↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/112

第25話 忘年会

 十二月。

 校舎の窓には雪がちらつき、魔法学園にも冬が訪れていた。

 終業式を翌日に控えた放課後。

 担任の先生が教壇を叩く。

「さて諸君。」

「一年間、お疲れさまでした。」

 教室から拍手が起こる。

「ということで。」

 一拍置いて笑顔になる。

「今日はクリスマス会兼忘年会をやります!」

「おおおお!!」

 教室中が歓声に包まれた。

 机は教室の端へ寄せられ、大きな輪ができる。

 料理研究部が作ったローストチキンやケーキ、果物、ジュースが並び、普段は厳しい先生たちも今日は少しだけ表情が柔らかい。

 神崎先輩は後輩たちとカードゲーム。

 石破先輩は大皿の唐揚げを抱えて幸せそうに食べていた。

「うまっ!」

「先輩、それ三人前です。」

「気にするな!」

 教室は笑いに包まれる。

 先生が手を叩く。

「せっかくだ。」

「何か一発芸や特技がある人は前へ!」

 数人が手品や演奏を披露し、拍手が起こる。

 その時だった。

「先生。」

 理人が手を挙げた。

「俺もやっていいですか?」

「もちろん。」

 理人は教室の中央へ出る。

 荷物から一本の白い魔法筆を取り出した。

「何するんだ?」

「魔法陣?」

「攻撃魔法じゃないよな?」

 理人は床へしゃがみ込み、さらさらと魔法陣を描き始める。

 幾何学模様。

 細かな文字。

 幾重にも重なる円。

「ずいぶん複雑だな……。」

「見たことない。」

 十分ほどで完成した。

 理人は小瓶を数本取り出す。

「それ何?」

「金属塩。」

 理人は笑う。

「炎色反応っていう現象を使う。」

「えん……?」

 誰も知らない単語だった。

「炎の色は、混ぜる物質で変わるんだ。」

 小瓶の粉末を魔法陣へ少しずつ振りかける。

「それじゃ。」

 指を鳴らす。

「点火。」

 小さな炎魔法が魔法陣へ流れ込む。

 ボッ。

 次の瞬間。

 赤。

 青。

 緑。

 紫。

 黄金色。

 色とりどりの炎が教室いっぱいに咲いた。

「「「おおおおお!!」」」

 炎は爆発することなく、夜空の花のように広がる。

 青い光が雪のように舞い、

 赤い火花が流れ、

 金色の粒がゆっくりと消えていく。

 まるで花火だった。

 誰も言葉を発せない。

 理人は魔法陣を少し書き換える。

 すると今度は、

 パァン!

 小さな光の輪が何重にも重なり、

 星空のような模様が教室いっぱいに広がった。

 最後に純白の光がゆっくり降り注ぐ。

 拍手。

 教室中が立ち上がる。

「すげぇ!!」

「初めて見た!」

「こんな魔法あったの!?」

 先生まで拍手していた。

「いや……魔法というより芸術だな。」

 神崎先輩が魔法陣を覗き込む。

「これ、攻撃力は?」

「ゼロです。」

「防御は?」

「ありません。」

「実用性。」

「ほぼゼロです。」

 一瞬静まり返り、

 教室中が大笑いした。

「じゃあ何のために作った!」

 理人は少し照れくさそうに笑う。

「綺麗だから。」

 その一言で空気が変わる。

 ニューゴン先生が静かに頷いた。

「それで十分だ。」

「魔法は戦うためだけのものではない。」

「人を楽しませ、感動させる。」

「それも立派な魔法だ。」

 理人は少し驚いた表情を見せる。

「この世界では、炎色反応を利用した魔法はほとんど研究されていない。」

「実用性がないからな。」

「だが。」

「今日、この教室にいる全員の記憶には残るだろう。」

 教室は再び大きな拍手に包まれた。

 その後もゲームやプレゼント交換で盛り上がり、笑い声は夜まで絶えなかった。

 こうして天城理人の一年目は、多くの仲間と笑顔に囲まれながら幕を閉じる。

 戦いも、勉強も、失敗もあった一年。

 だが、それ以上に――。

 「楽しかった。」

 理人は窓の外に降る雪を眺めながら、小さくそう呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。