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第46話 第一試合

 魔法大祭二日目。

 学院最大の人気競技。

 トーナメント式対戦が始まる。

 出場者は前日の競技成績と教師陣の推薦によって選ばれた精鋭のみ。

 闘技場を埋め尽くした観客が歓声を上げる。

「それでは第一試合!」

 実況の声が響く。

「一年生代表!」

「エリカ・ローズベルク!」

 小柄な少女がゆっくりと歩いてくる。

 まだ一年生のため杖は持っていない。

 腰のポーチから数枚の紙を取り出す。

 あらかじめ魔法陣を書き込んだ術式紙。

 一年生はそこへ魔力を流して魔法を発動する。

「対するは!」

「三年生!」

「コスモ・ザクレ!」

 歓声がさらに大きくなる。

 三年生の中でも圧倒的な火力を誇る実力者。

 右手の杖を軽く回しながら闘技場へ入る。

「宇宙魔法のコスモ先輩だ!」

「一年じゃ勝てないだろ。」

 両者が向かい合う。

「始め!」

 試合開始。

 エリカはすぐに一枚目の術式紙へ魔力を流す。

 地面から一斉に植物が芽吹いた。

「植物魔法!?」

 観客席がどよめく。

 蔦が伸び、花が咲き、樹木が瞬く間に闘技場を埋め尽くす。

「一年生で植物魔法だと!」

 実況も驚きを隠せない。

 理人も目を見開いた。

(植物魔法……?)

(そんなはずはない。)

 授業で習った。

 植物魔法は神話時代の勇者が使ったとされる伝説級魔法。

 文献も曖昧で、現在では存在しないと結論付けられている。

(なのに……。)

 コスモは笑う。

「面白い。」

 杖を掲げる。

「重力圧縮。」

 空間が歪む。

 目の前の植物が一瞬で押し潰される。

 地面ごと陥没した。

 しかし。

 次の瞬間には別の方向から巨大な木が生えてくる。

「数が多い!」

 コスモは斥力魔法で吹き飛ばす。

 蔦が襲う。

 重力で潰す。

 花が咲く。

 爆散させる。

 終わらない。

「厄介だな。」

 コスモは距離を取る。

「ならまとめて消す。」

 杖の先へ膨大な魔力が集まる。

「重力崩壊。」

 闘技場中央へ超高密度の重力球が現れた。

 周囲数十メートルの植物がまとめて押し潰される。

 歓声が上がる。

「決まった!」

 だが。

 植物は再び生え始める。

「まだあるのか!」

 コスモは舌打ちした。

 一方のエリカは静かだった。

 新しい術式紙へ魔力を流す。

 木々がさらに増えていく。

 観客席では。

「植物魔法って魔力消費すごいんじゃないか?」

「一年生なのに化け物だ……。」

 誰も疑わない。

 それが本物だと信じていた。

 理人だけが首を傾げる。

(何かおかしい。)

(魔力の流れが……。)

 しかし叡智の瞳でも違和感の正体までは掴めない。

 試合は長引いた。

 コスモは強い。

 一撃一撃で森を吹き飛ばしていく。

 だが。

 次々と植物が現れる。

 押しても押しても前へ進めない。

「なら。」

 コスモは深呼吸する。

「終わらせる。」

 杖が眩く輝いた。

 闘技場全体が震える。

 空気が熱を帯びる。

「奥義――」

 空高く巨大な魔法陣が展開される。

「落ちろ。」

 大地がえぐれた。

 岩石が浮き上がる。

 土砂を巻き込みながら巨大な球体へ変化していく。

 まるで小さな隕石だった。

「すごい……。」

 観客席が息を呑む。

 コスモは杖を振り下ろした。

「流星墜。」

 隕石が轟音を上げて落下する。

 森を飲み込み。

 闘技場を砕き。

 一直線にエリカへ。

 命中した。

 土煙が舞い上がる。

「終わった!」

 誰もがそう思った。

 しかし。

「……いない。」

 コスモの表情が変わる。

 土煙の中。

 エリカの姿はなかった。

 その瞬間。

 審判の声が響く。

「そこまで!」

 コスモの杖から光が消える。

 膝をついた。

「魔力切れ……。」

 最後の奥義で魔力を使い果たしたのだ。

 その背後。

 木陰からエリカが静かに姿を現す。

「勝者。」

「一年、エリカ・ローズベルク!」

 会場が大歓声に包まれた。

「一年生が三年生を倒した!」

「大金星だ!」

 エリカは静かに礼をする。

 理人は試合を見つめたまま考えていた。

(植物魔法……。)

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