第18話 学校集会
魔法大祭襲撃事件から1週間。
休校となっていた学院は、この日ようやく授業を再開した。
朝早く、全校生徒が講堂へ集められる。
壇上には学院長をはじめ、教師陣が並んでいた。
生徒たちの表情は暗い。
事件で亡くなったマリー・メイスキーのことが、まだ誰の心にも残っていた。
理人も左目に眼帯をつけたまま席に座っている。
しかし、その身体には目立った傷はほとんど残っていなかった。
あの日負った深い裂傷も、折れた骨も、治癒魔法によって回復していた。
理人は退院時に治癒担当の医師から説明を受けたことを思い出す。
「神聖魔法の一種である治癒魔法は、失われた組織をそのまま再生する魔法ではありません。」
「別の生物から採取した細胞の遺伝子ロックを解除し、人間の細胞として適合するよう魔力で制御します。」
「その後、細胞分裂を極限まで活性化させることで損傷部位を修復します。」
「ただし、完全に失われた臓器や特殊な器官は元通りにはなりません。」
理人は眼帯に触れる。
(だから俺の左目だけは戻らなかったのか……。)
その代わり、今はマリーから託された「叡智の瞳」が移植されている。
まだ包帯の下で静かに眠っていた。
講堂が静まり返る。
学院長が演壇へ立った。
「今回の襲撃事件で尊い命が失われました。」
「まずは、亡くなったマリー・メイスキーさんへ黙祷を捧げます。」
全員が立ち上がる。
静かな1分が流れた。
「……黙祷、終わり。」
学院長はゆっくりと顔を上げる。
「今回の事件を受け、学院の教育方針を大きく変更します。」
会場がざわつく。
「これまで本校は知識教育を重視してきました。」
「しかし現実には、生徒自身が命を守らなければならない状況が発生しました。」
学院長は力強く宣言する。
「本日より実技実習の割合を大幅に増やします。」
「全学年を対象に、戦闘訓練、防御訓練、避難訓練、連携訓練を必修化します。」
教師たちも頷いた。
「また、ダンジョン実習についても内容を見直します。」
「少人数行動だけではなく、大規模戦闘や魔物の群れへの対処も学んでもらいます。」
会場の空気が変わる。
今までの"学校"とは違う。
まるで兵士を育てる訓練校のようだった。
続いて研究主任が前へ出る。
「今回の襲撃では、極めて高度な空間魔法が使用されました。」
「現在、学院の研究者、教師、教授、そして王国研究院が共同で対策を進めています。」
巨大な魔法陣が映し出される。
「空間魔法を妨害する結界。」
「空中魔法陣を検知する観測装置。」
「空間固定術式。」
「これらを急ピッチで開発しています。」
「研究と教育を同時に進めるため、一部の教員は授業を休講する場合があります。」
「ご理解ください。」
生徒たちは真剣な表情で話を聞いていた。
最後に学院長が締めくくる。
「皆さんは未来を担う魔法使いです。」
「二度と今回のような悲劇を繰り返さないためにも、強くなってください。」
「自分の命を守り、仲間を守れる魔法使いになってください。」
講堂には大きな拍手が響いた。
集会が終わり、生徒たちは静かに教室へ戻っていく。
理人も立ち上がり、眼帯にそっと手を添えた。
(マリー……。)
(この目に込められた想いも、お前の分まで俺が背負う。)
まだ、その瞳に秘められた本当の力を、理人は知らなかった。




