第41話 現代最強の魔法使い
二年生実技演習。
闘技場へ向かうと、先生の隣には一人の女性が立っていた。
銀色の長髪に、落ち着いた雰囲気。
しかし、その場にいるだけで空気が張り詰める。
「本日の特別講師です。」
「レガリオス・ルーシー先生。」
生徒たちが一斉に拍手する。
「なお、レガリオス先生はホモ=サビンヌという種族です。」
教室がざわつく。
「ホモ=サピエンスとは近縁種であり、この世界では珍しくありません。」
「種族ごとに魔法への適応性が異なり、ホモ=サビンヌは魔法への進化速度が速いことで知られています。」
レガリオスは一歩前へ出る。
「今日の課題は簡単。」
「私を一度でもダウンさせてください。」
「全員で、ではありません。」
「一人ずつ。」
「制限時間は五分です。」
生徒たちは顔を見合わせる。
「先生一人?」
「はい。」
「私はここから動きません。」
その言葉に笑いが起きた。
「そんなわけ……。」
最初の挑戦者が前へ出る。
炎魔法。
氷魔法。
風魔法。
どれも届く前に消され、一撃で敗北する。
「次。」
次々と倒されていく。
一歩も動かないまま。
そして。
「天城理人。」
「はい。」
理人は薙刀を構える。
柄に刻まれた魔法陣が青白く輝く。
深く息を吸い、詠唱する。
「天弓。」
空中へ巨大な魔法陣が展開される。
「雷轟。」
周囲の砂鉄が震え始める。
「光の柱で貫きたまえ。」
轟音。
超高速で放たれた鉄片が一直線に飛ぶ。
レールガン。
理人が完成させた物理魔法。
直撃。
確かにレガリオスの腕を貫いた。
「やった!」
そう思った瞬間だった。
傷口が光る。
肉が繋がる。
骨が再生する。
瞬きをする間もなく、腕は元通りになっていた。
「……え?」
理人は目を見開く。
(幻影魔法?)
すぐさま叡智の瞳を発動する。
解析。
魔力の流れ。
術式。
幻覚反応。
――存在しない。
(本物だ。)
(本当に再生してる。)
理人は磁場を操る。
砂鉄を刃へ変え、四方八方から攻撃する。
さらに自らの身体へ微弱な電流を流し、神経伝達速度を高める。
身体強化。
一気に間合いを詰める。
薙刀が閃く。
しかし。
止められた。
レガリオスは片手で刃を受け止める。
服には傷一つ付いていない。
「いい魔法ですね。」
「ですが。」
「まだ甘い。」
一瞬。
理人の手から薙刀が消えた。
「しまっ……!」
気付いた時には、薙刀はレガリオスの手にあった。
「終了です。」
柄で軽く肩を叩かれる。
「勝者、レガリオス。」
理人は苦笑するしかなかった。
結局。
全員が挑戦した。
誰一人として。
レガリオスを一歩も動かすことはできなかった。
実技終了後。
理人はどうしても気になり、質問した。
「先生。」
「あの再生は魔法なんですか?」
レガリオスは少し考え、微笑む。
「違います。」
「私の固有能力です。」
「名前は――」
黒板へ一文字ずつ書かれる。
起死回生
「読み方はテセウス。」
理人は息をのむ。
「攻撃を受けると、その瞬間から再生が始まります。」
「そして。」
「再生するたびに身体能力も魔力量も一時的に上昇します。」
「つまり。」
「攻撃されるほど強くなる能力です。」
教室が静まり返る。
理人は叡智の瞳で見ても、その原理を理解できなかった。
(……分からない。)
(魔法じゃない。)
(物理でも説明できない。)
初めて目の当たりにした。
理を超えた力。
固有能力とは、魔法とは全く別の存在。
その事実に、理人の胸は恐怖ではなく、強い探究心で満たされていた。
(能力とは、一体何なんだ……。)
彼は静かに拳を握りしめた。




