第4話 シラバス
王都アスフェルダムでの生活が始まって数日。
天城理人は、与えられた部屋の机に座っていた。
目の前にあるのは一冊の分厚い本。
表紙には大きな文字で書かれている。
『国立魔法学院 入学案内・学習要項』
「……」
理人は無言でページをめくる。
「やっぱり学校あるんだよな……」
異世界に来ても学校。
日本では高校生。
異世界でも学生。
運命なのか、ただの偶然なのか。
理人は少しだけため息をついた。
「まあ、生活保護を受けてる以上、教育を受ける義務があるのは普通か」
理人は魔法の世界に来たが、意外とこの国の制度はしっかりしていた。
住居。
食事。
教育。
突然現れた身元不明者でも、最低限の生活が保障されている。
「異世界ってもっと雑な世界だと思ってた」
理人は本を読み進める。
そこには、国立魔法学院の授業内容が書かれていた。
国立魔法学院。
この国に存在する魔法教育の中心機関。
魔法使いを育てる場所であり、魔法科学者を育成する研究機関でもある。
入学者は全員、必修科目を学ぶ。
まず最初は、
魔法基礎学
魔法を扱うために必要な基本分野。
その中には複数の科目が存在する。
魔法史学
魔法がどのように発見され、発展してきたのかを学ぶ授業。
古代文明から現在の魔法科学まで。
魔法の歴史を知ることで、現在の技術がどのように生まれたのかを理解する。
「歴史か……」
理人は少し嫌な顔をした。
暗記が多そうだ。
魔法理論学
魔力の流れ。
魔法発動の仕組み。
エネルギー変換。
魔法現象を理論的に説明する授業。
「これは面白そう」
理人は少し興味を持った。
魔法生物学
魔法能力を持つ生物について学ぶ。
魔法生物の進化。
魔力器官。
魔法遺伝子。
「生物系か」
理人はページを読む。
意外と地球の生物学に近い部分がある。
魔法空間学
空間魔法や転移魔法などを研究する分野。
空間の歪み。
異空間構造。
魔法による距離操作。
「……これは気になる」
自分が異世界に来た原因にも関係しているかもしれない。
魔法式学
魔法陣や術式構造を学ぶ。
魔法式は、魔法現象を発生させるための計算式。
「魔法のプログラムみたいなものか」
理人は少しワクワクした。
基礎教養
一般的な知識を学ぶ授業。
言語。
社会。
数学。
「……」
理人は視線を逸らした。
「異世界でも数学から逃げられないのか」
基礎物質学
魔法に関わる物質について学ぶ。
魔石。
魔法金属。
特殊鉱物。
魔法触媒。
「これは化学っぽい」
理人の興味が少し上がった。
そして、必修科目とは別に選択科目がある。
選択科目は、この中から二つ選ぶ。
魔法史応用・古代魔法
過去に存在した失われた魔法技術を研究する。
古代文字
古代文明が残した魔法文字を解読する。
魔法開発
新しい魔法技術や魔法道具を作る研究科目。
応用魔法生物学
魔法生物の能力を応用した技術を研究する。
魔法詠唱学
魔法発動時の言語や音声による制御を研究する。
魔法物質学
魔法に利用される物質をさらに深く研究する。
理人はしばらく考えた。
普通なら、人気がありそうな魔法詠唱学や強力な魔法を学べる科目を選ぶのかもしれない。
しかし理人が選んだのは――
「これだな」
一つ目。
魔法開発。
理由は単純。
新しいものを作るのが好きだから。
そして二つ目。
魔法史応用・古代魔法。
理由は、
「今の魔法がどうやって完成したのか知りたい」
だった。
理人は知らない。
この選択が、後に魔法文明の根本を揺るがす研究につながることを。
ただ今の理人が考えていることは、
「学校の授業についていけるかな……」
だった。
日本では理科以外が苦手だった高校生。
異世界でも、その悩みは変わらない。
魔法の世界で始まる、新しい学校生活。
天城理人の魔法科学者への第一歩が始まる。




