第15話 一回戦
魔法大祭二日目。
学院最大の目玉競技――トーナメント戦が始まる。
勝敗は相手を戦闘不能、または降参させれば決着。
競技場は昨日以上の観客で埋め尽くされていた。
「第一試合!」
「一年科学魔法科・天城理人!」
歓声が上がる。
「対するは!」
「一年創造魔法科・マリー・メイスキー!」
昨日のお題競争優勝者。
創造魔法の天才として有名な少女だった。
審判が手を挙げる。
「始め!」
開始と同時に、マリーは指を鳴らした。
競技場の四方八方に青白い魔法陣が展開される。
「創造。」
魔法陣から大量の岩槍が射出される。
ズドドドドドッ!!
理人は電流を流し身体能力を強化し、一気に回避する。
(魔法陣を遠隔展開……。)
次の瞬間。
今度は炎。
さらに水の槍。
風の刃。
土壁。
雷。
次々と異なる属性が生み出される。
「すごい……。」
「全部創ってる!」
観客席がどよめく。
理人は攻撃を避けながら考えていた。
(物質創造なら原子を組み立てているはず。)
(炎、水、土、金属……全部を瞬時に?)
(そんな原子レベルの操作を、あの速度でできるものなのか?)
ほんのわずかな違和感。
説明できないが、何かがおかしい。
「終わりよ!」
今度は巨大な鉄球が十数個出現する。
質量で押し潰す作戦だった。
理人は静かに息を吸う。
「身体帯電。」
全身に膨大な電荷を蓄積する。
バチバチバチッ!!
周囲に電場が広がった。
鉄球が近づいた瞬間。
ガキィィン!!
進路が勝手に逸れる。
さらに岩や金属片まで弾かれていく。
「えっ!?」
マリーが驚く。
「帯電した物質は全部迎撃する。」
理人はゆっくり歩き出した。
マリーはさらに大量の物質を創造する。
岩。
鉄槍。
水流。
炎。
圧倒的な物量。
しかし。
理人の周囲では磁場と電場が絶えず働き、飛来する物質の軌道が乱され、自動的に逸らされていく。
「近づけない……!」
マリーの表情が焦りに変わる。
理人は一気に距離を詰めた。
身体能力は電流強化によって大幅に向上している。
一瞬。
マリーの視界から姿が消えた。
「しまっ――」
理人が肩に軽く触れる。
バチッ。
高電圧ではない。
人体の神経だけを狙った微弱な電流。
マリーの身体から力が抜けた。
「きゃっ……。」
そのまま静かに倒れる。
審判が前に出る。
「戦闘不能!」
「勝者――天城理人!!」
観客席から拍手が起こる。
「一年生同士とは思えない!」
「天城、強い!」
マリーは医療班に抱えられながら苦笑した。
「……負けちゃった。」
理人は手を差し出す。
「いい試合だった。」
マリーはその手を握り返した。
「次は負けない。」
理人は頷きながらも、試合中の違和感を忘れられなかった。
(創造魔法……。)
(あれは本当に"創造"なのか?)
(何か、まだ仕組みを隠している気がする。)
その頃、別の試合では優勝候補たちが順当に勝ち上がっていた。
三年生・神埼信之は、一撃の超高火力魔法で相手を場外まで吹き飛ばし、わずか数秒で勝利。
二年生・石破武は、「分子結合破壊魔法」で相手の武器や防御壁だけを塵へと変え、一切の無駄なく試合を終わらせた。
学院中の視線は、着実に勝ち進む三人――神埼、石破、そして天城へと集まり始めていた。




