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第42話 固有能力Ⅱ

 翌日。

 二年生合同講義。

 昨日の実技演習の余韻がまだ残る教室で、レガリオスは黒板の前へ立った。

「今日は固有能力について説明します。」

 教室の空気が引き締まる。

「まず最初に、一つだけ覚えてください。」

 レガリオスは黒板へ大きく書く。

固有能力 ≠ 魔法

「これは全く別の力です。」

「魔法とは発生原理も、解析方法も違います。」

 理人は静かにノートを開く。

「皆さんは昨日、私の『起死回生』を見ました。」

 黒板へ文字が書かれる。

起死回生テセウス

「能力には必ず二つの名前があります。」

 今度は「起死回生」と「テセウス」を線で結ぶ。

「漢字は能力の系統。」

「読みは能力の本質。」

 生徒の一人が首を傾げる。

「本質?」

「例えば私の能力。」

 レガリオスは自分の腕を見る。

「『起死回生』という漢字は、生死や再生を司る能力群であることを示しています。」

「そして『テセウス』という読みが、この能力だけが持つ本質。」

「私の場合は。」

「傷付いた瞬間から再生が始まり、再生するたび身体能力と魔力量が一時的に増加する。」

「これが"テセウス"です。」

 理人は小さく呟いた。

「だから……魔法じゃ解析できなかった。」

「その通り。」

 レガリオスは頷く。

「固有能力は術式を持ちません。」

「魔力回路も存在しません。」

「詠唱も魔法陣も不要。」

「能力そのものが現象です。」

 教室が静まり返る。

「では、同じ能力を持つ人はいるんですか?」

 一人の女子生徒が質問する。

「いません。」

 即答だった。

「固有能力は全て唯一無二です。」

「完全に同じ能力は歴史上一つとして確認されていません。」

「似た能力なら?」

「あります。」

 レガリオスは頷く。

「私と同じ『起死回生』系統でも、本質が違えば全く別の能力になります。」

「つまり。」

「漢字が同じでも、読みが違えば能力は別物。」

「逆に読みが同じ能力も存在しません。」

 理人は思わず聞く。

「つまり……。」

「能力は世界に一つだけ。」

「そういうことです。」

 教室がどよめく。

「能力は生まれつき決まっているんですか?」

「はい。」

「後から変えることも、誰かに教わることもできません。」

「努力で覚えるものではなく、生まれ持った資質です。」

 レガリオスは少し間を置いた。

「もちろん、使い方は鍛えられます。」

「ですが、本質そのものが変わることはありません。」

 理人はノートへ大きく書く。

能力=唯一無二

漢字=系統

読み=本質

 レガリオスは黒板を消しながら続ける。

「勘違いされやすいのですが、固有能力は魔法より強いという訳ではありません。」

「魔法と能力は比較対象ではないのです。」

「剣と弓を比べるようなもの。」

「戦い方が違う。」

「だからこそ。」

 レガリオスは教室全体を見渡した。

「能力に頼る者は、魔法で敗れます。」

「魔法だけを極めた者は、能力に敗れることもあります。」

「重要なのは、自分の力を理解すること。」

 理人は昨日の戦いを思い出していた。

(魔法では説明できない。)

(でも、だからといって魔法が無意味になる訳じゃない。)

(別の理が存在するだけなんだ。)

 レガリオスは静かに教科書を閉じる。

「次回からは、魔法と固有能力がどのように共存しているのかを学びます。」

 チャイムが鳴る。

 理人はノートを閉じながら、小さく呟いた。

「魔法だけじゃ、この世界は語れないんだな……。」

 彼の探究心は、ますます強く燃え始めていた。

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