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第20話 調理実習

 襲撃事件から数日。

 学院にも少しずつ日常が戻り始めていた。

 今日の授業は。

「調理実習です。」

 料理担当教師が満面の笑みで言った。

「今日作る料理はマンドラゴラマカロン。」

 理人は思わず聞き返す。

「……マカロン?」

「はい。」

「材料はこちら。」

 机の上へ置かれたのは。

 土の入った植木鉢。

 そこから葉っぱだけが生えている。

「では、一人一株ずつどうぞ。」

 全員が嫌な予感しかしなかった。


「まずは収穫します。」

「普通に引き抜くと。」

 教師が引っ張る。

 スポン。

 次の瞬間。

「ギャアアアアアアアアアアアア!!」

 とんでもない爆音。

 教室が横揺れした。

 ガタガタガタ!!

 窓ガラスまで震える。

「はい。」

 教師は黒焦げになった。

「これがマンドラゴラです。」


「では安全な収穫方法を説明します。」

 黒板に書かれる。

方法① 魔力核を破壊する。

「マンドラゴラは体内の魔力核が鳴き声の発生源です。」

「核を壊せば安全です。」

 理人が頷く。

(簡単そうだ。)

 教師が続ける。

「なお。」

「核は維管束の中を自由に移動します。」

「捕まりません。」

 黒板に追記される。

成功率 12%

「低っ。」


「方法②。」

 教師がミキサーを持ち上げた。

「そのままミンチにします。」

「……。」

「核ごと粉砕できます。」

 理人は真顔だった。

「料理って何だっけ。」


 実習開始。

 教室中で悲鳴が響く。

「いた!」

「逃げた!」

「核が動く!」

 マンドラゴラは土の中で核を高速移動させていた。

「こっちだ!」

 ズレる。

「また逃げた!」

 ズレる。

「止まれ!」

 ズレる。

 まるでモグラ叩きだった。


 ある生徒は。

「氷魔法!」

 凍らせた。

 しかし。

 核だけ維管束を移動。

 無意味だった。


 炎魔法。

 焼く。

 核だけ移動。


 雷魔法。

 痺れる。

 核だけ移動。


「ちくしょう!」


 理人も挑戦する。

 叡智の瞳を開く。

(核が……。)

 見えた。

 根の中を高速で走り回っている。

(速い。)

 詠唱。

「雷撃。」

 外れ。

 核は根を一周していた。

「速すぎる。」


 その時。

 隣から。

「えい。」

 マリーの親友だった女子生徒が。

 無言でマンドラゴラをミキサーへ入れた。

 スイッチオン。

 ギュイイイイイイイイイン!!

 五秒後。

 完成。

「終わりました。」

 教師が拍手する。

「模範解答です。」


 理人も諦めた。

「……。」

 マンドラゴラを持つ。

「ごめん。」

 ミキサーへ。

 ギュイイイイイイイイイイ!!

 教室中で一斉にミキサーが回り始めた。

 十数台。

 同時運転。

 ものすごい騒音だった。


 30分後。

「はい。」

「マンドラゴラペースト完成。」

 あとは普通のマカロン生地へ混ぜるだけだった。


 焼き上がり。

 見た目は高級菓子。

 香りも良い。

「いただきます。」

 一口。

 サクッ。

 ふわっ。

 ほんのり薬草の香り。

「……おいしい。」

「普通にうまい。」

「これ売れる。」

 教師は満足そうに頷いた。

「なお。」

「マンドラゴラの栽培費が高いため。」

「1個4,800円です。」

 教室が静かになった。

「高級菓子だ……。」

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