↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/112

第45話 魔法大祭

 魔法学院最大の祭典――魔法大祭が開幕した。

 学院中の生徒が集まり、一年間磨き上げた技術を競い合う、年に一度の大イベント。

 しかし、今年は例年とは空気が違っていた。

 学院の上空には、幾重にも重なる巨大な魔法陣。

 校舎や闘技場を覆う結界が淡く輝いている。

 司会の教師が説明を始めた。

「昨年の襲撃事件を受け、本大会は厳戒態勢で実施します。」

「結界は一秒ごとに術式が変化します。」

 黒板代わりの大型魔法陣に結界構造が映し出される。

「事前登録されていない召喚魔法は、この結界内では発動できません。」

「さらに外部からの侵入魔法も自動で遮断されます。」

 観客席から感嘆の声が漏れる。

「今年は絶対に同じ悲劇を繰り返しません。」

 教師のその言葉に、生徒たちは静かに頷いた。

 開会式が始まる。

 学院長が演台へ立つ。

「まず初めに。」

「昨年の襲撃事件により命を落とされた生徒。」

「一年生、マリー・メイスキーさんへ黙祷を捧げます。」

 会場全体が静まり返る。

 誰一人として声を発しない。

 理人も静かに目を閉じた。

(マリー……。)

 左目へそっと手を添える。

 叡智の瞳。

 彼女から受け継いだ力。

(今年は必ず、誰も死なせない。)

 静かに安全を祈る。

「黙祷。」

 会場には風の音だけが流れていた。

 今年の競技は四種目。

・五キロメートルマラソン

・お題競争

・必殺技披露

・トーナメント式対戦

 初日は対戦以外の三競技が行われる。

五キロメートルマラソン

 スタートの合図と同時に百人以上の生徒が飛び出した。

 身体強化魔法。

 風魔法。

 地面を滑る魔法。

 様々な方法で加速していく。

 しかし。

 先頭へ躍り出たのは、一年生だった。

「一年の岡崎だ!」

 岡崎振護。

 代々受け継がれてきた古代魔法の使い手。

「発動。」

 その瞬間。

 身体が波のように揺らいだ。

 空気中の振動へ溶け込むように加速していく。

「何だあれ!」

「速すぎる!」

 誰も追いつけない。

 原理は現在も未解明。

 岡崎家へ代々伝わる古代魔法。

 『自身を波にする魔法』

 五キロを独走し、そのまま優勝した。

お題競争

 今年のお題。

「土魔法で最も精巧な作品を制作せよ。」

 制限時間十分。

 各選手が一斉に魔法を展開する。

 その中でも一際目立ったのは二年生。

 アロシス・ウェゲリオ。

 土塊がまるで粘土のように形を変えていく。

 削る。

 磨く。

 組み立てる。

 十分後。

 完成したのは、今にも動き出しそうな巨大な竜の彫刻だった。

 審査員全員が満点をつける。

 優勝。

 アロシス・ウェゲリオ。

必殺技披露

 理人は去年と同じ種目へ出場した。

 名前を呼ばれる。

「二年。」

「天城理人。」

 歓声が上がる。

 理人は静かに薙刀を構えた。

 深く息を吸う。

「天弓。」

 巨大な魔法陣が空へ広がる。

「雷轟。」

 周囲に散らばった砂鉄が浮き上がる。

 空気が震える。

「光の柱で貫きたまえ。」

 轟音。

 超高速まで加速された鉄片が一直線に射出される。

 観客席から歓声が湧き上がる。

「すげぇ!」

「去年より速い!」

「物理魔法か!」

 巨大な鋼鉄板を容易く貫通し、そのまま遥か後方の標的まで撃ち抜いた。

 拍手が鳴り響く。

 しかし。

 最後に登場した三年生。

 石破武。

 三年連続表彰台入りを果たしている学院最強クラスの実力者。

 石破は静かに右手を前へ出す。

「去年準優勝だった魔法。」

「完成形をお見せしましょう。」

 空間が歪む。

 目の前へ一本の線が現れた。

 次の瞬間。

 何も音がしないまま。

 演習場が。

 標的が。

 防御結界までもが。

 一直線に裂けた。

 切断された空間がゆっくりと元へ戻っていく。

 会場が静まり返る。

「……今。」

「空間ごと切った?」

 理人は叡智の瞳を発動した。

(違う。)

(これは空間魔法じゃない。)

(原子同士の結合を崩壊させる去年の術式……。)

(それを極限まで応用して。)

(存在そのものを一列に分断している。)

 理人は息を呑む。

(ここまで到達していたのか……。)

 審査員の札が一斉に上がる。

 満点。

 優勝。

 三年・石破武。

 準優勝。

 二年・天城理人。

 悔しさはあった。

 それでも理人は笑っていた。

(やっぱり先輩はすごい。)

(まだまだ追いつけない。)

 魔法大祭一日目は幕を閉じた。

 そして翌日。

 学院中が最も熱狂する競技。

 トーナメント式対戦が始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。