第17話 緊急会議
魔法大祭襲撃事件から3日。
学院は無期限の休校となり、校舎には重苦しい空気が流れていた。
学院地下、立ち入りを厳しく制限された会議室。
そこには学院長をはじめ、各教師、王国軍幹部、魔導警備隊隊長、王国研究院の研究者たちが集められていた。
円卓に映し出された映像には、襲撃時の空の様子が映っている。
無数の魔法陣。
そして大量の魔物。
学院長が静かに口を開く。
「……被害報告を。」
教師が立ち上がる。
「死者は生徒1名、マリー・メイスキー。」
「重傷者17名、軽傷者63名。」
「建物の損壊率は約42%。」
誰も言葉を発しない。
次に魔導警備隊隊長が前へ出た。
「今回の襲撃を受け、国王陛下より新たな命令が下りました。」
机の中央に王国全土の地図が映し出される。
「本日より全国を警戒態勢へ移行します。」
地図全体が赤く染まった。
「さらに。」
「王都を覆う国防大結界の術式を全面的に変更します。」
ざわめきが起こる。
「結界の認証方式を変更し、未登録の空間魔法を自動検知・妨害する新たな防衛機構を組み込みます。」
「今後は王都全域で空間転移や大規模召喚に厳しい制限がかかります。」
学院長は静かに頷いた。
「やむを得ん。」
すると研究院の責任者が震える声で立ち上がった。
「……実は、さらに重大な報告があります。」
部屋の空気が変わる。
「襲撃後、学院地下にある国営研究機関を調査した結果……。」
一度言葉を切る。
「保管庫が破られていました。」
全員が息を呑む。
「盗まれた物は。」
研究員は資料を読み上げる。
「禁忌指定特級保管物。特殊細胞サンプル。1検体。」
部屋が静まり返る。
「まさか……。」
「さらに。」
「禁術書が複数冊盗難しています。」
教師の1人が立ち上がる。
「つまり今回の襲撃は……。」
「魔物による無差別攻撃ではありません。」
研究員は断言した。
「目的は地下研究施設への侵入です。」
魔物たちはその時間を稼ぐために放たれた。
完全に計画された襲撃だった。
王国軍司令官が机を叩く。
「警備は何をしていた!」
「地下施設は最高レベルの結界で守られていたはずだ!」
研究員は首を横に振る。
「結界は破壊されていません。」
「解除されていました。」
「……内部から?」
「いえ。」
「空間魔法による特殊侵入です。」
映像が切り替わる。
空中に展開された無数の魔法陣。
研究員が指差す。
「解析の結果、犯人は地面ではなく空中へ魔法陣を展開しています。」
「通常、空中へ魔法陣を固定するには長い詠唱と莫大な魔力が必要です。」
「しかも今回は数百枚を同時展開。」
教師たちは顔を見合わせる。
「そんなことができる人間は……。」
魔導警備隊隊長が低く呟く。
「空間魔法の第一人者でも成功するかどうかの領域です。」
「例えるなら、空に巨大な絵を描き、それを自由自在に動かし続けるようなもの。」
「常識では考えられません。」
学院長はゆっくり目を閉じた。
「つまり。」
「犯人は極めて高度な空間魔法の使い手。」
「そして計画的犯行。」
全員が頷く。
魔導警備隊隊長は最後の資料を机へ置いた。
「本日より学院地下研究施設には魔導警備隊を常駐させます。」
「24時間体制で警備を行い、許可のない立ち入りは一切認めません。」
会議室には重苦しい沈黙だけが残った。
盗まれた禁忌の細胞。
複数の禁術書。
そして、姿を見せない黒幕。
王国は今、かつてない危機の始まりを迎えていた。




