魔力を流す。

小さな炎が生まれる。

「おお……」

教室に歓声が上がる。

理人の番が来た。

「えっと……こうだよな」

先生の真似をして魔法陣を書く。

少し歪んでいる。

しかし、とりあえず完成。

魔石を置く。

「魔力を流してください」

言われた通りにする。

すると――

ポッ。

小さな炎が浮かんだ。

「できた……」

理人は少し驚いた。

魔法。

本当に存在する。

でも、彼の感想は少し違った。

「……不思議だけど」

炎を見る。

「これ、ちゃんと仕組みがあるんだな」

周囲の生徒は魔法が使えたことに喜んでいる。

しかし理人は別のことを考えていた。

魔法陣。

魔石。

エネルギー変換。

触媒。

まだ分からないことだらけ。

でも、一つだけ確信した。

「これ……研究したら絶対面白い」

天城理人。

異世界で初めて触れた魔法。

それは彼にとって、奇跡ではなかった。

新しい研究対象だった。

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