第37話 研究施設
二年生の実習。
今日は学院地下にある研究施設の見学だった。
普段は立ち入り禁止区域。
厚い金属扉の前には武装した警備隊が立ち、何重もの結界が張られている。
「厳重だ……。」
理人が思わず呟く。
先生は静かに頷いた。
「当然です。」
「ここには国家レベルの重要物が保管されています。」
認証を終え、巨大な扉がゆっくりと開く。
地下には想像以上に広い研究施設が広がっていた。
魔法解析室。
細胞保存室。
古代魔法資料室。
魔鉱石研究棟。
まるで一つの研究都市だった。
「まず最初に。」
先生は立ち止まる。
「皆さんも知っていると思いますが、去年この施設は襲撃を受けました。」
空気が少し重くなる。
「魔法大祭の最中、学院では大量の魔物が召喚されました。」
「その混乱の裏で、この施設へ侵入者が入りました。」
壁には壊された扉の写真が残されていた。
「幸い施設は復旧しましたが……。」
「禁術書数冊。」
「そして禁忌指定特級保管物。」
先生は一瞬言葉を止める。
「特殊細胞サンプル『◼️◼️』。」
「以上が盗まれています。」
「現在も行方は分かっていません。」
理人は思わず息をのんだ。
「そこまで重要な物だったんですか……。」
「国家機密です。」
「名称すら公開できません。」
一行は最初の保管室へ入る。
巨大な本棚には分厚い本が並んでいた。
「こちらは禁術書です。」
ガラスケース越しに一冊ずつ展示されている。
説明板には危険性だけが書かれていた。
『DNAを上書きする魔法』
『魔導核成分を分解する魔法』
『相手の装備を強制的に奪う魔法』
理人は目を丸くする。
「全部使えたら危険ですね……。」
「ええ。」
「どれも犯罪利用の危険性が極めて高いため、禁術指定されています。」
さらに奥へ進む。
そこには透明な保存容器が並んでいた。
「こちらは希少魔物の細胞サンプルです。」
巨大な竜。
絶滅した魔獣。
神話にしか登場しない生物。
あらゆる細胞が保存されている。
次の部屋では、人名が並んでいた。
「こちらは歴史上の固有能力保持者の細胞サンプルです。」
ケースには等級が表示されている。
二級保管物。
一級保管物。
特級保管物。
そして、一番奥。
黒い扉の向こうには赤文字で書かれていた。
禁忌指定特級保管物
「禁忌指定……。」
先生が説明する。
「通常、保管物に禁忌指定は付きません。」
「ですが、人類へ甚大な危険を及ぼす可能性がある物だけは特別です。」
「それらだけが『禁忌指定』と呼ばれます。」
当然、その部屋へ入ることは許されなかった。
最後に案内されたのは巨大な空洞だった。
「……大きい。」
理人は言葉を失う。
中央には山ほどもある巨大な魔鉱石。
虹色の光がゆっくり脈動している。
「こちらは王都近郊へ魔力を供給している魔鉱石です。」
「都市結界。」
「街灯。」
「転移装置。」
「公共魔法設備。」
「それらの基幹魔力源となっています。」
生徒たちは圧倒される。
「こんな大きな魔鉱石があるなんて……。」
先生は静かに頷いた。
「学院は教育機関であると同時に、魔法研究の最前線でもあります。」
「皆さんも将来、この施設で研究する日が来るかもしれません。」
見学を終え、理人は最後にもう一度研究施設を振り返る。
世界最先端の魔法。
歴史の遺産。
そして、人類がまだ解き明かせていない数々の謎。
そのすべてが、この地下で静かに眠っていた。




