第31話 魔道具づくり
二年生最初の実習。
教室へ入ると、先生は一つの木箱を教卓へ置いた。
「今日から魔道具製作を始めます。」
教室がざわつく。
「魔道具は卒業まで使い続ける相棒です。」
「一生物になる人もいます。」
「だからこそ、材料選びから自分の手で行います。」
黒板に今日の目的地が書かれる。
第三層ダンジョン 魔鉱石採取場
「今日は各自、自分だけの魔鉱石を採取してください。」
「ただし。」
「第三層は今までとは違います。」
「魔物も強くなります。」
「遭遇した場合は各自で対処し、危険ならすぐ救援を呼ぶこと。」
その後、一行はダンジョンへ向かった。
第三層。
壁には無数の魔鉱石が埋まっている。
採掘の音があちこちで響いた。
「このくらいでいいかな。」
「俺は赤いのが欲しい。」
皆が手近な魔鉱石を採っていく。
しかし理人だけは立ち止まっていた。
(もっといいものがある気がする。)
叡智の瞳で周囲を見渡す。
すると奥の暗闇で、一つだけ強く魔力を放つ反応が見えた。
「……あれだ。」
理人は一人、さらに奥へ進む。
そこには人の頭ほどもある、大きな青い魔鉱石が静かに輝いていた。
「大きい……。」
普通の魔鉱石と比べても一回り以上大きい。
青色もどこか深く、吸い込まれるような光を放っている。
理人は知らない。
魔鉱石は生成環境によって色や形が変わる。
そして、この鉱石だけは少し特別な存在だったことを。
「これにしよう。」
理人は慎重に掘り出し、背負い袋へしまう。
「よし、戻るか。」
ベースキャンプへ向かい始めた、その時だった。
ガァァァァ!!
洞窟に咆哮が響く。
「!」
岩陰から大型の魔物が飛び出した。
理人へ気付くや否や、魔法陣を展開する。
「速い!」
先手を取られた。
火球が一直線に迫る。
避けるには遅い。
「絶対防御」
理人は咄嗟に魔法を展開した。
目立った光はない。
壁も盾も現れない。
ただ。
飛来していた火球が、理人の目の前で音もなく消えた。
まるで最初から存在しなかったかのように。
魔物が一瞬動きを止める。
絶対防御。
かつて神話時代、魔王が使用した防御魔法。
相手の魔法と同等の魔力を瞬時にぶつけ、魔法そのものを中和・消滅させる超高等技術。
派手さはない。
しかし、防御性能は極めて高い。
「今度はこっちの番だ。」
理人は右手を前へ突き出した。
「天弓。」
足元の鉄鉱石が浮かび上がる。
「雷轟。」
青白い電撃が走り、磁場が形成される。
「光の柱で貫きたまえ。」
バチィィィィン!!
轟音が洞窟を揺らした。
鉄鉱石は光の筋となって一直線に飛び、魔物の胸を貫く。
魔物は数歩よろめき、そのまま崩れ落ちた。
静寂が戻る。
理人は息を吐き、背負い袋を確認する。
青い魔鉱石は無事だった。
「危なかった……。」
そのままベースキャンプへ戻ると、先生は理人の鉱石を見て目を細めた。
「ずいぶん立派な魔鉱石を見つけたな。」
「奥にあったので。」
「そうか……。」
先生は一瞬だけ何かを考えるような表情を見せたが、それ以上は何も言わなかった。
理人は気付いていない。
自分が持ち帰ったその青い魔鉱石が、普通の魔鉱石とは異なる特性を秘めていることを。
そして、その鉱石が彼だけの魔道具を、大きく変えることになることを――。




